模様替えするときに意外と壁が日焼けしていることに気づく
学園町は、学生達によって統治されている。
生徒議会──生徒達の代表が集う機関──は、この学園町における「校則」を作る、ある種の立法権を保持している。
生徒会は、生徒会長をトップとして、校則の運営を行う行政権を持つ。ここの下部機関として、例外を覗いて各種委員会、部活動も所属することになる。予算執行も、生徒会の職分であるため、仲良くしておくことが望ましい。
そして、例外。
学園監査会及び、その下部機関である風紀委員会。これら二つは、この学園町における風紀及び治安の維持をその職務とし、時には生徒会への監査も辞さない。司法権と警察権を与えられており、正義を司っているとも言える。
因みに、人気の無い機関ランキングのトップツーでもある。
それゆえか。
「相変わらず、ボロいな」
建物が汚ねえ。
「歴史があるって言いなさい」
風紀委員の赤髪をもつ少女が、即座に否定するが、壁は黒ずんでいて、床はとても現代的な建物と思えないレベルででこぼこしており、一周回ってデザインと言い張れそうな建物である。少年の言葉の方が正当性があるだろう。
「この前も暴れやがった奴がいてね……」
ちょくちょく修繕しているけど、追い付かないの……、と少女は答える。
「建て直しゃいいじねえか」
「素晴らしい提案ね! お金だしてくれる?」
予算も足りてないらしい。
トイレットペーパーすら、風紀委員に所属するメンバーによる私費で賄っているそうだ。
「そんなことはどうでも良くて。 さっさと調書作るわよ。 名前の確認からね」
「カツ丼はまだか?」
「珍 日羅で、間違いないわね」
「違うわ! つーか、もう普通に顔見知りだろ、朝比奈正義だ!」
少年チンピラ改め、正義は思わず大きな声を出してしまう。
詰所にいた他の風紀委員が、犯罪者が暴れだしたのか、と慌てて取調室にやってきたが、カツ丼女が手をヒラヒラふって何事もないことを伝えた。
「はいはい、せいぎくんね」
「音読みするな、耳いかれたか?」
「あまりにも、名が体を表してなさすぎて、驚いて間違えたのよ」
「このやり取りすんの、何回目だ」
それだけ、正義がここに連れてこられているという意味でもある。
「最近、名前覚えられなくてね」
「嘘つけ」
「あ、わたしは、今回君の取り調べを担当する、龍華院フィオナよ、よろしくね。 本来ならこの取り調べを受ける人の権利を保障するために、弁護士も呼べるけど、君は例外だから」
「人権剥奪すんな、それと、名乗り必要あるか?」
そして、この変な女とは、正義が学園に入学してからの付き合いなので、当然ながら名前なんて言われるまでもない。
「規則だから」
ここまでのやり取りも、実はいつも通りであったりする。毎回、毎回、正義をおちょくるフィオナも懲りないが、いちいち相手している正義も懲りないのである。
「それで」
パチパチと爆ぜる音。紅が飛び散る。フィオナの虹彩が、獰猛に光った。
「あの連中とやりあっていた経緯について、詳しく話してくれる?」