菓子パ持ち込み一軍菓子筆頭──ポテチ
「で、だ」
「づ、ぢ」
「だ行を言いたい訳じゃねえよ」
無事に、暴力で語り合うタイプの交流会を終え、すわいよいよ目的の壊滅作戦に赴くのかと思いきや、なぜかヤマト風紀委員会の詰め所でパーティーが始まった。
「なんで、サイン会始めてんだお前は」
「わたしも、知りたい」
ずらーと一列に並ぶヤマトの生徒達。当然のごとく色紙まで持っている奴もいる。
「そりゃ、あの炎帝さんにお近づきになれたんですから! あ、炎帝さんが、中等部の頃に考えた黒歴史サインバージョンでお願いします」
「わたしって、どんな風な人間に思われてるのかしら……。 あと、黒歴史サインなんてないからね!」
そんなことを言いながらも、ちゃんとバージョン違いのサインをさらさらと書いているフィオナに、正義は生暖かい目を向ける。
「炎系エスリプトの星っす!」
「踏まれたいっす!」
いらんこと言ったやつの眉間めがけて、正義はピーナッツを弾く。額を押さえて床でのたうち回るアホが一人出来上がったが、自業自得だろう。
「…………百歩譲ってサイン会は分からなくもないが」
『大会』の覇者はそれくらいの知名度を持つことは知ってはいたが、分かっていなかった。ただ、サイン会の発端ともなった、
「このパーティはなんなんだよ」
「歓迎会でしょ」
まあ、そうなのだろうが。
等価交換と言えるのは微妙なところだろうが、フィオナが一枚サインをするごとにお菓子の山が大きくなってきている。ヤマトの生徒だけではなく、悪ノリしたフィオナの同僚達も菓子を積んでいくからちょっとした山の様相を呈していた。
正義は、山を漁ってチョコレート菓子を手に取る。
食わせろ、と目で訴えてこられたので、細長いクッキーにチョコレートが纏わされているその菓子を、目の前に垂らしてやる。
「あー」
口に入る寸前に、ひょいと引き上げた。フィオナの歯は空を噛み砕いた。
恨めしい目で睨まれる。
もう一度、垂らしてやった。
今度は手首ごと掴まれて、強制的に口に運びいれさせられた。
「指まで食うなよ」
「食べないわよ!」
食べはしないが、手首は掴まれたままになるらしい。特に支障は来さないので、気にも留めず今度は自分で食べるために菓子の山を漁ろうとして、めんどくさそうな顔をした同級生に気づいた。
「朝日奈、龍華院。 こんなこと、俺じゃなくて佐藤に任せたい気持ちはすげえあるんだけど、今ここにはいないから言うわ。 TPO考えろ」
時場所場合。
二人とも、ふと顔を上げて気づいた。
ヤマトの生徒達が、非常に気まずそうにしている。
それは、すなわち、あれこれ見られていたことの証左であった。
「皆さん、お待たせしました、スペシャルゲストが到着しましたので…………そこのお二人はなぜ机に顔を伏せているのですか?」
「気にしないでください」
「恥の輸出をしただけです」
「むしろ、これくらいで頭を冷やして欲しい」
「は、はあ……。 ちょっと意味がよく分かりませんが」
それはそうだろうが、意味は理解しないで欲しい。理解されたら、正義達はしぬ。
「まあ、なんでもいいですね。 それでは、気を取り直して」
神内は、兼道のとなりに立つ一人の人物を指し示した。
「顔無しのメンバーの一人にして幹部の一角の、裏切り者さんです」
「はあ!?」




