過去編:インターバル
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ポテトチップス、ポッキー、さきいか。
「じゃがりこ……」
「ユウ、欲しいの?」
ほい、と差し出されたスナック菓子を手ずから食べさせてもらう。さくさくとした食感に、ほどよい塩の味。ジャンクとしか表現のしようない菓子は、それゆえか時折危険なほどの食衝動を誘発する。
「って、ほうひゃはいんへふよ!」
「一条、ちゃんと飲み込んでから喋れ」
勇奈は、少々乱暴に紙コップに口をつける。紫色の液体が喉に流れ込んで、しびしびと刺激を与えながら口の中にまとわりついていた油を胃に落としこんでくれる。おかわりを注いでくれる兼道に頭を軽く下げながら、
「なんでお菓子パーティーが始まってるんですか!」
「え、だって」
「そりゃお前」
「話長くなりそうだから」
庶民代表二人の先輩は声を揃えて、旧家出身の後輩に諭すように答えた。
「絶対常識じゃないですよね!?」
「常識というか、マナー?」
「嘘です絶対」
そんなマナーがあってたまるか。
「一番食ってるの、一条だろうとかいう事実は、優しい俺は言及しねえけど」
「してる!」
「ここまでで、感想とか質問とかあるか?」
ここまでで、と言われてもあの二人がまだ出会った時の話しかされていないし、大体出逢ったまさにその時の話はなんだかぼかされてしまった。
「あの二人、そこだけは絶対口割らねえんだよ。佐藤、お前何か知らねえ?」
「マサに聞いても、龍華院さんに聞いても、『面白いものじゃない』の一点張りでして」
「あんだよそれ、逆にそれ、何かはありましたってことを明言してるようなもんじゃねえか」
「そういえば、なんですが……」
「お、なんだ?」
そもそもなのだが。
「龍華院先輩の話、ですよね?」
「むしろ誰の話だと思ってたんだよ」
「いえ、その……」
性格がかなり、違う。少なくとも、勇奈が知っている龍華院フィオナというエスリプトは、もっと自信満々で不敵で。
「トラブルメイカー成分が薄いな、と」
「龍華院にさすがに同情しようかと思ったけど、割りと自業自得だわ」
「一つ言えるのは、ユウだけはキャラ変わりすぎってことに言及する権利はないってことかなあ」
「うっ……」
それは言われてしまうと、そうなのだが。
「まあ、でも、お前もわかるんじゃねえか? あの家柄で──龍華院というこの国でも有数の家に生まれて──一身にその期待を受けて、そして同年代どころか同世代最強であり続けていたんだ」
「それは」
そこまでではないけれど、勇奈も覚えはある。
「はい」
「まあだから、こっからは、ああ、なっていく話だ」
苦虫に加えて過剰に甘いものを食べさせられたような表情を、現生徒会長はした。
◆◆◆
少年と少女は互いを知った。
だから、ここからは互いを知っていく物語で──トラブルメイカーになる物語だ。




