おばけだぞー
兼道が変わり果てた姿で帰ってきた。
「兼道! かねみちぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「そんな! あの、佐藤君がこんなことに! 一体何があったのよ!」
「うぅ……佐藤は…………俺もはっきりみた訳じゃねえんだが」
兼道に肩を貸して戻ってきた、こちらも満身創痍の生徒会役員は息も途切れ途切れに、自身の目で見た名状しがたき恐ろしい存在のことをなんとか伝えようとする。
「佐藤の実の両親からビデオレターが送られてきて」
「今時ビデオレターって……」
「VHSだったの……?」
「とある可愛がってる異性の後輩に、佐藤の幼少期のホームビデオを曝露させている映像を見られている所を見せさせられていた」
「ははは…………なんでユウに………………僕がオムツを替えられている所なんかみせ…………てるんだよ…………」
それはきつい。
元来親兄姉という存在は、自身の幼少期のやらかしを全て記憶されているというあまりにもなアドボンテージを持つ存在である。そして得てして、幼少期のやらかしというものは、掘り返されると記憶が無かろうと恥ずかしいものである。
ましてやそれを、本人不在の所で後輩に見られた日には消耗も激しいだろう。
「あ、もしもし、勇奈? うん、佐藤君に代わるわね。 はい、佐藤君、当事者からの電話よ」
「龍華院お前人の心捨てたのか!?」
「追い討ちやめろぉぉぉぉ!」
流石に冗談だったらしい。
◆
この肝試しのやらしいところは、運営側から二人一組での行動を義務づけられている所だ。
「要するに、少なくとも自分以外にあと一人には、黒歴史が知られるということよね」
つまり、無かったことにすることは許されないのである。
普通に性格が悪い。
「うっかり事故で教員どもに反撃しても良いか?」
「あり」
当然のごとくペアとなった正義とフィオナは、肝試し会場を歩く。肝試しということもあってか、辺りは薄暗く中々に怖い。
怖いのだが。
「普通ならこの暗闇が肝試しの本体とまでいかずとも、恐怖心のかなりの部分を占めるはずなんだけど」
「正直、暗闇よりどんな黒歴史が飛び出して来やがるかの方で周りに注意を割ける余裕無いな」
そんなことを言っていたのだが。
ぱきり。
音がなった。
気のせいかと思ったのだが、否が応でも聴覚は敏感になる。
ぱきり、ぱきり。
ぺちゃ、ぺちゃ。
ごりごり、ばりばり。
正義の腕がフィオナに掴まれる。
ここで要らん見栄を張ろうとしてしまうのが、男の悲しい性である。
「やーい、びびってやんのー」
相手を煽ることで、自分は怖がってないです余裕ありますとはったりをかます。
「べ、別にビビってなんか、な、無いわよ! 五分の恐怖心と、九割五分君をいざというときの肉盾にしようっていうだけよ!」
「その発想がわりと怖い」
肝試しは始まったばかりである。




