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宣戦布告

全国一律で同じ味、同じ値段。おそらく、美食家と言われるような人々には、鼻で笑われるだろう料理も、庶民代表たる正義には普通にごちそうである。

ただ、確実に幼い頃から、その美食家と呼ばれる人々と同じ類いの食事をしてきたであろうフィオナも、モシャモシャと彼女自身の前にある皿を順調に消費していた。


「すげえ今更なんだが、フィオナって普通にファミレス愛用するよな」

「わたしのハジメテを奪って、わたしにあんなことやこんなことを教え込んだ君が何を今更」


ガタガタっと、勇奈が立ち上がる。顔が真っ赤だ。兼道はわざとらしく、きゃー、とか言ってるが無視する。


「お前と初めてファミレスに来たのは確かに俺だが、あの時はもっとこう血なまぐさかっただろ。 つーか、いつの話してるんだよ」

「この学園に入学してすぐだっけ?」

「その頃だったか」


今よりも、フィオナが真面目が服を着て歩いていた頃で、正義がたまたま乱闘していたところに割り込んできて一悶着あったのだ。その当時の生徒会長に、仲直りとしてファミレスに連行されたのである。

そして、その後のフィオナは順調にファミレス歴を積み重ねた。今では、いつもの注文メニューというものすら確立し、なんならファミレス上級者の証であるドリンクバーオリジナルカクテルさえお手のものだ。


「わたしよりも、一条勇奈の方がびっくりなんだけど」


そういえば、こっちも名家らしい。

勇奈の方を見ると、フォークとナイフを器用に使ってキレイにハンバーグを食べていた。やけに澄ました顔をしているのがなんか怪しい。

兼道はケラケラと笑いながら。


「君らがくる前にさ。 ユウ、ドリンクバーの機械を壊しそうになってさ」

「センパイ!」

「初めてだからしょうがないよ。 ……むしろ未遂でよかった…………本当に間に合ってよかったよ……………」


何をしたのだろうか。正義は戦慄し、フィオナは昔の自分を見ているようでほっこりした。



「んで、お前らなんでここに?」

「マサ達こそ」


理由というほどの理由があるわけではない。


「自炊をさぼるため」

「わたしは、男子一人でファミレスっていう見るに堪えない光景になることを防ぐため」

「別に見れねえもんじゃねえだろ!」

「え、じゃあ想像してみなさいよ。 わたしと一緒に食べるご飯と、一人で食べるご飯のどっちが美味しいか」

「そりゃ、お前と食べる方が美味しいに決まってるが」


なぜか、フィオナに小突かれた。そのまま、フィオナは顔を伏せる。一瞬その理由を考えて答えに至って、正義もゴンと机に顔をぶつける。


「ね、持ってきていて良かったじゃないですか無糖紅茶」

「本当に良かったよ、ブラックコーヒーとってきてて」


しばらく悶えたあと、二人は復活した。


「で、お前らは?」

「まだ顔が赤いね」

「センパイ、そこは言わないのが優しさですよ」

「勇奈がこうなったのって、確実に佐藤君のせいよね」

「先輩方のご指導の賜物です」

「僕らは、ちょっと忙しくてね今日も今日とて」

「文化祭って、こんなに大変なイベントなんですね……」


相当な激務だったのか、後輩は遠い目をしている。


「あー、文化祭、ねえ」

「龍華院さんはあんまり乗り気じゃないの?」


兼道は少し驚く。

基本的に、この学園の人間はお祭り好きである。じゃなきゃ、いくら欲望が大いに混入しているとはいえ、修学旅行でもあそこまで大がかりか覗きが計画・実行・防衛されることはない。


「文化祭自体は良いんだけど、わたしはほら、今年も見世物の方にも駆り出されるじゃない。 あれがね、微妙に政治も絡んできて思いっきりやれないっていうか」

「え、でも今年の相手って」


正義が兼道の言葉を遮る。


「安心しろ、龍華院」


昔の呼び方。フィオナの赤い瞳が見開かれる。


「今年の相手は、俺だ」

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