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ぺたって張り付く感覚ってぞわっとするよね

「そ、そもそも暗闇が、悪いんだから明かりをつければ良いよね! 『短縮版 虹」

「やめろばか」


詠唱しようとする口を塞いで、呪文を強制的に中断させる。

第一、短縮版でも呼び掛けに応じるのか。あんだけ仰々しい外連味のある詠唱しなければ腰を動かさない龍華院の神が、力を貸してくれるのか。


「なんで止めるのよ!」

「声がでけえ。 明かりなんかつけたら一発でこっちの場所がばれるだろうが」


もし、相手が本物の幽霊あるいは化け物であるならば、確かにフィオナが周囲を照らすことに意味があるだろう。だが、あくまでこれは肝試しであり、幽霊の正体は教員達──つまり一応人間である。そして、他の生徒達の言を信じるのなら、これはあくまでも実践演習であり、ならば教員達が実践させたいのは夜間戦闘の心得だろう。

それくらいのこと、この女ならば百も承知だと思っていたのだが。


「お前、さては相当に怖がってるな?」

「…………悪い?」


逆ギレの気配を察した正義は、話を微妙にそらすことにする。


「全然、むしろかわいい」


実のところ正義も、かなりびびっているので言葉のチョイスがおかしくなっている。というか、理性的に言葉を選べず割りと素の発言となっている。


「君の口をひっぺがしたい」

「ほんひへひっはんは!」


どこからどう見てもいちゃついてるとしか見えない様なじゃれ合いを二人でしていると、ぺったりと顔に生暖かい湿った物体が双方に当たった。


「うぇあう!」

「ぴょふひゃわ!」


そして、正義は得たいの知れない物体から目の前の少女を守るため八割、盾にする気持ち一割、恐怖心三割で咄嗟に相手の背中に手を回し。

そして、フィオナは恐怖心五割目の前の相手を盾にするつもり二割相手を守ろうとする気持ち五割で相手の背中に手を回し。

結果的に二人とも密着することとなった。

果たして、なぞのねっとり生暖かい物体の正体は、怪物でも妖怪でもましてや幽霊でもなく。


「こんにゃくぅ!」

「こんな典型的なやつに引っかかったのが余計にムカつく!」


こんにゃくは釣糸で垂らされて、なんなら釣竿を持った教員(専門 第二外国語)がこそこそと隠れようとする姿が見えることさえムカつく。ので、正義は逆に釣糸を引きちぎりその教員にこんにゃくを投げた。



『あらあらあら……うちの子知らない間にあんなにかわいいカノジョさんできたのねえ』

『すっかり大きくなって……赤飯炊くかあ!』



「ぶえっくしょいっ!」

「汚い」


なぞの声のことなど知らない二人は、いつの間にか手を繋いでいたことすら気づかずに肝試しのコースを進んでいく。


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