ドリンクバーでミックスするのは礼儀
「なあ、フィオナ」
「今、カルピスとメロンソーダのハーフアンドハーフドリンク作るのに忙しい」
「ドリンクバー学の基礎知識を見せてやる」
「何よドリンクバー学って…………うわあ、なんか泡固まってるじゃん」
琥珀色の液体に、浮かぶのは白い泡。それだけならば、単純にコーラなのだが問題はその白い泡が全くもって消えていかないことだろう。
「何やったの? というかそれ何?」
「コーラにアイスティーでこうなる」
「なんでその二つ混ぜようと思ったのよ……」
「礼儀?」
「はあ?」
睨まれるのもごもっともだと思う。正義は、その謎の甘いのか苦いのかなんなのかはっきりしない、自業自得な産物を一息に飲み干す。
「味覚いかれてる?」
「これが美味しいものとは俺も思ってねえよ」
じゃあ、なんでやったのよと再びジト目で睨まれるので正義は肩を竦めた。
「庶民の嗜みだ」
「バカな部類の男子達の常識を庶民一般に拡げるのはよくないと思う」
フィオナはそう言うが、それは違うと思う。
「知ってるか? 無料の水に、こちらも無料のガムシロップとレモン汁をひたすら放り込んだら、レモネードが出来るんだ」
「どうあがいても、薄味で何か違う飲み物が出来るだけでしょ、それくらい知ってるわよ」
「龍華院のお嬢様よお……なんで、そんなことを知ってるんだ?」
そういう方法があることを知っていたとしても、味まで詳細に分かるなんてことはあり得ないはずだ。
実際に体験をしていなければ。
「くっ! そ、それがどうしたのよ!? わたしがレモネードチャレンジしてる子達から味見させてもらったことがあるからって何が問題よ!」
「問題とは言わねえさ。 だが、お前は言ったな。 『バカな部類の男子達の常識』と。 それがどうだ、お前らだって良く似たことやってるじゃねえか」
「似てるかしら」
「急に冷静になんな」
そして、正義も途中から暴論を展開している自覚はあった。
◆
「ドリンク取るだけでずいぶん時間かかったね」
どうやら、フィオナと正義がドリンクバーで小競り合いをしていた間に、注文の品が届いたらしい。正義は、ライスにペペロンチーノ、ハンバーグという炭水化物に炭水化物を重ねた上で肉というバランスなんて知ったこっちゃねえチョイスだ。一方のフィオナは、ドリアにピザ、サラダという微妙にバランスを考えてなくもないがやはり炭水化物に炭水化物を重ねるチョイスである。
「こいつが、アホなこと言い出したせいよ」
「基礎知識を伝授しただけだ」
両手をあわせて、頂きますをしてから、正義はパスタをくるくるフォークに巻き付けて。
「ほら、兼道あーん」
にっこりと向かいに座る男に差し出した。
「や、やめなよ。 龍華院さんがみてるよ」
「気にするな。 なあ、兼道。 何でお前はタバスコの瓶を手に持っていたんだ?」
ツーンと香る独特の酸っぱい匂い。正義の記憶するペペロンチーノの匂いでは無い。
「やだなあ、マサ。 疑ってるのかい? そんなことを僕がするわけ無いじゃないか。 はははは」
「はははははは!」
「やっぱり、男って幼いよね」
「そうですね」
「何やってるんだか…………辛ァ!? ねえ、一条勇奈なんであなたはタバスコの瓶を持っているの…………?」
「変な煽りをしてきた人達への天罰が下ったんですよ」
「普通に怒ってた……」




