過去編:クエスチョン
二学年下の後輩は、視線をどこか彼方に飛ばして黙ってしまった。
その後輩よりは歳上だが、それでもやはり最高学年ではまだない、一学年下の後輩はというと、視線を明後日の方向にやってしまっている後輩の口元にポッ○ーを運んでいた。
意識がどこか遠くにあるはずなのに、食べ物の気配はしっかり感じ取っているのか、雛鳥がご飯を食べるようにさくさくとポッキーを短くしていく。
(まあ、無理もないか)
目の前でナチュラルに、あーん、なんてやつを見せつけられている生徒会長は、無感情で──というか指摘するのもめんどくさい──生徒会の新入りが考えているだろうことに思いを馳せる。
龍華院フィオナ。
そして、朝日奈正義。
彼ら二人をどう理解するか、と問われれば生粋のトラブルメイカーコンビと答えるだろう。生徒会長なんて役職についてしまってる自分としては、こう返すしかない。そしてこれは恐らく、学園の運営に携わる側の人間なら概ねが同じ様に返す。
では、一個人としてなら、彼らをどう理解するだろうか。
例えば、佐藤兼道という後輩ならば、彼らのことを、親友とその恋人、と答えるかもしれない。
「まだ付き合ってないらしいですよ、あの二人」
「さすがに、それは冗談だろ。 つーか、勝手に俺の内心に返事をするな」
「全部口に出てるんですよ」
「まじで?」
「まじです」
いつの間にか現世に復帰してきた後輩も頷いているところを見ると、本当に口に出ていたらしい。
「それで、会長はあの二人をどう理解するんですか? ちなみに僕は、近頃あの二人はバカという理解で十分だと気づきましたけど」
「分かりやすく口が悪いな!?」
なんだろうか。ストレスとか溜まっているのか。気持ちはすごいわかる。
彼らとの付き合いは、それなりに長い。しかし、深いかと問われればそうでもなかった。
だが、その分だけ、今では滅多に見せることのない、剥き出しで互いが互いを──まるで獣のように──噛みちぎろうとする姿は、この学園でも一番間近に見てきたという自負がある。
だから、彼が答えるとするならば。
「分からないっていう、理解だな」
「その心は」
「そのまんまだよ。 俺は奴らを、ワケが分からん存在と、それこそ野生動物の心みたいに、理解しようとしても無駄なそういう二人だと、理解したんだ」
「それは、理解ですか……?」
いずれは、あの二人の側に限りなく近づいていくだろう弟子が怪訝そうに問うてくる。
「さあな」
むしろ、理解は放棄したと言える。でも、だからこそ。
「少なくとも、俺の中での解はこれだ」
ワケの分からない存在──そういうものだと、彼らを定義した。
これが、彼の唯一の答えだ。
ならば、一つ問おう。
「一条勇奈」
お前は。
「奴らをどう理解する?」
次から最終章です~




