表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/102

引っ越し蕎麦の文化って、実在するんですか

シンと静寂が、空間を支配する。

フィオナは、高まりすぎた内圧を下げるように細くけれど強く息を一度吐いた。


「…………ごめん、声あらげちゃって」

「いや」


正義なんかよりよっぽど正義感のつよい少女に、気にするな、と手をヒラヒラ振る。

龍華院フィオナという少女には、理想がある。龍華院には定められる将来がある。

正義はそれを知っていて、そこが彼女を好ましく思う理由のひとつだということにも、気づいていた。


「とにかく、俺をさっき襲撃してきた連中は、その外道共ってことなんだな」

「そうね」

「だけど、お前らが捕まえられているのは、そいつらの下っ端だけで、肝心の扇動してる側まではたどり着けてない、つーことだな」


フィオナは頷きつつ、なんともいえない目つきで正義を見つめる。


「そこまでのことは、わたし言ってないんですけど」

「お前な。 俺がどんだけ、そういう感じの奴らに絡まれて来たと思ってるんだよ」

「嫌な慣れ」


間違いない。


「あと、ずっとお前のこと、見てきたし。それで、お前が動いている理由はその、外道なトップ、かは分からないがその組織の幹部とかは、相当に力を持っているという理解で大丈夫か?」

「しれっと、すごいこと言われた気がするんだけど、気のせい? というより、そいつらが雇っている連中ね」


机の上に、ファイルが一冊置かれる。開いてみると、写真が数枚挟まっていた。流し見して、背筋にぞくりとしたものを感じる。

その写真に写る連中には、本来ならば目があるはずの部分がなかった。

顔の上半分が、のっぺりとして凹凸が失われている。


「″正体不明(フェイスレス)″ それが、こいつらの通り名。 さっき言った子供たちを拐ったのも、恐らくは」

「本来の顔は?」

「分からない。 写真なんかの記録すらもねじ曲げられる、強力なエスリプトがいる、ってことだけは有名ね」


それ故に、″正体不明″なのだろう。


「まあ、君のことだから、どうせまた変な連中に襲われることになると思うし、その時に『なんか顔見づらいなー』と思ったら、すぐに倒さずにお近くの風紀委員詰所へどうぞ」

「無茶な」


そんな余裕は、無いはずだ。


「無茶でもなんでも、手がかりが無さすぎて……。 チンピラにもすがりたい気分なのよ」

「すがり先、わらの方がましだろ」

「でも、君の二つ名をわらに変える訳にはいかないし。 気に入ってるみたいだから」

「自由意思で、チンピラって呼ばれるようになったんじゃねえよ!」


売られた喧嘩を全部買って、ついでに倍返しをしていたら、勝手に付けられてしまったのだ。


「君みたいに、わたしも手がかりが向こうからやってきてくれたりしないかしら。 …………あれ?」


フィオナは少しの間虚空を見つめる。何事かを考えているようだ。


「君さあ。 一人暮らしだよね」

「ああ。 …………まて、何を考えた」

「え、手がかりほいほいの側にいれば、そのうち手がかりがこっちに来てくれるんじゃないかなって」

「やめろ!」


具体的にどう考えているかは分からなかったが、正義は思いっきり嫌な予感がした。




「どうも、隣人の龍華院フィオナです」

「やりやがった!」

「お近づきの印に、作りすぎたカレーです」


厄介な隣人ができてしまった。

実質的なプロローグはようやく終わりです。

次回からドキドキ学園生活編スタート


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ