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幕間 この時上層部は

学園における統治機関は、二つある。

一つ目は、生徒会。

二つ目が監査委員会だ。もっとも、監査委員会は五人のメンバーから構成されていて、実働は下部機関である風紀委員会が担う。

そのため、一般の生徒による認識は、生徒会と風紀委員会が二大統治機関である、というもので、概ねその認識は正しい。

しかし、二大とは言うものの、その組織が二つとも同程度の規模かというと、そうではない。

ざっくり言えば、人が多くて資金も潤沢なのが生徒会。よく言えば少数精鋭、悪く言えば人手が常時足りねえ、そしてまごうことなく貧乏なのが、風紀委員会である。

もっとも、後者は学園の風紀を維持するという組織の役目上、どうしても荒事を得意とする者が必要となるので、仕方がない側面もある。

では、両者の関係はどうか。

一般生徒は言う。「仲が悪い」と。

生徒会と風紀委員会に所属している生徒は言う。「うん、まあ、協力するところはするし。 何より、トップ同士がね…………」と。



「邪魔すんぞー」


金色の髪を靡かせた女が、執務室とプレートがかかった部屋の金属製の扉を勢いよく開く。大概の金属扉だと、閉まる時に勢いがつきすぎないように仕掛けがなされているのだが、残念なことに予算がないので、風紀委員会の扉にそんな上等な仕掛けがあるはずもなく、大きな音が響き渡ることになった。


「も、もう! いつも扉は静かに閉めてって言ってるでしょ、真理ちゃん!」

「わりいわりい。 生徒会だと、大体の扉はスライドだから、全く慣れてなくてな」


相変わらずぼろいなー、とカラリと笑う。

真理──来栖真理、生徒会庶務長にして渉外担当部門のトップも兼任している。


「つーか、お前らみたいなアラゴト組織のトップが、そんな扉の閉まる音の一つや二つにビビってて大丈夫なのかよ、鏡音?」


風紀委員会委員長、鏡音万里は眼鏡のブリッジ部分に手を添えて押し上げながら、


「違うよ。 物音に敏感になってる違反者たちが、ビックリしちゃうからだよ」


取り調べが終わったら、大体みんなそうなるんだよなんでだろうね、と万里。

お、おう、と真理はちょっと引いた。


「それで、生徒会役員様が、何の用?」

「お、刺々しいな今日は。 ケンカでもしたか?」

「茶化さないで、割りと今それどころじゃないの」


ケンカした部分は否定しないんだな、と思いつつ、真理は口に出すような愚行は犯さなかった。


「例の組織、進展があったんだろう?」

「ああ、やっぱり、その件だよね。 うん、許可します」

「こっちがなにか言う前に先回りして、その上で書類まで準備し終えてんの、相変わらずだな」


今さらでしょ、と万里は肩をすくめる。

真理がここに来たのは、生徒会も昨日のショッピングモールテロの、主犯格の男の取り調べに同席する許可を得るためだ。


「渉外部門が動いてるのが分かってて、昨日のあれに、生徒会の子も関わってたら、今日には来るって確定するでしょ?」

「そうだけど、あたしはそんな風に一気に未来の答えを出すのは無理だし、というかあたし以外でもできるやつ、お前以外にみたことないからな?」


荒事を取り扱う機関のトップが曲者でないはずはない。


「じゃあ交換条件だけど、修学旅行先は生徒会の横槍で近畿の方にすると思うけど、日程にヤマトエリアは組み込んでおいてほしいな」

「…………そこまで、予測してんのか」

「予測? なんのこと?」


学園の風紀を司る少女は首をかしげながら微笑む。

生徒会役員は両手を掲げて降参の意を示した。


「あとこっからはプライベートな話になるんだけどさ」

「なに?」

「『土、日、時間を開けた』らしい」


万里は一瞬、先ほどとは違う純粋な笑みをこぼして、直ぐに口を引き締める。


「おもいっきり埋め合わせてもらうから、覚悟しておいて、って伝えてください」

「あいよ…………直接メッセージでやり取りしろよ、なんであたしらが、わざわざ風紀委員会委員長と、生徒会長のデートの約束を取り付けなきゃなんないんだ」

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