私鉄の方が便利
「遅延多くねえか?」
「着いたんだから、文句は言ったらダメ」
ホームの電光掲示板は、赤字で遅延時間を告げていた。
腰を伸ばすと、バキバキバキバキとあり得ないくらいの音が鳴る。
「折れてない?」
「俺もちょっと今かなりビビった」
よもや在来線の微妙なクッション性の椅子による影響か、と正義は戦慄する。
ホームにぞろぞろと並ぶのは同じ学園の生徒達だ。生徒会/風紀委員+正義の時間外労働組もようやくなんやかんやで合流できたようだ。
教員がやけにドスの効いた声で叫んだ。
「点呼ぉぉぉぉ!」
「「「おう!!!!!!!」」」
生徒達の声は重なり、やがてビリビリと周囲を震わせるまでになった。
「え、なになになになに」
「わたしたちがいない間になんでこんなに体育会系になってるの?」
「こわいこわいこわい」
なんとなく、目付きも鋭くなっている気がするのは正義の気のせいだろうか。
「聞いたことがある!」
「佐藤!」
「知っているのか!」
生徒会の連中が何か始めた。同じ団体に所属する連中同士、ノリは似ているらしい。
「修学旅行の修は、修行の修だと!」
「な、なんだってー!?」
「そんな大袈裟に叫ぶほどの知識じゃねえだろ」
思わず、正義は突っ込みを入れてしまった。内輪ノリに部外者が割って入ってもいいことなにもないのに。
「話は聞いていたわ」
「風紀委員!」
「世界は滅亡する!」
「全部ノストルダムって奴が悪いんだ!」
「「「「えー!!!!!」」」」
正義を除く全員が訳の分からんことを始めやがる。
「なんでもかんでもノストルダムのせいにすんな。 あと、今気づいたけどお前ら大分ハイになってんな」
彼らの修学旅行はここから始まるのかもしれない。
体感的には一時間ほど、ホームで茶番に付き合わされた様に思えるが、何はともあれ改札を出てここから晴れて六時間は自由だ。
数名グループで観光したり、二人で観光したり、ある種の関係性にある二人きりで観光するペアを妨害したりと、他の生徒達も自由に過ごすようだ。
「って、兼道は俺らと来ないのか」
「うん、まあ、後輩および先輩方におみやげも選びたいし」
「あー、なるほど」
生徒会で行動するようだ。
「マサは……まあ聞かなくても分かるか」
兼道の視線は、正義の手元に向けられている。そこにあるのは、フィオナのリュックサックだ。
一時的に荷物を預かっているのだ。
「君らってさ…………」
「なんだよ?」
「いや、言っても無駄だろうから止めとく」
ため息を吐きながら兼道は去っていった。どういう意味だ。
「ごめんなさい、お待たせしました。 って、佐藤君は一緒じゃないの?」
リュックの持ち主の赤髪の少女が戻ってきた。
「ああ、生徒会の連中と回るらしい」
前ポケットに物を入れたいらしく、フィオナは正義にリュックを持たせたままでファスナーを開ける。
互いに互いの吐息の音すら聞こえそうなほどの距離。
「そっか。 じゃあ、わたし達はわたし達で真の自由って奴を見せてやりましょう」
「革命でもすんのか」
真の自由ってなんだよ。偽りの自由があるのか、この修学旅行という文脈に合致する形で。




