家族経由で幼馴染みの恋愛事情を聞くときのいたたまれなさ
黒歴史爆発タイムが始まる。
まず、犠牲になったのは、フィオナだった。どう見ても口裂け女は、女ではなくおっさんだった。
余計に怖い。
「はあはあ、フィオちゃんフィオちゃん」
こんなんばっかかよ、と正義は思いながらバットを構えるがそれより速くフィオナが変態(暫定)に全力で石をぶん投げる。炎をまとったその石は、しかし高速機動不審者があっさりと撃ち落とす。
「そんな子に育ってくれて、パパ嬉しいっ!」
『二度と顔見せるな、本気で縁切りたい、輪廻から外れろくそ親父ぃぃぃぃぃぃぃ″虚炎!!!!!!!!!!!!!″』
非常に感情のこもった詠唱だった。そして、ガチで命を断ち切るつもりで炎をまとったフィオナの拳が、実の父親に届いた。
が。
「愛ある拳は痛くなぁぁぁぁい!」
「死ね」
「あふん」
「うわ…………」
いかなる変態でも、炎をまとった蹴りによる金的はどうにもならんらしい。
すとんと、表情を落としたフィオナが正義をまっすぐに見つめる。
「なにも見なかった、良いわね」
「無理だろ」
いやああああああ! と先程担がれていた時の悲鳴と異なり混じりっけなしに叫んで、フィオナは地面にうずくまる。
無理もない。
正義は、赤ちゃんをあやすように悲鳴を上げ続けている少女の背中を叩きながら、
「お前の父親って」
「父親じゃない。 これはわたしとはなにも縁もゆかりもないただの変態不審者」
「この前、ニュースに出てなかったか?」
確か、この国の経済の担い手である企業が結成する団体のトップとして。
『フィオたんの可愛いところ~!』
「なんか始まった」
「殺し足りなかったようね」
殺戮マシーンと化した思春期は抜けたがそれはそれとして男親の変態行為が普通に許せない娘は、いくつもの火の玉を作って地面に転げている赤いコートのおっさんにぶつける。おっさんは火の玉が当たった衝撃で跳ね上げられているが、意識は無いようだ。
『僕と結婚するって十歳までずっと言い続けていたところ~』
しかし、声は続いている。
「あー、録音」
「ああああああああああああ!」
『はじめてのバレンタインも、はじめてのラブレターも全部僕のものだったのに、それがそれが』
突然音質が悪くなってきた。因果関係は不明だが、フィオナが全力で山焼きを決行してることと関係あるのだろうか。
『学園に通うようになってからちっとも帰ってこなくなり──調べたところ』
死体(死んでない、多分)の手が正義の足首を掴む。
「『いちゃいちゃと学園生活を過ごしその癖に煮え切らない態度をとる馬の骨がいるそうだなあ』」
「ひっ」
「『お前だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「いちゃついてはなぁぁぁぁぁい!」
「えらい目にあった……」
「本当に……」
既に、二人とも満身創痍だ。
おっさんはさっき叫んだのが、本気で体力を限界まで振り絞った故の発狂だったらしく、ぐったりとしている。
しかし、正義の足を離すことはなく、仕方がないのでずるずると引きずっている。
「この人、こんだけやっても無事なのか……?」
「簡単に死ぬようなら龍華院でトップ張れないわよ、わたしの代理だからあと二年で引退とは言え」
「いや、社会人として全身に傷つくって問題ないのかなって」
「一晩あれば治る」
嘘こけ。
「何はともあれ、井戸に着いたけど」
「順番的には俺、だよなあ。 これは提案なんだが、お前先にこの口裂け男連れてゴールまで戻らないか?」
「君の黒歴史を拝むまで、君から離れない」
もうこうなったら、さっさと、黒歴史とやらを出して欲しい。
だから、正義はさっさと古井戸を覗いた。
両親がいた。
「良い時代になったなあ」
「ええ、PCの履歴を見れる時代ですからねえ」
「お、自作ポエム」
「こっちは…………アダルトサイトの履歴ですねえ。 リストをプリントアウトして、あの子の部屋に貼っておきましょうか」
正義は古井戸を埋める決意をした。
しかし、死なばもろとも同級生に羽交い締めにされる。そして、なんか同級生が両親に挨拶を始める。
「お義母様、お義父様はじめまして」
「あらあ、やっぱりかわいらしい子ねえ」
「よくやった正義」
「お土産に、うちの子の恋愛遍歴好みの変遷リストをお渡ししますね。 中学生の頃から嗜好に変化は無いようだけど、ちょうどあなたと出逢った中学生の頃からね」
「ばばあああああああああ!」




