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主人公の名字忘れてたおろかな作者

フィオナは、反省の意を示して、床で正座をひている。この状況で、話を聞くつもりらしい。


「龍華院ちゃん、今週何回目?」

「まだ、一回目ですよ」

「そんなしょっちゅう、正座してんのかよ……」


よくあることらしい。


「正直、あんまり反省してないよね」

「そんなことありません! 華道、茶道、書道、その他諸々の道がつく系のものを習っていたので、正座には慣れてますから、ぶっちゃけフローリングが冷たいだけ…………。 口が滑りましたけど反省してないなんてそんなことありません!」

「してねえな」

「気のせいよ!」


誤魔化すつもり、あるのだろうかこの女は。

風紀委員長も、首を横に振りつつため息をついた。


「龍華院ちゃんの場合、この説教の時間で休息とっているみたいな部分もあるのが、またなんとも……」


普通、説教されたら、表面上だけでも申し訳なさとか取り繕うと思うのだが、なんなら説教相手に休憩時間にしてることすらバレている。


「本当に全くもって反省してねえなこいつ」

「フィオナぁ、なに言ってるか、わからないって言うかぁ」

「うわ」


ぶりっ子というか、なんかもう、日頃を知ってるだけに正義に寒気が走る。それを見たフィオナは、立ち上がって正義を挟み込むようにソファの背に手をついた。

顔の距離が縮まる。


「その反応はなによ! わたしだって、やってからないわー、って思ったんだからそこは暖かい目で迎えなさい!」

「お前自身がないわー、ってなってんのにこっちが受け入れるの無理だろ!」

「包容力のない男には、わたしの名字を預けれないわよ!」

「バッカお前、俺ほど包容力のある男はこの世にいねえだろうが!」

「はー! ならわかりました、役所に行くわよ!」

「は? 役所なんて、なにしに行くんだよ」

「あのさ」


コン、と陶器が机をたたく音がした。

正義とフィオナは固まる。

恐る恐る首を動かすと、ニコニコした風紀委員長が、新しいお茶のカップを並べていた。


「朝日奈君、お客様とはいえ、常識的なマナーを守らないと、それはもうお客様じゃなくて、畜生の類いだからね? お客様は神様って言葉を勘違いしちゃだめよ? 人前で痴話喧嘩なんて、もっての他だよ?」

「────っす」


やべえ、こわい。


「龍華院フィオナさん」

「は、はい」

「君が朝日奈君のことが大好きっていうことは、分かったけど」

「べ、別に、好き、とかそんなわけじゃ」

「あ?」

「ひゅっ」


生物としての本能が告げる。これに逆らってはならない。正義とフィオナにもし尻尾があれば、二人とも脚に挟み込みながら抱き締めていただろう。


「君の役職は?」

「風紀委員会執行部門部門長補佐です!」

「うん、そうだね。 君は、実質的にここのナンバー3。 来年はトップに立つわけだ。 つまり、いまでも十分責任者の側だよね。 話は変わるけど、今年風紀委員会に新しく入ってきてくれた中等部の子達の人数は分かる?」

「さ、30人です!」

「そう。 そして、いま研修中で全員ここに詰めてるの。 そんな子達に、来年からトップになる君が、風紀委員長室で痴話喧嘩してたなんてことが、知られたらどうなる?」


こわい(二度目)。

なにがこわいって、表情が変わらないのが、本当にこわい。

現にあのフィオナは、ガクガク首を動かすおもちゃみたいな反応しかできなくなっている。


ふう、と風紀委員長が細く短い息を吐いた。

二人はびくってなった。


「と、まあ。 小言はこれくらいにして、そろそろ本題に入っても大丈夫かな?」


正義は素直に、ガクガクガクガクと頭を縦に振った。

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