意外と存在を知られていない学年担当教員
「思うんだが」
「なにを」
「俺ら、普通に、邪魔、だよなあ」
「どっちみち、二人の世界に入ってるから、関係ないでしょ。 わたし達以外も目に入る余地ないわよ」
駅のホームで頭ポンポンしてる同級生と、頬を林檎もかくやという色に染め上げながらバックステップで回避を試みようとする後輩の姿を、生暖かい目で見守り。
「それじゃあ、行ってくるね」
「こいつが夜に告白されそうになったらガードしといてやるよ」
「よ、余計なお世話です!」
「こういうの、何て言うんだったかしら。 あー、正妻の余裕?」
「正妻って言い方するのは、二人以上が存在するからで、僕は一人で良いかなあ」
「センパイもなに言ってくれてやがるんですか。 あとうちの場合、センパイの方が入りむ…………なんでもないです、忘れてください」
勇奈と分かれ。
地下鉄に三十分揺られて、ようやく新幹線の駅へと到着する。
「疲れた…………」
三人の声が重なる。
大変だった。
朝だというのに、酔っぱらいが電車に乗ってきて、悪いことにエスリプトとしての能力を暴発させるという事件が起こり、それに便乗したチカン野郎をとっちめなければならなかったのだ。
そして、それ以上に不可解なことは。
「なんで、俺ら以外の同級生連中がいねえんだよ」
行き先は同じ、居住地も同じ。そして、集合時間も同じとなれば、大体が同じ電車になるはずなので、改札などでは誰かとすれ違ってもおかしくないはずなのだが。
「あ………………」
「マサもしかして、なにも聞いてなかった?」
「は」
何となくいやな予感がしたので、正義は威嚇も込めて腹の底から低い声を出した。
「わたし達と生徒会は、生徒全員の人数チェックやら、持ち物チェックやらで先に集合なのよ」
「マサは、その手伝いで来たものかと……」
「おーい、佐藤と、龍華院、到着したのなら設営手伝ってくれ!」
「あと、チンピラも!」
「おい、フィオナ」
明後日の方向を向いて口笛を吹こうとしている女の頬を、両手で挟み込んで無理やり正面を向かせる。
「なにかいうことは?」
「ごめんなさい」
さすがに悪いと思っていたのか、いつになく素直だった。
◆
「さて、全員揃いましたね」
学園において、講義形式でありクラス単位という概念はない。
ゆえに引率の教員は、学年担当の者が割り当てられる。今メガホンを握っているのは、その教員の中でも一番の実力者であった。
「では、これからグリーン車で現地に向かう権利を獲得するために──二十人を決めてください」
修学旅行は、バトルロイヤルの開始の言葉と共に、始まる。




