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うらめしやー

修学旅行──学を修める旅行である。おそらく、正義を筆頭とした修学旅行生達はこの旅行の名前が持つ本分なんて頭の片隅にすら無かっただろう。それはいわゆる真面目な部類に属するフィオナや兼道もその例に漏れないが、そもそもとしてただの観光旅行であってはならないのである。学費から捻出されているので。

ゆえに、実は生徒達には課題が課されることとなっている。

それが今晩は、


「肝試し?」

「結局レクリエーションじゃないのこれ」

「生徒会のプログラムには記載されてないから、歴っとした教員主導のイベントだね」


自然と正義の眉間に皺が寄る。

この学園の教員は、当然ながら生徒を教え導く立場にあたる。苛烈な課題を与えられたことも一度や二度ではない。

そしてなにより。


「来たか」

「ああ」

「今夜はどうなるんだ」

「おいおい、今更ぶるってんのかよ」

「武者震いさ」


妙にクラスメイト(バカ)達が真剣な顔で会話しているのが、気になって仕方がない。

同じことをフィオナも感じたようで、手近なクラスメイトに近づいていく。


「ねえあなた達、1ミリたりとも似合わない真面目な会話してどうしたの」

「おいおい、甘っちろいことを言うじゃねえか」

「嬢ちゃん、修学旅行の夜は初めてかい?」


バカに肩を竦められて、彼女はものすごくいらっとした。正義も同じくいらっとした。


「朝日奈、ゴー!」

「ぐるるるるるるるる」

「ひい、ごめんなさいぃぃぃぃ!」

「その犬をけしかけるのは止めてくださいぃぃぃ!」

「誰が犬だよ」


ようやくバカどもは小芝居を止めて、まともに話すつもりになったらしい。


「まあ、つまり普通にこれって実践演習なんだよ」

「なんの」

「エスリプトとソーマの能力の。 そういえば昨日の夜、お前らがこっちの学園となにやってたんだ? 交流会って聞いてたんだが」

「交流会という名前の」

「鹿ツーリング(ジェットコースター)と」

「大仏討伐してた」

「なに言ってるか1ミリもわかんねえや。 お前らさてはバカだな」


確かに、この説明で伝わるとは思ってないが。それはそれとして、バカにバカと言われることほどムカつくことはない。


「フィオナ、ゴー!」

「フシャアアアアア!」

「ゴリラけしかけて、暴力で俺を押さえ込もうとすんのやめろ……あっすみませんゴリラなんて言ってはダメでしたギャアアアアッ!」


情報源は燃えた。


「要するに、肝試し(おとながほんきでおどろかせにくる)って感じになるのか?」

「授業の一環なら、そんな感じになるでしょうね」

「二人とも、はかない命が一つ犠牲になってることは気にも止めないんだ…………」※生きてます


乙女をゴリラ呼ばわりする野郎の命の重さは紙一枚に満たないからしょうがないのだ。


「でも、驚くだけなら別に」


「道をあけろー!」

「意識状態は?」

「意識はあります、ですがさっきから」

「はつこいの……はつこいの…………おねえさんが…………ああ……兄と…………。うっくろれきしのーと…………」

「だめです正気を失っています!」


フィオナが、正義の肩をつかむ。その手が震えていた。


「………………」

「………………」

「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

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