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なんやかんやで一番楽しい荷造り

修学旅行のしおり!!!!!!!と、無駄にエクスラメーションマークで強調されている表紙の冊子で持ち物を確認しながらスポーツバックに適当に着替えやらなんやらを、正義は詰め込む。


「絶対必要ねえだろ、こんなにも着替え…………」


正義は、「お洒落する!」という精神は欠片も持ち合わせていない。ぶっちゃけ、今の時期──11月中旬の気候ならば、下着ではない方のパンツなら2日くらい着用しても問題ないと思うタイプだ。

考えることはどれだけ荷物をスリムにできるか、ということのみである。当然、化粧水の類いも持たない。


「ちゃんと水着も持った?」

「勝手に入ってくんじゃねえよ」

「呼び掛けたのに、返事しない君が悪い」


来なくて良いのに、隣人がふらふらと正義の自室に乱入してきやがった。


「スペアキー、渡すんじゃなかった……」

「君もわたしの部屋に遊びに来てくれれば良いのに。 そのために、渡したんだし」

「俺は命が惜しい」


遊びに行く、という言葉の魅力を置いておいて、やはりフィオナとスペアキーを交換したのは、いささか早まったと言わざるを得ない感じがすごくする。あと、いくらなんでも、龍華院フィオナという少女の部屋に朝日奈正義が入るのは、緊急事態ならともかく、普通にいろんな意味で危ない。それくらいは、察してほしいのだが、この同級生はそこら辺に鈍感なので厄介なのだ。今の状況も中々にあれだ。


「お前も、修学旅行の準備しとけよ」

「とっくに終わったわよ。 ──あっちの方も」

「…………そうか」


あっち──すなわち正体不明を壊滅させるという案件のこと。

あの後、風紀委員長は様々な情報を正義に投げてきた。修学旅行を決める学年集会がうやむやになって、結果的に生徒会及び風紀委員会主導で行き先を決定した、ということもその時に初めて知った。


「お前はどこまで、知ってたんだ」

「全然何も」

「まじで?」


てっきりぐるだと思っていたのだが。

あの乱闘を制したのも、風紀委員所属のフィオナだった。


「知ってたら、わたしは君との一騎討ちは選ばないよ。風紀委員と生徒会メンバーで、袋叩きして消耗させてから、っていうもっと楽な方法を選ぶ」

「外道」

「目的を果たすためなら、って意味なのもわかってるでしょ」


正義は一見気弱そうなその実恐ろしい眼鏡の、学園の治安を司る猛者を思い浮かべる。


「何者だよ、あの女」

「″万眼″って聞いたことあるでしょ」

「ああ。 そいつか」


いつかぶっ壊した組織のトップっぽいやつが、その名前を叫んでいた。


「『″万眼″の奴にはめられた!』って負け犬の遠吠えで名前が上がってたな」

「負け犬の遠吠え経由で情報を得ることあるのね……」


意外と有用なのだ、負け犬の遠吠え情報は。


「あの女は、何をしていた…………いや、うーん、なんだろう、した、は違う気がするんだが」


どうしても″万眼″が直接何かをしたとは思えない。なんというか、大きな川の流れをねじ曲げるように。


「なんか、根っこみたいなところの、形を変えられた、みたいな」


感覚を語るのにぴったりな言葉が、正義には見つけられなかった。

だが、正義のまとまりきっていない考えに、フィオナは拍手をした。


「よく、正解できたね」

「は?」

「その感じに気づけたのは、君で三人目らしいよ。 因みに、二人目はわたし」


正義は、ぱちくりと眼を見開いた。訳がわからない。


「先輩のことを、よく知る人曰く、まあぶっちゃけ生徒会会長なんだけどさ」

「ああ」

「曰く、乱数調整してるらしいの」


乱数調整。

正義の頭に、TAという単語が浮かんでくる。


「なんでも、未来はいくつかの筋があってけれど大まかな形に最後は纏まるらしいのよ。 で、万里先輩はちょっとしたことで、例えばお客さんにうすいお茶を出したりして、筋を変えているらしい」

「ちょ、ちょっと待て!」


その言い方ではまるで。

先を──。


「未来を視ているってことか!?」

「本人は、論理的試行の結果、とか言ってるけど要するにそうね。 ゆえに″万眼″──なんでもお見通しってことよ」

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