有言実行
目立てとは言った。確かにそれは間違いなく言った。
けど、あそこまでやれとは言ってない。
神内は逐一入ってくる情報を脳内で整理しながら、びくびく跳ね回る胃とうまくやるためにビニール袋を準備した。これでいつでも、内容物の逆流を受け止められる。
境内には、ぽっかり大きな穴が空いて、しかし周囲の建物は融けることなく未だ顕在だ。引力や重力、地球の自転も恐らく正常。
このことだけが、たったいま起きた破壊が純粋な物理現象ではなかったことを示す。
落ちたのは太陽ではなく。
太陽に見まがうばかりのエネルギーの塊にすぎない。
「はははははは」
「なんだあれ!」
「一瞬昼みたいになったぞ……出鱈目すぎるだろ…………」
余計に笑うしかない。
テロリストグループの構成員を捕縛したという報告が続々と神内を始めとした後方の指揮官達に届いている。
無理もない。
それなり以上の実力があればあるほど、たったいま起きた″奇跡″を引き起こしたエスリプトの力がどれほどとてつもないものかを、理解できてしまう。神によって偶然引き起こされた天災ではなく、たった一人の少女の必然であったことを察してしまえば──もうダメだ。
「どうにかするなら、詠唱が完成する前に無力化するしかなかった」
しかし、それも無理だろう。
狙撃を得意とするソーマおよび索敵担当エスリプトからもたらされる映像が、これの主犯を映しとる。
少女に寄り添うのは、共犯者の少年だ。
正直、神内は彼を推し量りかねていた。確かに、卓越した身体能力を秘めている。だが、それだけだ。
ソーマは武器を与えられる。優れた肉体は、その武器に最適化していくように、成長を尖らせていく。一見、万能のように見えるソーマが存在したとして、その実いびつなのだ。
しかし、正義という少年にはそれがない。いびつさが、見えない。それはすなわち、肉体が武器に最適化していないということであり。
「普通なら、戦闘向きではない、はずなんですけど……」
足下に転がる有象無象達。どれも、実力者だった。正義という少年には届かなかっただけで。
この修羅場もかくやという状態を作り上げたのは、そのソーマである。強大なエスリプトが静かに破壊をなしたというのなら、実力不明のソーマはしっかり暴力をなした。
考えるほどに、分からなくなってくる。彼は本当にただの、釘バットを振り回すソーマなのか。
「お、おい! 神内!」
そんな思考は、同級生の部下により断ち切られることになる。
「莫大な──先ほどの龍華院並みのエネルギーがもうひとつ観測された!」
神内は嫌な予感が当たってしまったことを、憎んだ。




