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某カフェチェーンのフードメニューに分からせられたい人生

「これが、うちの委員長の好きなお菓子なのよ」

「ほーん」

「リアクション薄くないかしら」

「普通に、高級な和菓子で、リアクションのしようもねえんだよ」

「因みに、最初に中のアンコだけ食べて、皮はお茶に漬け込んで食べるのが、委員長の流儀ね」

「アンコと皮の組み合わせの兼ね合いを考えて焼かれたであろう、この菓子の存在そのものへの冒涜じゃねえか」



「じゃ、じゃ~ん…………」

「恥ずかしがるなら、最初から水着買いにいくとか言うんじゃねえよ、普通にかわいい」

「だ、だって、君があんなこと言うから! あと、そっちこそ、そういうことは、照れながらいうと、効果半減なのよ? それとさっきからかわいい以外の感想がないから、ちゃんと語彙を駆使しなさい!」

「さっき語彙を駆使したら、店を燃やそうとしたじゃねえか!」

「君のあれは、セクハラよ!」



「センパイ。 胸がムカムカしてきました……」

「うんうん、ユウ後輩。 その気持ちを忘れちゃだめだよ。 あの二人が、結構しょっちゅう恨みを買いまくってる原因の1個だから」

「…………なに勝手に買って飲んでるんですか、私にもください缶コーヒー」

「覚えておくと良いよ。 ああいうアホ二人の監視任務も入るときが来ると思うけど、ブラックコーヒーは必須だから」



「…………何枚目だこれ」

「まだ、五セットしか試してないわよ。 やっぱ、君ジーンズ似合うのずるいわね……」

「そうか?」

「似合うって言っても相対的なものであって、絶対値でみれば、あらゆるところで喧嘩を売られるゴロツキにしか見えないけど」

「お前は、俺を褒めたいのか貶したいのかどっちなんだよ」

「わたしみたいな美少女に褒められて調子にのらないように、いさめてやってんの。 次はスキニーを軸にして、何個か組み合わせを試すわ」

「まだやんのか……。 お前、俺のコーディネートなんざ楽しくねえんじゃなかったのか……」

「楽しくないわよ。 わたしのテンションは爆上がりしてるけど」

「お客様、なんでわざわざうちの店に戻ってきやがったんですかねえ! 何時間フィッティングルーム占領してやがるんだ!」

「まだ、二時間くらいよ?」

「もう二時間だよ、今の時点で非常識なんだよ! あんたらに常識説いても意味はねえでしょうか!」



「うぇぇぇぇぇ…………」

「こ、後輩ーーーー!!! 取りあえず、あっちのカフェで、濃いめのコーヒーか紅茶頼もうか」

「うげぇぇぇぇぇ」

「女の子とかじゃなくて、シンプルに人間が出しちゃだめな音と顔してるね」



午後のピークを終えたカフェは、他のお客さんもまばらに座っていて、正義とフィオナはすんなり席に案内された。

ささっと、お腹にいれるものを注文し、店員さんが去っていった後。


「つっかれたー……!」

「もう、どこにも、いきたくない」


正義はテーブルに突っ伏す。

流石に疲れた。


「食べたあとは、カフェ巡りでも、良いかしらね……」

「まだ、どっかに行くのかよ……」


正直に言うと、もう帰りたい。疲れているとはいえ、フィオナのこのバイタリティはどこからきているのか。


「せっかくの、休みだし。 久々の休みだし。 人員足りなくて、現場に引っ張り出されることもない休みだし。 緊急連絡も来てない休みだし」


休みだし休みだし休みだし、と虚ろな瞳で連呼するフィオナに、正義はどんびいた。


「相変わらずブラック労働を……」

「あはははは。 悪いやつら全員灰にしてもいいかしらー」



『ジジジジ……爽やかな日曜日をお過ごしの皆様。 大変申し訳ありません。 当センターは、我々が──占拠させていただきます。 ああ、ご安心ください、指示にしたがっていただく限り、我らからお客様方の命を奪うことはありません。 ただ、お客様同士の争いで、命が失われることは、我らの関知することではございませんが』




怖いくらい静かに、フィオナがコップに口をつけた。よくみれば、コップに指がめり込んでいる。

彼女の熱で、カップの形が変形したらしい。

正義は、いそいそと釘バットをバットケースから取り出す。

地声より、ワントーン低い声でフィオナは問いかけた。


「テロリストども、溶かして、いい?」


テロリストかわいそう。

正義はちょっとだけ、今日の夕日を拝むことができないだろう連中に同情した。

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