おやすみどころ
風呂の中で眠ってはいけない。
これは、溺れる可能性が高くなるからであったり、当然ながら通常の外気よりも温度が高いことから熱中症の可能性が爆増するから、などの理由がいくつかあるからだ。
だから。
「ちょっと温度高めの温水プールなら……」
「一緒よ……」
夜があけて、大仏の対処から正義は解放されることとなった。かといって、自由時間とはいえあまり観光してもなあ~、とぼやいたところヤマトの生徒達から紹介されたのがヤマト健康ランドだったのだ。
「俺は……ともかく、お前はなんで…………こっちに来れたんだよ……」
一晩中身体を動かしていたので、それなりに疲労がたまっていて、その状態でぬるめのお湯につかっていると、思考も鈍くなり喋り方も心なしかゆっくりになる。
「あんな大技使った後だから休め……って…………委員長から電話がきたの…………」
「電話で……」
あの後──正義が大仏の脚をぶったぎってから──神内にバトンタッチしてからは早かった。何をしたのかは正義には分からなかったのだが、ヤマトの生徒達曰く「神の非正規ルートでの降臨はまあまあよくある」ことらしいので、それへの対抗策もあったのだろう。
それはともかく。
「お前のところの……″万眼″って………………どこまで予想……してたんだ……?」
「さあ……。 ひとつ……言えるのは…………考えるだけ怖くなるだけよ……」
フィオナに怖いと称されるとは凄まじいな、と正義はぼんやりした頭で思う。
「ねえ……朝日奈………………」
「ん」
「眠っても……良い…………?」
「なんか……死亡フラグっぽいな…………」
「きみを……ころして…………わたしも……しぬ…………ずっといっしょよ…………」
「こわいから……やめろ…………」
しかし、眠りたいというフィオナの意見には正義も賛成だった。
「あがるか……」
「やー……」
「やー……ってお前な……」
◆
ひとまずの処理を先輩達に押し付ければ良いという結論に思い至った、修学旅行生達はそれでも、そもそも部外者の正義と、睡眠不足+能力の使いすぎで疲弊してる時に何回か学園町を破壊した実績持ちフィオナから遅れて二時間ほどでヤマト健康ランドへと到着した。
「佐藤、お前何写真撮ってるんだ」
「んー、弱みかな」
弱み、と呟いた生徒は兼道の足元に目を向ける。そして、納得した。
「あー、これは」
ゆっくり横になれる休憩スペース。
そこで寄り添ってすやすやと寝息をたてる少年と少女。
正義はフィオナの頭を抱えるように。
フィオナは正義の袖を掴むように。
かちりとパズルのピースが嵌めるように、身体を休める。
「弱み、だな確かに」




