紅いと赤いの違いってなんなのだろうか
「いつもいつも、君は大体トラブルに巻き込まれるじゃない。 だから、今回はそうならないようにしてあげよう、って思ってたのに……。 実は、トラブルに自分から突進したいタイプ? ドM?」
結構な言われように、正義は反論したくなった。
「俺はどっちかというと、Sだ」
反論する部分を間違えた気がする。
「突然の性癖開示、やめて。 因みにわたしは、多分相手に染まるタイプよよかったわね。 じゃあ、君はくっそ不器用ってわけね 」
「お前はお前で、何をカミングアウトしてんだよ。 それと、ここに連れてこられる度に、毎回毎回同じこと言ってるけど、記憶力無いの?」
「毎回毎回同じこと言われてる君に学習能力が無いのよ」
フィオナは、肩を竦めながら、インカムに話しかける。正義に、情報を開示して良いかの許可をとっているようだ。
しばしのやり取りの後、なぜか正義が風紀委員長の元へ、菓子折りを持参することで許可がおりる。
「…………いや、なんでだよ!」
「それで、わたしがあの現場に急行できた理由なんだけれど」
「聞けや」
「君の予想通り、ちょっとした宗教団体が関わってる可能性があったの」
宗教団体。
気になる言葉が出てきたので、正義は続きを促す。
「″神″について、どう思う?」
「性格悪い」
「うーん、否定できないわね。 実在について、信じてる?」
「信じるもなにも……」
正義は、産まれたときから″武器″を持っている。
フィオナは、産まれたときから炎を従えている。
それを、授けてきた存在を神と呼ぶのなら。
「いる、だろう」
「平等だと思う?」
間髪いれずに、フィオナが問う。
「平等なわけねえよ」
平等であるなら、エスリプトとソーマなんて区別は必要なかっただろう。
本当に平等であるなら、今こうして学園という名の戦力養成機関など必要なかった。
「うん、そうね、その通りよ。 だけど、そう思わない連中がいてね。 ″神″は平等であり、人々に差が──経済的な格差や、能力格差があるのは、人間がなんらかの操作を加えたから、っていう考え方をしているらしいのよ」
「…………ああ、なるほど」
つまり、先ほど正義を取り囲んだ集団はそういう連中らしい。
「考えるだけなら、自由にしてもらって良いんだけどね。 そいつらは、それで狩りを始めたのよ」
「狩りねえ」
「狙いは″力″がある存在。 それは、経済的にであったり、権力であったり。 当然、この学園町で名が知られている存在は、その対象になるわ」
動機は納得できないが、理解はした。
だが。
「結局、その″力″で返り討ちされてりゃ世話ねえな」
「君みたいに、武力的につよければね。 でも、名が知られている全員が全員、暴力に長けている訳じゃない。 そして、戦いなれている訳でもね」
学園は、そういった戦い方を教える機関ではあるのだが、全員に適性があるわけではないし、暴力に慣れた連中にしょっちゅう囲まれるている正義は例外にすぎる。
「全管区あわせて二人」
「?」
「二人が、あいつらに襲われて、死んだ。 八人が、重傷。 全員、名のある家柄出身ではあるけど──小等部の子供たち」
赤い炎が、フィオナに纏われていく。威嚇ではなく、感情が昂ったことによって漏れ出ている。
「集団で、自分より弱い子達をリンチするテロリスト。 それが、わたしの今回の標的」