過去編:スターティングオーバー
少々妙な形ではあるが、休憩を挟んだことでぼちぼち本題に入ることになった。
「センパイはともかく、会長もあの二人の当事者、ですか」
説教部屋ならぬ、生徒会が関する鍛練場の地べたに全員が腰をおろす。フローリング加工されており、直接座っても問題はない。
「そうだな。 一条、単純に考えてみろ。 少々強い──中学生の時点でヘタな高校生相手なら叩きのめせる奴らが揉めていたとしたら、それを仲裁する為に駆り出されるのは、どんな奴だと思う?」
「腕が立つ人、です」
「それに加えて、あんまり役職がない人が良いよね。 偉い人がホイホイ現場に出たら、ややこしくなるってことは、ユウも分かるでしょ。 つまり、この人は腕がそこそこ立つ下っぱで、使い勝手が良かったんだ。 まあ、要するに、あの二人絡みだと毎回召集される(雑魚)戦闘員だったんだ」
「その通りだけど、佐藤お前来週おやつ抜きな」
考えてみれば当然だ。現在、生徒会長を務めるこの男は、学年にすれば兼道達のひとつ上だ。ならば、あの二人がなんかしらを引き起こしたときに、対応してきたのだろう。
なんというか。
「ご苦労様でした……」
「今初めて、後輩からの純粋な尊敬の念を感じてるんだがなんか釈然としねえな」
「いつも純粋に尊敬はしていますよ」
「嘘こけ」
殺意が上回っているだけで。
「おい佐藤、お前の監督責任だぞ」
「僕はこの子には伸び伸びと育って欲しいので」
兼道の掌が頭に置かれた。勇奈は、擦り付けるように頭をぐりぐりと動かす。
「その言葉は、放置の免罪符じゃねえぞ」
生徒会長は、疲れたように溜め息を吐いた。
「んで、一条どっから知りたい」
「可能な限り全てを」
「龍華院さんは分からないけど、マサは出生体重が2947kgで、よく泣く子供だったそうだよ。 歩き始めは」
「そこから詳細に知りたい訳じゃないんですよ!」
というか、なんで知ってるんだこの人は。いくら親友とはいえ、生後間も無くのことなんて互いに話すことは無いだろう。
「冗談だよ、冗談。 会長そろそろ、真面目に話しましょう」
「俺はずっと真面目にやってんだよお前らがボケ散らかすだけで」
◆◆◆
絶対的な個人というものはこの世には存在しない。
人は、人同士の相互交流の中でのみ存在し、場面ごとにそれぞれ異なる″自分″というものが存在する。
ならばこそ、他人から語られる姿と己自身で語る姿が違うものであっても不思議はない。
ここから先は。
ある少年と。
ある少女の。
出逢いの記録だ。




