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黒歴史ホルダー

お化けという存在を怖がるか否か。

もっと言えば、そういう存在を信じるか否か。

その点で言えば、正義は居てもおかしくないけどそこまで怖くはない、というタイプである。第一、武器やら肉体やらよくんからん能力やらを与える存在は確かに居るのだから、人間の一人や二人が魂だけになってさ迷っていても別におかしくはないだろう。

それを踏まえてなお。


「いやだこわいいやだ」


ガッタガタ震えていた。


「僕の方に引っ付きにくるのやめろ」


積極的に男から引っ付かれたい趣味は欠片もない兼道が、キャラが変わってしまった親友をひっぺがした。


「だって、あれ絶対黒歴史ノートとか回収されてだだろ!」

「いつかは向き合わないとダメなんだよ、人は黒歴史と」


もう一回足を引っ張ろうとしてきやがったので、兼道は能力を使ってかなり情けないことになっている正義を地面に縛り付ける。


「お前らエスリプトみたいな現役厨二は、黒歴史の開陳作業は手慣れてるかも知れないけど、俺たちは違うんだよ!」

「うっ、使えもしないのに考えたオリジナル詠唱…………」

「無駄にドイツ語を駆使し…………あたまがいたい」

「いやぁぁぁぁぁぁ! 在りもしないパートナーを念頭に置いたカップル詠唱がぁぁぁぉぉぉぁ!」

「ぼくのかんがえたさいきょうのこくめい(未使用)」


周囲を見渡せば、確かにソーマ側の方が死屍累々となっている。これはおそらく、当時考えたつよいえいしょうが、多少なりとも今に役立っているエスリプトと、全くもって必要のないつよいえいしょうをかっこいいからという理由だけで無意味に考えていたソーマとで、恥ずかしさの度合いが変わっているのだろうと、兼道は推測した。

推測はするが、足にまとわりつかれるのはうざいので。


「マサ、龍華院さんにそんな姿見られて良いの?」


すん、となって一瞬で真顔になる友人。因みに、名前を出した少女は野暮用があって席を外している。

なんというか。

扱いやすすぎるというか。

気になるオンナノコの前でいい格好をしたいという本能的行動がもろに出ていた。


だが、正義が正気に戻った三秒後である。


「い、一緒に肝試し突っ込んでいった二人組が! 白目向いてるぞ!」

「なんだ、何があった!」

「B,」

「び?」

「BGMが……オリジナルソングで…………」

「うん」

「先生が、学生時代に告白するときに歌った曲だって…………その後に…………おれのおりじ、がくう…………」


共感性羞恥+自らの黒歴史。


心当たりもある正義は、哭いた。


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