知らない天井の対義語って、見慣れた床だ、なのか
ゆらゆらと、海の底に寝そべっている。
体にのし掛かる水圧が、はらはらとほどけていく感覚がする。
ずっとここで、たゆたっていても良いかもしれない。
『きゃー』
『くぎばっとしゃーーーーくくく(鳴き声)』
その時、不意にサメが現れた。人魚を襲っているそのサメは、釘バットの頭を持っていた。
『くぎばっとしゃーーーーーくくく!』
「釘バットヘッドシャークごときが人魚なお姉さまを食べるなんて生意気ですわー!」
「釘バットヘッドシャークってなに?」
気づいた。
「知らない天井です」
「ここに連れてこられた人って、絶対同じこと言うんだよね」
だんだんと、頭がはっきりしてくる。
「下半身でものを考えてそうなケダモノ野郎から、お姉さまを守ろうとして」
吹っ飛ばされた。
ああ、そうか。
「私、負けたんですのね……」
「一応僕の友達だから、ケダモノ野郎はやめてあげてね。 チンピラにしといて」
「下半身の方は訂正しないのですか」
男だからね、とベッドの横の椅子に腰かける人物行くからは答える。
「ここは?」
「生徒会が持ってる施設の一つで、君みたいに道端で乱闘して怪我した子を治療する機関だよ」
学園町では、果たし状、不意打ちは日常茶飯事で、学園の運営方針は戦えるエスリプトとソーマを育てることにあるので、それを止めることはない。
「そんな、当たり前みたいに、乱闘が起きるのですか……。 治安悪すぎませんこと?」
「人を襲って、返り討ちにされた人が言うことじゃないね」
「愛の前に、障壁はないのです」
いろんな小説で学んだ。
「純粋な実力差はあったけどね。 取りあえず、自己紹介しておくね。 僕は佐藤兼道、生徒会では、まあ一応庶務の役職についている」
「生徒会」
確か、ここの学園町を運営する側の生徒で、諸々反抗的な生徒を黙らせる為の実力が認められなければ、入れないという。
「そこまで、ごりっごりの武闘派って訳じゃないよ、その辺は風気委員が何とかしてくれるし」
「……ここの学園は、本当に、生徒が全てを賄っているのですね」
兼道は、携帯用端末を操作しつつ、問いに答える。
「やっぱり、新鮮にうつる? 他の学園町から、編入してくると」
「知ってらしたんですの?」
「伝説武器使いが、学園で目立たない筈がないからね。 僕と龍華院さんに見覚えがないとなれば、消去法的に。 ということで、確認。 編入生の」
「一条勇奈、です」
兼道は、特に驚くことなく頷く。
「ようこそ、我らが学園へ。 さっそくだけど、校外戦闘報告書と、生徒会へのスカウトと、あと学校生活の注意をさせてもらっても大丈夫?」




