フェチは公の場で明らかにするものではない
灰皿を顔面にくらい気絶した三匹のテロリストを、カフェの店舗内に引きずり込み店員の協力の下、厨房に転がした。協力を申し出てくれた客に、見張りは頼む。なんでも、縛り方に一家言あるらしく、正義達はそれ以上を聞くのはやめた。
「女王様って呼ばれてたな」
「一緒にいた男性は豚って呼ばれてたね」
「下僕らしいな」
「その先を考えるのはやめておきましょう」
一体、どういう、女王様なのだろうか。
「どっかの国の王族、ということはないですよね」
純粋な後輩の質問に、穢れた三人はHAHAHAと笑い合う。
そして、
「ユウ後輩、先輩命令。 そこは深掘りしないこと、いいね」
「機密情報ってことですね」
「うん、機密機密。 性的嗜好なんてものは、人に明かすようなものじゃないからね」
性的嗜好、と呟いて首を傾げている後輩の対応は、兼道が頑張るだろう。
それはそれとして、確認しなければならないことがある。
「それで、イチジョウユウナ」
「長いので、もうちょい短くしてもらえますか。 もしくは、様をつけるとか」
「じゃあ、一条で良いな」
「わたしは勇奈って呼ぶね」
名前の呼び方を改めて再び問いかける。
「一条。 お前武器は呼び出せるか?」
「それなんですが……」
勇奈が手を宙にかざす。こうすることで、通常ならソーマは武器を引っ張り出して具現化させることができるのだが。
キラキラと黄金色の粒子が舞う。
だが、それは収束して形を伴うことはなく、霧散していった。
「なんていうか、呼び掛けが届かないというか、私の声がひどく小さくなってしまったような感じが……」
「兼道」
「同じく。 メニュー表を1ミリくらい地面から浮かすくらいしか、無理だね。 なんていうか、水の中で無理やり声を出そうとしてる感じがある」
ソーマと、エスリプト。
前者が武器、後者が能力を扱うという点では異なるが、その原理はある一点で同一のものであるとされる。
すなわち、こことは異なる層に存在する「それら」から力を引っ張り出すということである。
強力なソーマおよびエスリプトは、この力を引っ張り出させることが得意であるということでもある。
「つーことは、戦力的には兼道は除外か」
「むしろ、龍華院さんが能力使えてる方が信じられないというか」
「だって、わたしだし」
「こいつ、声無駄にでけえもん」
正義とフィオナの視線が絡み合う。
そして。
「センパイ。 あっちのテロリスト達から、この阻害の原因について聞き出してきたんですが……ってなんで、この二人とっつかみ合いしてるんですか!?」
「愛情表現だからだよ」




