地味に服装の調節が難しい修学旅行の時期
快晴言葉がふさわしい空が広がっている。澄みきった青は遠くなるに連れて白味を増していく。
つまり──
「修学旅行日和!」
流石に今日ばかりは時間をあわせて一緒に出発する、フィオナと正義の声は揃った。目と目があわさって、自然に笑みがこぼれた。
史上まれに見るくらい、二人とも浮かれきっていた。
「修学旅行!」
「枕投げ!」
「肝試し!」
「こ、コイバナ!」
「なんで、そこだけどもるんだよ」
普段よりもワントーン高いじゃれあいをしつつ、互いに自室の扉の鍵を閉める。
いよいよである。
「実質普通の出張…………」
フィオナのテンションの乱高下が激しすぎる。
「やめろ、盛り下がんな」
「さっさと終わらせて……修学旅行を満喫するから………………手伝いなさいよ………………」
「あい」
地獄から這い上がろうとする者が持つ声の響きは、有無を言わせないだけの迫力があった。
「ただ、思うことがあるんだが」
「なに?」
てけてけ、ごろごろ、と足音やらフィオナのキャリーバッグやらが音を立てつつ、地下鉄の駅までの道を進んでいく。学園町の電車の駅はそこだけだ。
「どうせ、全員住んでるところが一緒のエリアなんだから、新幹線の駅までバスくらい出してくれりゃいいのに」
「経費削減でしょ」
なるほど確かに、正義達高等部二年生のバスチャーター代を考えると、実費にした方がいくらかは浮くだろう。
「こすい」
「それは確かにそうね。 あ、佐藤君だ」
ブンブンと手を振ると、こちらに気づいたようだ。二人分の手が振り返される。
当然のごとく、行き先は同じなため合流することになった。
「やあ、馬に蹴られに来たよ」
「別に野生の馬は出現しねえよ」
レベリングするための草むらじゃないし。
「それに、蹴られるのは、わたし達の方じゃない? ねえ、勇奈」
「兼道のお見送りか、後輩」
にやにやと、好奇心丸出しの視線を向けられた後輩はしかし、首をかしげる。
「何を言ってるかさっぱりですね、馬なんてその辺にいるわけないですし、普通に対処できますし。 あと、お見送り、だけならどれだけよかったことか……」
「楽しい楽しい修学旅行、なはずなんだけどね…………後輩への業務の引き継ぎ…………なぜか上司から呼び出され……実質的な特別任務……拒否権なんてあるはずもなく…………出張と何ら変わりない…………」
「全く聞いていないのになんか唐突に指令だけが下る……………うっ、あたまが…………」
生徒会、お前らもか。
「さっさと終わらせて修学旅行満喫したいから手伝ってね、マサ」
「お前もかよ」
あいにく先約がある。
どうせ、同じ目的なのだろうが。




