拳で!
正義一人が吊るされていようが吊るされていまいが、というか吊るされているからこそ、よく分からない襲撃者連中は来なくなり、そうなれば順調に集会は進むこととなるのは、道理である。
「ハワイ!」
「南極!」
「マリアナ海溝!」
「中国地方!」
進んではいるが、どう考えても決まりそうな感じはない。あまりにも、自由度が高すぎて逆に混乱しているのである。
それに加えて、協調性なんてものは明後日の方向に飛ばしてしまう奴らの集まりだからだ。
そして正義は、無言で縄抜けを実行していた。
(俺を縛った程度でどうにかできると思うんじゃねえよ)
縄抜けには、関節を外すなんて大仰な特技は必要がない。ちょっとした刃物を隠し持っているか、それが無理ならば手首を鍛えれば良い。
五指をぴったりくっつけた掌の幅と、手首の太さが同じであれば、掌をすぼめるだけで縄は緩む。
何度もあらゆる組織に誘拐され、その度に脱獄してついでに壊滅させてきた経験が正義に変な特技を多く身に付けさせていた。
「地底!」
「海底2万里!」
「木星!」
縄をほどき、そのまま重力に従う。正義の足下でごうごうと燃える炎は、体勢を立て直したタイミングで軽くつかんだロープで反動を着けてキャンプファイアーをしていない場所へと着地する。
手足が自由になったので、猿轡も外し、真の自由となったところで。
「なんで、古典的名作SF作品の話になってるんだよ!」
ずっと気になってしかたがなかったことを、突っ込んだ。
「そうよね、分かるわ。 十五少年漂流記が入っていないのはナンセンスだって、君も思うわよね」
「そういうこっちゃじゃねえよ! 修学旅行先を決めろよボケが!」
まさか、旅行先で木星に行きたいと本気で思っていたのか。そして、そうなるならフィオナは無人島でサバイバルしたいと思っているのか。
「そうはいうけどよ、チンピラ」
「修学旅行はロマンを追求する為に行くんじゃねえか」
「なら、皆木星に行くか、海底に行くか、地底に行くかになるじゃねえか」
アホどもが、口々にそんなことをぬかす。
「行き方そのものがロマンの場合、旅行すら始まらねえよ!」
「そうはいってもよお」
なるほど、正義は理解した。
こいつらに、言葉は役に立たない。必要なのは、きっちり上下を分からせることである。
すなわち。
正義は釘バットを、地面にガンッと叩きつける。
「分かった分かった。 埒があかねえ。 てめえら、喧嘩で決めんぞ! 力がねえやつは、発言権ねえからな!」
暴力で全てを決めれば良い。
こういう思考になるからこそ、正義はチンピラと呼ばれ。
「チンピラァァァァ!」
「こうなったらとことんやってやるわよ!!」
「健康美容旅行三泊四日ぁぁぁぁぁ!」
「どきどき秘宝か…………ひでぶっ」
この学園の生徒どもは、そういった序列決めに抵抗感は一切なかった。
「あのバカがいると、いつもこうなるわね」
「まあ、遅かれ早かれこうなっていたと思うよ。 それで、龍華院さん…………なんで、僕にそんな炎弾を向けているのかなあ!?」
「手近なとこから、いこうかなって」
「僕運営側なんだけど!」
最後は、フィオナと正義の一騎討ちになった。
旅行先は決まらず、焼け焦げた正義は、フィオナの買い出しに荷持ちとしてついていくことが命じられた。
教員陣はキレた。




