通学は冒険と同義(小並感)
「外道! 女の敵! 人でなし! チンピラ! 悪魔! 正義!」
「一発、殴って良いか?」
無事に勝利を収めた正義を待っていたのは、祝福の言葉ではなく、フィオナと、その他有象無象による罵詈雑言だった。「金返せ!」とか叫んでる奴らばっかである。
「まあ、まあ。 マサ、こう見えて龍華院さんは」
″なぜか″やけに重そうな袋を、ちゃりちゃり揺らしながら兼道は、フィオナの実態を明かす。
「あっちの子に賭けて、正義の敗北を祈ってたんだから」
「欠片くらいは、心配しろや!」
「あうっ」
ちょっとだけ小突いたら、あざとい声を出してフィオナは額を押さえる。
「だって…………分の悪い賭けのスリルが忘れられないんだもん!」
「ギャンブラーの思考やめろ」
「大体、わたしに心配されて、君は嬉しいの?」
何かを探るような、何かを期待するような顔。
それに対して、正義は全力で嫌な顔をする。助けられた後のことを想像しているのだ。
「その場合は、舌を噛みちぎることにする」
「そんなに、わたしに礼を言うのが嫌なの!?」
「お前の場合、礼だけで済まんだろうが!」
代償に人生全部持ってかれる気がする。
「わたしの傍にいて、身の回りの世話といざとなったときの肉壁になってもらうだけじゃないの。 ああ、君の今の戸籍もなくなるけど」
「堂々と人権剥奪宣言するな!」
こんなやつが学園町の正義(justiceの方)を司ってることは間違ってる、と正義(チンピラの方)は思う。
「それで、お二人さん。 痴話喧嘩もいいけど」
「痴話喧嘩!」
「じゃない!」
「どーでもいいけど、相手の子どうする? ぼちぼち目を覚ましそうだけど」
すっかり忘れていた。
正義としては、火の粉を振り払っただけであるし、放置しておきたいというのが正直なところである。
「流石に、僕の見えるところで、戦利品として持ち帰るのはやめてもらいたいんだけど」
「いらんわ」
本心からの即答である。
「安心した。 いざとなれば、もぐつもりだったから」
「どこをだよ」
「そりゃ……その、あの、えっと、きみの、え」
「恥ずかしがるなら最初から、そんなこと言うなや! こっちも恥ずい!」
「誰がどう聞いても痴話喧嘩だよね」
「痴話喧嘩」
「じゃない」
「まあ、とにかく」
兼道は、まだ目覚めていない少女を、ふわりと引き寄せて、横抱きにする。
「生徒会で預かりでオッケー? どうも、この子転校生っぽいし」
フィオナと正義の気持ちは一つになった。
イケメンは多少気障なことをしても映える、と。
「君がやったら、また、わたしの所に通報来そう」
「……………」
「まって、なん……! き、急に!?」
「この場合、どうなるとおもう、兼道」
対正義というか、それなりに力のある、エスリプトとソーマ鎮圧のエキスパートであるフィオナ自体が被害者の場合、風紀委員はどうするのかという、好奇心とちょっとした苛つきからの軽率な行動だった。
兼道は、生徒会の施設に向かうために、正義達とは反対側に歩きつつ。
「爆発させられると思う」
「え?」
「″怒り。 怒り。 怒り。 爆ぜり。 爆ぜり。 砕けり。 我は、破砕」
「ちょっいまて!? お前その詠唱……………ぎゃあああああああ!」
正義は、照れ隠しのために爆発した。




