リズミカルにチケットをもぎりするお坊さん
流石に、結構な時間歩いていたため、延々と続くかと思われていた坂道もゴールが見えてくる。
「俺の武器──打神鞭っていうんだが」
「ひゃふほへんひはっへ」
「飲み込んでから喋れ」
話を聞く気があるのかないのか良く分からない女は、ごくんと喉を動かす。
「ほうじ茶味、いけるわね……」
「高菜に比べたらな……」
「高菜も悪くはないよ?」
「まじかよ」
正義の好奇心が刺激されたが、今の話の本題はそこではないのでなんとかスルーした。
「封神演義、よね」
「お前は人の話を聞いてるのか聞いてないのかどっちなんだよ」
まあ、その通りなのでこうなると話が早い。
この話は、天におわすすっごく偉い存在に神──Godではないが総じて力のある存在──を百人ほど封じてこいとパシられた男の冒険譚である、と正義は理解している。
「君の理解、ざっくりしすぎじゃない?」
ジト目で睨まれたので、肩を竦める。
「しゃーないだろ、この釘バットがそういう自己紹介してきたんだから」
「本武器の紹介がそれだったんだ……」
どうやらきっちり封神演義を読んだらしいフィオナは、こめかみを押さえている。イメージが覆されたらしい。
そうこうしているうちに、看板が見えてきた。
「右に曲がれば……塔?」
「左に曲がればお寺だけど、わたしとしてはお寺の方が良いな」
「んじゃ、寺で」
「恋愛のお祈りができる滝があるらしいよ」
「塔にするか」
「諦めて」
正義も最初から要望が通るとは欠片も思っていなかったので、言ってみただけだったり。
「それで、君がというかその釘バットがさっき神社で怒られたのって」
「普通に考えて、自分に近しい存在すらぶっ倒してきたいわく付きの武器なんかが、家に持ち込まれたら嫌だろ? それも、使い手が免許とか持ってる訳じゃなくて、どんなやつが今の持ち主かわからないのが」
「あー……」
「しかも、こいつ」
普通に市販されているバットケースだと、すぐに布を突き破ってくるので頑丈な革を使った特注のバットケースの中で、がたがた動いている。
「百回名前を呼ばれるまで、あっちに収納される気がないらしい」
「えー」
「因みに、こいつが応えるのは、相手が″神″の時だけだ」
「難易度高いし、それに」
フィオナは正義が言わんとすることに気づいたらしい。正義は一つ頷く。
「こいつは、結構積極的に″神″を欲してる」
「むしろ、寺社仏閣から出禁になってない辺り、あの方々って寛大だったのね……」
人間で例えれば、伝説の殺人鬼が自分の目の前にやってくるようなものだろう。そりゃ、威嚇くらいはする。
お寺の入場受け付けを済ます前に、ゴミ箱を見つけたので、赤髪の少女はコーンの包み紙をくしゃっと丸めて放り投げる。静かに箱の中に落ちていく。
「つーことで、ここはどうなるかな……」
お坊さんたちに正義は取り囲まれた。




