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jj

「オメン」


     

    イタチコーポレーション




男「お面の起源は、正確には、分かってはいない、ただ、日本におけるお面の役割と海外の役割では、大きく食い違うことが多々あり

日本で、およそ、お面の役割は

自分とは別の者になりきると言う事が大きく、神社などでの祭事の際に

人ならざる者に、変化するために用いられたりしたものが、次第に、能と言う芸能の分野にももちいられたりする、これは、仏教における説法が、次第に、枝分かれを起こし落語と言う芸に、変化したのにも似ている、従来、日本人というものは、頭は固いが、努力という分野においては、秀でているのかも知れない

では、海外ではどうだろうか、お前知っているか」

女「さあ、知りません」

男「古代エジプトにおいて、お面とは、デスマスクの意味合いが強い

ただ、この場合に用いられるデスマスクとは、死んだ人間に、石膏などの型を用いて、その表情を、記録する類のものではなく」

女「私そろそろ行きます」

男「ちょっと、そこで、ライフマスクつまり生きている内に取るマスクを、作りましょう、ねえ、ねえたら」

女「怖い、さわらないで」

立ち去る女

男「・・・古代エジプトにおいて、そのお面という役割は、ほかの地域とは、一線を、はくしていると言っても過言ではなく」



若者「それでさ、そいつが落としていったものが、何だったと思う」

若い男「さあ、財布じゃないんだろうな、君の今の不景気そうないつも通りの顔だと」

若者「ああ、最初は、それが、そいつが落としたものかは、分からなかったんだけど、確かに落としたようだし、僕は、車を、降りて、何を落としたか、確かめようとしたんだ」

若い男「それで」

若者「そしたら何だったと思う」

若い男「財布以外だろうな」

若者「君はくどいな、どれだけ僕が、金に困っていると思っているんだい、それとも財布とみるなり、辺りを、こっそりと確認した後に

しかるべき、姿勢で、しかるべき速度を有し、誰にも見つからないように、それを取る、そんな、日本人足り得ない、本当にそんなことをする人間に見えるとでも」

若い男「やけに詳しいねぇ、やったことあるんじゃない」

若者「それでね、見てみたんだ、車から降りて、そしたらさ、これが出てきたんだ」

若い男「まあ、君が、ねこばばか、こそ泥かは、おいておくことにして

それは、気味の悪いものを、鞄から出してきたね」

若者「そうだろ、僕もそうは思ったんだけど、何だろうね、そうだね、河原で綺麗な石を、拾うようなものだよ、君にも分かるだろう」

若い男「あいにく、僕は、子供の頃から、塾通い稽古場通いが、多くてね、そんんばかわらに幾時間さえ無かったよ、ただ君、百歩譲って、綺麗な石なら分かるが、君、君の手に持っているそれは、あまり綺麗とは思えない代物だが、そう、君自身、僕の間違いではなければそう言っていたと記憶している僕の間違いではなければね」

若者「そうだよ、確かに、そうは言った、君が何度もわざとらしいまでに、確認するまでもないよ、でもさ、河原にも寄る暇がないほどの君には、きっと分からないかも知れないけど、怖いってのも一つ魅力的だとは思わないかい」

若い男「思えないね」

若者「そうかい、じゃあ、早番の僕は、遅番の君に優雅なアルバイトを託して、早々と帰宅することにするよ」

若い男「ああ、気をつけた前」

若者「えらそうだね、君はいつも」

若い男「生憎、敬語とくんずほぐれた新語は、苦手なんだよ、わからにも行けなかった僕は、それとも、河原には落ちているのだろうか、君のような不躾な言動と思考が山のように」

女「遅くなりました、あら、新垣さんまだいたんですか」

若者「まだとはなんだよ、まだとは

もう僕は、疲れた、妙に、君たちのせいに違いはない、本当にはやく帰るよ」

女「もうシフト終わって、一時間たってますよ」

若い男「全く、シフトが終わって一時間も居るとはよほど暇な人間だな」


サイレンの音が鳴り響く


女「小松菜とほうれん草のクリームあえパスタ二つとマルゲリータS一つそれから1982ものの赤ワイン二つは入りました」

若い男「ああ」

女「外、騒がしいですね」

若い男「どうせ、どこかの酔っぱらいが、車にひかれたのだろう特に板垣辺りが」

女「それはひどすぎます、でも、そうかも知れませんね」

若い男「ああ、僕は料理に移るよ」

女「私、ちょっと見てきます」

若い男「おっおい、あまり、遅くならない方がいいぞ、店長がいつ帰ってくるか」

女「はい、すぐ戻りますよ」

若い男「・・・まずは、パスタから作ろう、ほうれん草、小松菜は、軽くゆでるだけにして、アクが出ないように、その間に、店長ご自慢北海道からの空輸のこの生クリームと牛乳と卵を、用意、その直後に、ほうれん草小松菜を釜からあげて、まな板の上に、実はこの間に、フライパンには、細切れのベーコンを、炒めており、同じように、切りそろえたほうれん草小松菜を、投入、さらには、適量に計った以前用意した生クリーム牛乳チーズを、追い打ちをかけるように空爆、だまにならないように、弱火にして混ぜれば、あとは、塩胡椒で、味を、ぱらりぱらりと整え一つ目の品が完成・・しかし、やはり早乙女さんは、戻らず」

女「大変です、大変なんです」

若い男「どうした、ほうれん草と小松菜のクリームあえパスタを、一刻一秒早くお客に届けることよりも大事なことか」

女「はい、板垣さんが、板垣さんが、車にひかれて死にました」

若い男「なんだ、そんなこと・・・何」

女「あと、ほうれん草と小松菜ではなく小松菜とほうれん草です、幾ら言えばなおしてくれるんですか、あれ、私、動転しているのかしら、板垣さんが死んでいるって言うのに」


若い男「それで、板垣は、何で死んだんだ」

女「それが、それが、分からないんです」

若い男「分からない・・・死んだんだろ」

女「はい、救急車の人が、そう言ったのを、聞きました」

若い男「それでも、死因は、聞いていないんだろ、なのに何で、死因が分からないなんて事が分かるんだ」

女「だって、聞きましたもん」

若い男「聞いたのか」

女「聞きました」

若い男「良し、じゃあ、なんて聞いたんだ」

女「そこは今重要なところじゃないと思います」

若い男「ああ、分かっている、しかし、心を落ち着かせるためにも、聞いておきたいんだ」

女「はあ、ええと、言いますと、倒れている板垣さんに群がる野次馬の中心まで、入ると救急車の人が、首を振って「死んでいる」と、そして、私は聞きましたとも、私はこの人の友達です、何で死んだんですかと」

若い男「今気が付いたんだが、君はここにいて良いのかい、板垣に付いていなくても」

女「大丈夫です」

若い男「何が大丈夫なんだ何が

たかが、バイトの先輩だから、死んでもどうとでも良いというそんな魂胆なのかい」

女「いえ」

若い男「それとも、やはり今のはドッキリという事も考え得ることに今僕は気が付い」

女「いえ」

若い男「やはり、最近の子は・・」

女「外で待ってもらっているんです

行きますよ先輩」

若い男「っえ」


若い男「本当に死んでいるようには、見えないな」

女「ええ」

若い男「救急車の人が、どうして死んだのか分からないと入ったことも分かるほどに、何でしんだんだこいつと言うほどに」

女「でも、何で本当に死んだんでしょう」

若い男「君は知らないのかい」

若い「・・・いちお、周りの野次馬にそれとなくはきいたんですが」

若い男「君はそう言うことにかけては、やることが早いね」

女「話しませんよ」

若い男「今度パフェでもおごろう」

女「実は、突然悲鳴を上げたらしんです」

若い男「板垣のやりそうなことだ

決してやりそうにもないとも思えなくもないが、やったらやったで、特におかしく思えないそんな板垣だが

目の前で、救急車の中で死んでいると本人の前ではさすがの僕も口には出せないな」

女「それでなんですが、いきなり、そう、いきなり死んだらしいんです」

若い男「少しは突っ込んでほしい」

女「不謹慎です」

若い男「でも、やっぱりどうしてしんだんだ、薬でもやっていたのかそんな奴には見えなかったが」

女「さあ、明るいだけの人でしたから、そう言えば、このお面、これを握りしめていたらしいです」

若い男「それは、今なお両手を組んで、死んでいる板垣君の胸元に置かれているそれのことなんだろうね」

女「ええ、これです、触った感じ和紙や木では無さそうですが、何なんでしょう固い割に、かなり軽いですよ、これ」

若い男「お面か、そう言えば君、何か、お面で話していたじゃないか仕事中」

女「ああ、実は、私が通うときに使うバス停なんですが、そこで」

突然、急ブレーキの音がこだます


若い男「さてまあ、彼女の家から

あのアルバイト先「喫茶スパゲティー」に、向かうとなると、通る道は限られてくると言うかこの田舎では

一つしかない、つまり、ここなのだが」

男「仮面舞踏会で、お馴染みの仮面

あれもお面の一種、いや、お面と言っても過言ではない

しかし、それは、多くの国の儀式事とは、違い、その目的は、実に単純明快、老老若若、電車開通、便意快調、順風満帆、成田離婚でありマジロウその本意は、形からして、そのようとそのままであり、すなわち、素顔を隠すこれなのだ、彼らは、身分を隠すことにより」

若い男「あの」

男「なんだ、これから、体育の時間にはいるというのにけしからん、つまり、彼らは」

若い男「あなたは、お面に詳しいと

とある女性から聞いたのですが」

男「呪術的な話をしよう、お面において、その起源は古く」

若い男「これを見て欲しいんです」

男「おにめん」

若い男「なんだって、それは、何なんですか」

男「古代日本において、生け贄とは、もっともポピュラーな災厄から逃れるための解決方法だった

しかし、中には、自らが、その解決するものへとまたは、それ以外の方法により人自らが災厄という最悪から逃れるための対処方法となった

それが、まつりごとであり、また、日本におけるお面と言う別のものになる簡単な法であるが、しかし、物事には、原点があり、それは、形を変えて行くもの、中国の漢字が、日本に来て形を崩し崩し短絡化されながら今に至っていることのように

私服でもないのに今でも着物が残っているように、葬式が本文ではない仏教が、何故か日本に未だあるように、そのお面にも」

若い男「それは何なんですか」

男「そのお面にも」

若い男「それは何なんですか」

男「そのお面にも・・・そのお面にも、やはり、源流は、存在する

古来、人は、おそるるものを崇め奉る事がある、実に日本的だ

しかし、そのものに、人がなれるのだとしたら」

若い男「なれるんですか」

男「鬼になることは可能である

人を、一人選ぶ

その人間の前で、一家を、殺し、その人間を、檻の中に閉じこめる

与えるものは水だけであり

絶えず、熱湯の中に、沈める

それを、半年もすると

皮は、厚くなり、また、皺が寄り

その色は、熱した鉄のような烈火の赤である、目の色は退色し虎のような黄色、髪はちじれ声は、獣のようなものしか出ずそれは、幻想の中の鬼のように見える、その人ではないものの顔の皮をはぐと、それを、人は、おにめんと呼ぶ」

若い男「そんな、でも、じゃあ、どうして、皮をはぐ必要性があったんです、鬼が必要なら」

男「さあ、古代エジプトでは、そのお面の意味合いはほかの世間一ぱんんてきな」


「あの男の言っていたことが本当のことなのだろうか、僕は幾ら調べても、それに関することは出てこない

強いて言うなら犬神と言う古い習わしが、似ているという事くらいだろうか、もしかするとそれも、源流があり、その先には、おにめんという存在があるのかも知れない

ただ、やはり僕には、わからない」

男は、おにめんを、てにもちそれを顔に


おにめん

僕はさびれたボロアパートで

二人で居た

もう一人は今年30歳になる僕とは違い

酷くあやふやなところがある小学生といってもいい

いや事によるとそれ以下の奴が居た

そいつは今にもやぶれそうな窓側のカーテンに寄っかかって

こちらを見ている

「・・・ねえだいて」

僕は恐ろしいものでも見るかのようにそれを見ていた

いや僕は怖かった

まるで今から補食されるような怖さ

僕は酷く細く小さな華奢なそれを見ていた

高そうでもなくまた安そうでもなく

そんなどれとも該当しないような黒い上下の服を着て

それは長い髪を揺らしてこちらを見た

その黒い沼のような瞳がこちらを見る

白い肌

僕はそれを拉致してきた

しかし奴は言った

私の計画通り

私が全てあなたがこうするように誘ったのよ

僕はでかく醜く太いそんな体を

いつもはあまり感じない

焼けてボロボロの畳を感じながら

玄関に一番近い方に背を向けて座っていた

まるで赤ん坊が座っているような座り方だが

この年でやると実に気持ち悪いものだろう

「ねえ」

それはゆっくりと動いた

そして窓枠から降りると

僕の方に確実にゆっくりとではあったか近づく

先程までその細い首を絞め

腕を握り

布団に押しつけていたとは思えない

まるでそれは、そう悪魔だ

人間以外の

一瞬光の加減か黒目が赤く見えたような気がするが

きっと錯覚だ

それじゃないと余計僕の心は焦る

それほどそれは現実味がなかった

彼女は、それは、本当にその年なのだろうか

細くしなやかで

モデルを小さくしたらこんな感じになるのではないだろうか

そんな彼女を僕は前々から知っていた

パチンコ帰りによる人気のない公園で

いつも砂場で遊んでいるのだ

その夕暮れ時に写る彼女は

実にはかなげで

それで幻想的であった

それは僕が、バイトもクビになり

安いと思って買った物が詐欺で

もう全てがむしゃくしゃしていた

少しつづ貯めていたお金も

なし崩しにどうでも良くなり浪費した

僕に輝きはない

どんなきたいないことでも出来るような気がした

そんなときだった

その日最後の金を使い果たし

いつもより遅くその公園を通りかかった

そしてそれはいたのだ

一人公園の砂場で

黒い闇に紛れるような黒髪を揺らして

一人砂場にいた

僕はそのとき彼女の口を押さえた

気が付くと走ってそしてそのまま

彼女を脇に抱き抱えてはしっていた

彼女はぐったりと抵抗はしなかった

果たしてそれが気を失っていたのか

それとも恐怖だったのか

しかしいまの彼女の言葉が本当であれば

彼女はわざとそうしたという事になる

騒がずに

そして僕が破産して・・いやしていないが自暴自棄になり

そして・・・

僕は部屋にはいると

出しっぱなしの布団にそれを押しつけた

酷く華奢なそれは

鳴くような声を漏らした

僕かまわずそれを押しつけ

そしてその白い顔をなめようとしたとき

それが笑っているのに気が付いた

しかしそれは瞬時に絶望というか

それが危ないと何処かでしらせる

ごく、すごく小さな違和感

後になって気が付くほどの教えられなければ分かることなどないほどの

しかしそのとき僕はそれがおかしいのに気が付いた

その笑いの笑みはヒステリックではない

まるで罠にかかったネズミを見るような猫の目

感情もなく

当然という

僕はとっさにそれから飛び退いた

そして彼女はその飛び退いた僕を追うように

むっくりとおきあがる

しかしそのまま僕を見下げるように見下ろした

その背の高さは

座っている僕と

窓を背に立っている彼女とでは

頭一つ分ほどしか違わないだろう

しかしその後こうのような光は

酷くまがまがしく

血のような色に見えた

不味い

僕はそのとき、この危険さに身のを振るわせる

遅い

何もかもが遅い

ついにお金だけではなく

魂まで

彼女は僕を少し見ていた

しかし永遠にも思えた

いつの間にか彼女はしゃべった

それを僕は窓辺に座っている彼女を見ながら聞く

「お前は何なんだ」

彼女は僕を見てさも自然に首を傾げるだけだった


いんもらる

カメラを持っている

別に僕のじゃない

だけどこれは僕のだ

僕に金はない

だけど何でも手には入る

それは僕がこの世のルールからズレた人間だからだ

僕は全てを盗む

だから金などいらない

何もいらない

そして今、手元に誰かの記憶が詰まる

そんなカメラがある

そして、これは僕のものではない

しかし僕の手元にある



僕は新宿の軽装を歩いている

そのうるさい中を

誰も僕のことなどみない

実に好都合だ

僕は右手をポケットに入れている

もちろんそれは手を隠すためだ

マジシャンが左手を出したら右手をみよ

人が笑ったら怒っていると思え

安い物に意味を考えろ

檻の中の猛獣は安全か

僕は右手をジャンバーの中に入れている

別に中には、何もない

強いて言えば

それは少しポケットの中が広いと言うべきか

そこがないと言うべきか

目星を付けるなんて事はしない

付けるという事は見ると言うことであり

それは格段に盗むと周りに言いふらしているようなものだ

だからそのときまで盗むとは決めない

だからいつ盗むのか僕でさえよく分からない

だから今手元にある財布も

今さっき偶然、手の中にあった

僕がやることがあるとすれば

その偶然手には入った物を

いかに安全な場所まで運び出すかにかかっている

それは時に売却する店であり

また自宅であり

そして金以外を捨てる場合だ

しかし今回はどうも違う

盗んだ瞬間になにやら違和感が僕の第六感というか

感覚が異常を伝える

僕は一キロほど歩いた公園で

その中身を確認した

・・・・・不味いか

そこには小さな

それこそオマケのラムネが入っているような

そんな小さな袋がざっと見10個

それが縦長の柄の悪い財布に詰まっていた

僕はすぐさまその財布から手紋をできるだけ拭き取り

近くの林に捨てた

僕はそのまま自宅に帰ろうとしたが

またしても渋谷近くで僕の手には

小さな小柄な財布がある

確か盗んだときそれは中々金振りの良さそうな男であった

・・・・何が入ってるか

しかし僕はあわてない

そしてそのまま

先ほどの公園とは全く逆方向の公園に入り

そこで財布を開く

そこには紙が一枚

なにやらそれだけなのに嫌な感覚しかない

それこそ先ほどよりも

僕はそれを見た

外灯はかなり遠くであり

そして渋谷などの明かりが四六時中灯っているような場所でもない

しかしそれでもわずかに暗闇の中でそれは見ることができた

「・・殺すぞ」

僕は次の瞬間わき目もふらず逃げていた

どこをどう走ったかは分からない

しかしあの紙ごと財布は公園においてきた

それこそ先ほどと同じように

林のような藪に

僕はその日、家に帰る気にもならず

ただ町を歩き

その中を転々とする一人になる

バーにも行った

ゲームセンターにも行った

ハンバーガーショップにも

しかし、そのどこにも自分の居場所は見つからない

始めから、そんなもの無いからだ

僕が家に結局その日つくこともなく

そのまま盗みをすることもなく

結果的にゲームセンターに戻ったまま

朝を迎えていた

柱に掛かっている時計が朝の六時を指している

どうも何かを食べる気分じゃない

しかし、いつ食べれるか分からないことになるかもしれない

・・・・・そんな時ようやく僕は、改めて事の難解さを考えた

(どうして僕に渡せた)と言うこと

どうやって

僕がどうやって盗むと

それはどうしても分かりそうなことではない

しかし、もしも、もしもだ、もし僕の盗みの行動パターンを知っていて

わざとそうなるように仕掛けたとしたら

それほどまでに僕は、浅はかな

誰にでも行動を分からしてしまうような人間なのか

僕はいよいよ何かを食べた方が良いと思い始めた

イラついているのだ

先ほどまで何となく心を泳がしていたが

しかしどうも、もはや限界というよりか

もう怒るしかないような心境だった

これは何をしても止めようがない

それこそ怒りたいわけではない

誰もが排泄するように

僕は怒る

それを止めることはできない

止めても膨れ上がるばかり

逆効果以外の何者でもない

僕はうるさいゲームセンターで叫びそうになる自分を押さえ

そのまま電車に乗った

今の持参金なら少し遠くにいっても十分だ

僕はそのまま山か海かと思っていた

しかしどうも心は決まっている

海だ

誰もいない

そんな海で叫びたい

僕はそこで自分なんて物は何も求めていないと、そう思ったのであった


僕は電車に乗ってる

周りに人がいるのは当然だ

しかしどうもじっとりと誰かに睨まれている気がする

いつものことだ

何をしても誰かに睨まれている気がする

部屋の中にいようが

何処にいようが

だからもはやきにしない程度のことだと思っている

しかし、今日は違う

そんな考えがよぎるのは

あの紙のせいだろう

僕はまばらな客の中

真ん中の長いすの

その更に真ん中に座る

その席には後二人

左右に座っている

残りはまばらに席を立って吊革につかまっているから

降りる駅が近いか

座るのがめんどくさいのだろう

どちらにしても僕はそれを眺めていた

「新居方 新居方」駅名が呼ばれる

確かこの駅だ

いつか何となく調べてあった

あまり人のこなそうな海が近くにある駅

僕はそこで降りることにした


そこから程なく僕は歩く

その道道にそれどれの看板がある

しかしいくさきは海だ

それだけは変わらない事実だ


僕は海をみようと更に進む

進むほど潮の香りがして

あの独特の

髪に混じるような

そんなねっとりとした空気を感じた

もうすぐだ

それはトイレを我慢するように

ご飯に早くありつこうと急ぐように

僕は急な坂を駆け下りた

そのとき何処かで何かがなった

それがすぐにお寺の鐘だと分かったとき

僕は気がつくと

その海岸線を見下ろすように建てられた

そんなお寺の真ん前にいた

「・・・・」

僕は本堂を見る

その前に見た鐘堂や

寺独特の卍

・・・・・僕はそのときどうしてそのようなことをしようと思ったのか分からない

しかしふときがつくと

僕はその寺の本堂の奥におかれていた

小さな大仏を背負うと

そのまま海岸線を走っていた

どう言う分けか

いや分けなんて無いと思うが

僕には確信があった

・・・きっと誰にも会わない

どうしてそれが当たるのかは分からなかったが

その漁師町のようなそこには

誰も住んでいないように誰にも会わなかった

僕は風呂敷似ず積んで背負った大仏ごと

その急な下り坂を

海が見える前で駆け下りた

息は切れていない

しかし、その海は

見た瞬間に

叫ぶ必要性を無くした気がした

それは、そんな叫んでも何も変わらないと思ったからに過ぎない

僕はこれからどうしようと思う

しかしこれを返そうとは思ってはいない

ただ背負っていた

そして考えていた

何処までも続いていないだろう海を見て

何処かに終わりがある海を見て

結局何の考えもなく

その日僕は近くの宿に泊まった

それは正直犯罪者として疑われる可能性もあった

しかしなぜかと待ってしまったのだ

それは実に簡素な宿で

お世辞にもすてきなんて言う言葉はなく

民宿と言うべきだろうが

表には「ホテル☆キンキラ」と書かれた木の風化寸前の看板

僕はここに決めた

幸い誰も感心がないようで

僕は近くの林に置いて置いた大仏を見に夕暮れ時もう一度あの林に向かう

そこで、僕は、あらぬ物を見てしまった

それは林の奥にある神社で

その階段を上りきらず脇にそれた林のような藪に隠した

そして僕はその藪に目をやると

なにやら音がする

僕は周りに目を走らす

しかしあたりは何も変わった物はない

・・・・別の所に泊まればよかった

改めてそんなことを思ったが今更変えては怪しまれる

僕は一通り見て

もう見るのをやめて帰ろうかと思ったが

そのときまたしても音がした

それは

小さな物が

落ち葉を踏んで歩くような

僕はまたあたりを見渡す

できるだけ自然にやっているように見るが

しかし、その正体は分からない

しかしだ、そのとき僕は危ない物を見つけてしまう

なんと林に隠してあった大仏が

林の藪の中からわずかに横に移動しておいるのだ

・・・転がったか

確かにここの急斜面は転がっていてもおかしくはない

僕はわき目も気にせず

その大仏に走った、その時

「・・やあ」

その大仏が右手を挙げたのだ

「・・・・」

僕は挙動不審い立ち止まる

・・・・・夢を見ているのか

それともあれは端から見たら大仏のように見えたが

実際は何か別の物が大仏に見えて

それであの大仏は元の位置にあるのか

それとも目の錯覚で

僕は確かめるべく歩きだそうとすると

「やあやあ」

それは小さい割にものすごい早さで

僕の方に走ってくると

僕の膝にしがみついた

「なっなんだ、お前」

普段あまり荒っぽいことを言わない僕は

ついじが出てそんなことを言ってしまう

「・・・私は泥棒の神だ」

「・・アニメですか」

「・・・・・・・・あんな物と一緒にするな・・・しかしお前は中々見所がある・・・どうだわしの弟子にならんか」

「・・・あなたは仏なのでは」

「・・・この姿だからと言って仏なわけではない

大体仏に本来姿なんぞ無かろう」

「・・・ではあなたは・・神社とかの・・・いやしかしたしかに寺に」

「・・・まああれは祀られていたというか・・封じ込まれ等れていたと言うか」

「・・・・えらい違いのような気がしますが」

僕は緊張感の中でそんなことを言う

もしこれが現実でも

滅多なことを言って

もし殺されたらかなわない

僕はできるだけ平常を装う

普段の僕では想像もできないくらいの愛想の良さだ

「・・・まあ、人に取り付き泥棒をさせる

そのせいで村はじしんあんきに取り付かれ

結果的に泥棒させるわしが悪いと言うことになる

・・・わしは悪いか」

「さあ」僕自身それについてはよく言えない

世間一般的に言えば

それはルール違反だから悪だろう

しかし今聞かれているのが僕自身だとしたら

それは僕としてはどちらでも良いことであり

良いも悪いもない

だから言葉を濁す

「・・・お前は生粋の泥棒だ・・・どうだ」

それは大仏にしてはひどく欲物的なそんな黒い商人のような目を更に鋭くさせたような細い目で

僕を夕暮れ時の林で見る

・・これでハイなんて言った日には何をされるか分かったものではない

大体今のままで特に変わりたいわけではない

目立てば後で大変なことになる

少なくとも、代償なんて言う物を求められるのは、大っ嫌いだ

「・・・・・どういう」

僕の悪い癖で

取りあえず相手の機嫌をとるような意味で聞く

しかしそれが相手に為になっていないと思っても

少し興味があると言われてしまえば

それで聞いてしまうのだと自分的に納得させてしまう

「・・・・例えばだな・・女性の褌なんかを」

「・・・・・・帰らせていただき・・」

僕の足にその黄金色の何かがへばりつく

それがなまじ嘘のような金色であり

そしてそれが、見慣れてい無いような大仏と言うもので

僕はただそれをどうすることもできないままただ嵐が通り過ぎるのを待つようにじっとしていた

ちなみに嵐のような日には僕ははしゃぎ回るのでそうとも言えない

なお雨、雪、雹に類する物がないとなおグットである

「まあ、まて」

その落ち着いた言葉とは裏腹に

足下に金色の何かが僕の足にへばりつく

今すぐにでも逃げ出さないのは

そこに何か思っている証拠だろう

「・・・放して下さい」

「・・・逃げない」なぜかつぶらな猫のような瞳で見上げるそれは

何処からどう見ても小さい大仏であり

そしていつの間にか足早に過ぎた日は

もうよると言っても良いような時間になっていた

わずかに月明かりや星が杉の切れ間からその大仏を写す

「・・・・・早く用件を」

僕はその下でしがみついているそれに聞いた

しかし泥棒の神様だと

・・・一体何をすると言うのだ

・時間を止める・透明になる・壁をすり抜ける・人を操れる・テレポーション・・・・・・・・要らない

所詮どんな能力が手に入ろうとも

今のままで十分の俺にはやはり必要ない

「・・お前をわしの弟子にしよう」

「・・利点は」

「・・まず、わしの弟子という特権を得られる」

「・・他に」

「・・・・・・・・・・色々じょ」

「・・じょ・・何もないんですか」

「だから、だからわしという神の弟子という」

「・・・・そうですか、では弟子になったという事で、さようなら」

「ちょっと待てい」

「・・・まだあるんですか」

振り返ったそこにはさきほどの二倍ほどの大仏がいた

「弟子になったからには、師匠たる、わしのことは絶対服従だ」

「・・・ならやめ・・」

「二言は神の前にない」

「しかしまだ何も取り交わしっぽいこと端にも」

「・・・口約束・・神の前でこれ以上確かなこともあるまい

・・それじゃあ、手始めに、エロ本買ってこい」

「・・・いやです」

「なぜじゃ」

「・・・お金ありませんもん」

「それでもお前は」

「・・・いやです、盗みません」

「・・・それなら強制的に」

「あなたは僕に何をして欲しいんですか」

「だからエロ本を」

「・・・そんなこと誰でもできるでしょ」

「誰でもできるならお主とて、楽でしょ」

「何処にコンビニがあるんです」

「・・・馬鹿な・・・もちろん普通の住宅だ」

「・・・何処に住宅があるんです・・民家でしょ」

「・・・・・早くしろ」

「しなかったら」

「殺すぞ・・血反吐はいて」

「・・それも良いかもしれません・・ちなみにこの契約いつまでですか」

「・・・わしが死んだら」

「・・・」

「まあ、待ってくれ・・だからその包丁を」

僕はいつの間にかそんな物を持っていたようだ

しかしまだ何もしていない

「・・・もう良い、しかしどうだ

わしを都会に連れて行かないか」

「なぜあなたはそんな姿なんですか」

「・・いやだからわしだってこんな姿はしたくない

しかし閉じこめられているんだから仕方ないだろう」

「・・・・それじゃあ、あなたをそこから出せばいいんですか」

「・・・まあそれができるなら越したことはない」

「成功報酬は」

「・・・弟子との縁切りだ」

「・・良いでしょう・・・では何をするんです」

「・・その前に・・そのエロ」

「・・・・・・・・・」

「分かったから、何でそこでライターを僕の前であぶるように付けるのかな」

「・・・・・」

「わしをこの村から連れ出してくれさえすればいい」

「・・・・僕はてっきりこの村に宿を決めたのはあなたのせいだとばっかり思っていましたが」

「・・まあ、あの山の中に捨てられたままではわしも・・・・」

「僕が置いて逃げると」

「・・・まあ、邪魔な物を持って逃げるのは愚の骨頂だからな」

「あなたはなぜ泥棒の神様なのですか」

「・・・単純に石川五右衛門と言えば分かるか」

「・・・誰です」

「知らないのか」

「・・いえ、知っていますが」

「なら何で嘘なんか」

「・・いえいま聞きましたのでもう知らない名前ではなくなりました」

「・・・本当か」

「・・・何で嘘なんて付かなくてはいけないんでしょうか」

「・・・まあ良い、とにかく外に連れ出せ」

「もう外でしょ」

「この村の結界の外にだ」

「・・今からですか」

「何時でも良いが・・・もう追っ手が掛かっているぞ」

「・・・・あなたの寺の人ですか」

「・・わしの寺ではないが・・そんなところだ」

「僕の荷物は」

「・・何も持っていないだろ」

「・・まあ」

「それ急げ・・田舎物は足が速く粘っこい」

「・・・あなたは何をしてくれるんですか」

「・・・・特に」

「・・・・」

僕が仕方なくそれを置いて逃げようかと考えているが

そんなことを考えていると

「・・・・」

無言でその大仏が僕を見てくる

そのつぶらな瞳は

どうも僕の保護欲を

どことなく呼び起こし

まるで僕がそうしたいと思っているように

いつの間にか

僕は唐草模様の風呂敷を大仏に被せると

そのまま向こうの方で光るライトを避けるように山を走り始めた

「・・・どっちか分かりますか」

「・・知らん」

「・・・何処までが結界なんですか」

「ここにくる前にあったトンネルを抜けたらだ」

「・・・誰か待ち伏せしておいるんではないんですか」

「・・・運だろ」

「・・・・何か泥棒の神様なら」そう言おうとして僕はやめた

またどうせ

「知らん、勝手にしろ、いい加減にだ」みたいなことを言われるのが落ちだ

僕は自分の勘を信じて

そのトンネルに入るのは諦めて

山の中にはいることにした

したと言っても

その暗い中を歩くのは些か危険に思われ

結果的にのろのろと

ゆっくりと

着た方向が分かるように歩くに過ぎない

「・・・大仏」

「・・・・・・違う」

「・・何て呼べばいい」

「邑智の内陣神」

「・・・オオチノナイジンノカミ・・・長い」

「・・オッチーで」

「・・・おおさん」

「・・・オッチーで」

「大仏」

「・・・なんです」

「もう少し小さくなれないものか

今は楽でもその内辛くなるだろう

だから出来るだけ」

「それなら僕の体を少し分けてあげよう」

「・・・・・って」

「・・食べたらいいじゃないか」

「・・・いやさっき大きくなったり小さくなったりしていたではないか」

「・・いや質量は変わらない

わしら神という物は、要は気持ちの物だ

だからいくら大きくなろうと

また小さくなろうと

その重さは基本一定

だからお前はわしがビルくらい大きくなっても

そのわしに押しつぶされて殺されることはない」

「それじゃあここであんたを殺したら」

「今現在お前はわしと口約束という契約をした

それはお前が今覚えているという時点で

全てのことが本当になる

そして破ったら殺すと言った

つまりはそう言うことだ」

「・・そんな話し合ったっけ」

「・・・嘘だろ」

「・・・いや記憶録が弱くて」

「・・・・・・・・・・・」

「まあ嘘は置いて置いて」

「・・殴っても良いか」

「・・・捨てていきますよ」

「・・うむ」

ここで共倒れはいやだったらしく

結果的には

「許すか」

何て言って背中で収まっている

時期が夏でも

その時間帯は寒い

僕は林の中を歩く

着たとき見感じたトンネルの長さはそこまでではない

そうなるとすぐとはいかなくとも

いくところまでいけば

自ずと何かしらあると分だ

時間は夜の十二時

時折辺りでガサゴソと音がする

それが熊でなければいいがと思う

しかし肝心の神様はと言うと

背中で無言のままいびきをかいている

「・・・ふざけているのか」

それでも、これがよく分からない子供やオジさん、それに類する人間より

いくらかこのよく分からない物の方が

いくらか気分は楽である

少なくとも必要以上に気を張らなくてすみそうだ

そしてこの何かに僕は、気を使っていない

サクサクと落ち葉を踏む音が聞こえる

幸い藪などはなく

辺りは一定の広さで色々な木が生えている

そのおかげで暗すぎずまた、日が当たら無すぎずと言った感じで

雑草さえもあまり見かけない

「なあ大仏さんよ」

「わしは大仏では・・にゅにゃにゃあ」

・・・なんちゅう寝言だ

もしここで置いていってもバレないのではないか

しかしここまで来たらそれは

何時休んでも言いマラソンで

どうもと中で休めないような感じで

先に、また一歩先にとあるいって行ってしまっていた

夜十二時

僕は手頃な場所で身を休めることにする

別に無理をすればもう少しいけなくもないが

しかし無理をして良いこともあるまい

大体今更村に帰ったところで

昨日いなくなった客と言う

まさしく犯人第一候補としてあげられてしまう

宿の名簿には

嘘の名前を書いた

そこから言えることは

そこから何かつながることはない

しかしどちらにしても疲れたから休みたかったと言うべきだ

ふとめを覚ますと

そこは黄金色の

そんな世界かと言えば

半分当たっているが

半分は多いに間違っていた

僕は大仏に揺り起こされた

「・・起きよ、起きよ」

「・・・・・」

僕は誰かにさわられるのを嫌う

だから何かいまされており

逃げようと考えていた

しかし、その何かもこもことした感覚に

僕はゆっくりと目を開けると

そこには黄金に輝く何かがいた

「っな」

僕はすぐさま起きあがり目の前の何かをどかす

案の定それは大仏であり

辺りはとっくに日が昇っていた

どうやら熟睡だったらしい

「・・・」

僕は急いで自分の腕時計を見る

八時

間違っても夜ではないだろうから朝だろう

・・・よし歩くか

僕はそう思って歩き出す

「ちょ・・待って下さい」

それは後ろから聞こえてきた

僕はかまわず歩いたとき

わずかに

わずかに頭がくらんだ

その時僕は嫌な感覚を覚えた

それは嫌な奴に絡まれたとき

それは死を意識しかねない恐怖

それは寂しさ

この世の別れ

僕の口にいつの間にか液体がたまる

それは血の味であり

そして鉄のような味

僕は試しに腕を口に当てて

その液体を見た

「赤い」

間違いなく血だ

誰の

僕のだ

僕は急いで後ろを振り向こうとした

「殺しますよあなた」

それは大仏なんて良い顔じゃない

何処までもどん欲な闇

のような顔をした人間が笑ったようなかおをして

金色の何かがこちらを見ていた

「・・・・早く乗れよ」血を吐きながらそう言った

「ではでは」それは風呂敷に勝手にいつの間にか持ち出したのか自分でくるまり

「よろしく」とボソッと言った

僕は山を歩きながら

離れると死ぬのか

それとも

離れようとすると死ぬのかに付いて考えた

「お前今何か食べたいな」

そいつは風呂敷の中からそんなことを言う

「・・・・何のことだ」

「・・・いやお腹すいているだろ」

「・・・そう言えばあんたは何か食べるのか」

「・・・いや食べん・・・しかしあんたが何か食べると思えば何でも食べるぞ・・例えば、ダンプカーでも水車でもアニメでも飴でも・・」

「特には」

「そこは何か言いませうよ」

「・・・・いやそんなことを今してもらう必要はない・・と言うか何か出すことは出来るのか」

「・・例えば」恐る恐るというかんじで聞く大仏

「・・・・あんパン」

「無理ですよ」

「・・・カレーパン」

「またまた」

「・・・メロンジュース」

「・・・趣味ですか」

「・・・なら何なら」

「私は何にもなりません、私だけですから」

「・・・しかしそれなら別の物質をどうして食べれるんだ」

「・・・それは今あなたにわしが食べれるという概念を植え付けたから・・・」

「もう喋らないでくれ」

「それ飛べますよ」

「・・早く言え早く」

「まあ・・・飛べるという概念さえあれば・・・しかし」

「やっぱり良い」

「・・・でも直ぐ行けるかも」

「やめて起きなさい」

「・・ムーー」

「・・・・・・黙れ」

「はーーあい」

・・・・

僕は今実は夢を見ているのかもしれない

もしかしたら今

変なキノコを食べてトリップしているのかもしれない

僕はしかしその疲れが現実だと分かる

だから歩いている

何処かでそんなとき音がした

明らかに聞き慣れた

「これ車だよな」

たぶん独り言なんだけど

「・・・・飛行機じゃないんですか」

それは返してくれた




ウサギの耳をはやした、女性が、スーツ姿で、カジノのテーブルに座る

彼女の前には、顔に傷が、多数ある、

ディーラーが、威圧敵に、カードを、シャッフルしている

二人の様子の上に、ゴシック文字で「つづく」の文字が映し出された

「はーおわっちゃった」

私は、そう言って、ニュース番組に変わった画面を、消した

隣で、本を読んでいた、霧裂 惹句は、顔をしかめながら

「どこが、面白いのだ」

と、言うと、今日出された数学の宿題を、始めていた

手に、硬い感覚を覚え、手に目をうつすと

見慣れない、刃物が、握られていた

なぜだろう、小さいときから、私は、気が付かない内に、何か、危ない物を、良く手にしていた

でも、そう言うときでも、惹句は、その危険物を、私から、取ると

どこかに捨ててしまう

今日も、その包丁は、いつ握られたのか分からないけど

いつの間にか、惹句の脳天を、突き刺そうとして、よけられている

その上で、惹句は、何事もなかったように、つまらなそうに、宿題をしている


野球の金属バットが、幼い少女の手に握られ

地面に、いがぐり頭の同じくらいの歳の少年が、頭から血を流して、倒れている

少女が、前に進もうとするところを、使用人に、止められるが

膝に、当てられて、倒れ込む

そんな中、同じ使用人が、彼女の背後に回ると

そのバッドをむしり取った

しかし、彼女は、爪を、使用人の目に、突き立てた

使用人は、顔をずらして、皮膚に、食い込んだままにしている

「早く、少年の手当と、これに至った、経緯を調べなさい」

使用人はそう言って、噛まれ、殴られ、爪で、引き裂かれるままに

立っていた


「えーこれから、良い仲間として、勉学を、励みたいと思います」

ステージの上に、新入生のスピーチを読み上げる生徒が居て

後ろには、二年と三年の先輩さらにその後ろには、全く顔の知らない

入学生の親たちがいる

左右の派手やかな段幕と、その真後ろにいる教師達

すべてが真新しいのに、使用人のように

横には、見慣れた、顔があった

暇そうに、壇上を見ているが

その間にも、ちらちらと、私に目を向けているのが、分かる

「家達、暇だな」

惹句は、そう言うと、あくびをかみ殺し、私をちらりとみた


ホームルームが終わり、新入生同士、グループが、大体決まった頃

女子生徒が、私の席を取り囲んだ

「ねえ、釈禄さん、このあと、お茶でも飲みに行かない」

そう言う、彼女の周りの生徒も頷く

よく見ると、壇上で、スピーチを、やっていた、生徒のように見える

「別に良いけど、どうする、惹句」

鞄を持って、私の横で、立っていた、惹句に聞いた

どうせ、付いてくるのだし、聞いた方が良いだろう

奴は、無表情で、私に

「つまらなそうだな、だが、行きたいならついていくぞ」

と、言った、案の定、彼女たちは、驚いたように、私と惹句を見比べると

その中で、スピーチの彼女が、代表で

「何で、この人が付いてくるの」と、言ってきたが

「やめさせていただくわ」と、言うと、私は、鞄を、手にして、後ろのドアに向かった

「何なのあと人」

と、後ろで、声がする

「おい、行かなくていいのか」

惹句はそう言うと

つまらないと、言っておきながら、私の席にいた、女子に、一緒に行く胸を、説明する

「別に良いけど」

彼女達はそう言うと、皆で、歩いて、三十分もかからないケーキ屋に、入る、彼女たちは

ショーウィンドーに飾られた、ケーキ達の中から

楽しそうに選んでいるが、

私は、適当に、二人分選ぶと、席に戻った

「しかし、派手やかだな」

店内を見渡して、惹句は、皆が、席に着いた同時に、味わいもせず

一口で、一個五百円ほどするお菓子を食べ終えた

始めは、話しかけていた、彼女たちも

次第と、会話の流れは、話しかけても、口さえ動かさず、無視を続ける

男から、私と彼の関係に向いたが、幼なじみであること以外に

彼女らの望むような関係ではないと、話すのだが

それを、信じては貰えていないようだった

そのあと、彼らは、ゲームセンターに、向かうようだったが

私は、それを断り、家に帰ることを選ぶ

帰り道、惹句は、何も発することなく、隣を歩いてた

いつも思うのだが、彼は、どうして、私を選び、隣にいるのだろうか

わざわざ、敷居ばかり高い学校に、一緒に、入学してまで、隣にいる

ただ、それは、恋愛感情ではない

小学生も高学年に、なるころには、その存在を、否定していた

それなら、おつきの者としての職務か

それは、一番始めに否定される

惹句と始めてあったのは、かなり昔だ

そのあと、使用人として、仕事らしいことを、したことを、私は、覚えていない

むかしから、友達として、私のそばには、あいつがいる

さすがに、お風呂や、寝るときまで、一緒というわけでもなく

学校や、遊びに出かけるときは、影法師のように

一緒に、付いてくるのだ

ただ、昔は、傷だらけになったり、大けがをしたりして

そのたびに、何かしらの感情を、表していたが

最近は、無表情な、無骨な奴になってしまった

強いて言えば、ボディーガードのようなものかと

最近は、思っていると言うことにした

こういう、変な人間がいる御陰で、あまり、友達という者もいないが

その逆に、私に危害を、与えるような人間も、同じように少ない

今、私は、自分の部屋にいる

そして、何もせずに、天井を眺めている

本当に、彼は、なぜ、私のそばにいるのだろうか

其れは、私自身にあるのだろうか

ただ、それは、自分自身、真実をつかめずにいた

きっと、何かあるはずなのに


「えーであるからにして、豊臣家の姫君を」

話し方のニュアンスが、微妙に、特徴的な、先生の


手の中に隠してあったシャープペンシルを、心臓部に、つきさそうとしている先を、手の裏で、押さえながら、先を変えるが

手に、わずかな痛みを感じる

ペンの裏に、細い刃が仕込んであったようだ

それを、気にせず、つかみ取ると、自分の机の中に、放り込む


話を・・あれ、シャーペンは、どこに行ったのだろう、先ほどまで

手の中に、収まっていたはずなのに

私は、筆箱を見てみたりしたが

「う」

と言う、ジャックの声で、横を見ると

床から、シャーペンを、私に渡した

「ありがとう」

私は、受け取ると、授業を、続けた


昔、遠い昔

まだ、彼女が、普通だったとき

僕は、近所の城と言われる一角に、居た

そこには、幽霊のように、白い女の子が居て

いつも、外を見ていた

でも、其れは、

遊びたいと言うよりも

見下しに近かった

その証拠に、下に、使用人が通ると、唾を吐きかけたりしていた

「おい」

僕は、夜になるのを見計らい

奴の窓に、石を当てた

子供のくせに、夜遅くまで、女の子の部屋は、明かりがついていた

案の定、窓が開いた

「おい、お前、馬鹿だな」

なぜ、そう言ったのか、分からない

ただ、唾を人にかける彼女を

届かない塀の向こうから馬鹿にしたかっただけなのかも知れない

いや、きっと、違うだろう、何となくなんだから

「何よ」

其れは、そう言うと、何かを投げてきた

其れは、塀まで、届くことなく

庭に落ちた

「バーカ」

僕はそう言うと、そのまま、家に帰ろうとしたが

何者かに、首筋をとらえられた

後ろを向くことは出来ず

「お嬢様に何か」と言う、聞いたことのない冷たい声が聞こえる


良く知らない家の見知らぬ居間で、お茶を出されていた

まずいんじゃないだろうか

子供ながらに、真ん前に、座る黒い服を着た大きな大人を見ていた

普通、こんな夜中に、いたずらした子供を

家の中に入れるだろうか

入れないだろう

「何かようですか」

僕は、目の前の、黒服に、言う

「私の名前は、クズリュウ アキヒトと言います、ここの使用人です

あなたのお名前は」

子供にでも分かるように親切に言っているのが分かる話し方だ

「霧裂 惹句」

出来るだけ、落ち着いて、男に、自己紹介をした

「惹句君、君にお願いがあります、もう、来ないでいただけますか」

「うんいいよ」

「嫌にあっさりですね」

「うん、嫌いだもんあんな奴」

家まで送り届けられた僕は、次の晩も、奴の家に、行った

どうしてだろうか、やはり理由はなかった


「どうして、お嬢様の前に現れるんですか」

ある時、昼間に、彼女の家に、珍しく現れた僕は

救急車が、家の前に止まっているのを、発見した

僕は其れを見て、しめたと思ったに違いない

行くところは、一つしかない

幸い、名前は、車に書いてある

漢字は読めないが、其れがどこの病院かぐらいは

知っている

「鬼ヶ島市民病院」

自転車で、始めて、病院に訪れる

普段であれば、近場でしか遊ばないのであるが

遊びを、明確に決めた僕は、気づいたときには、向かっていた

彼女の名前は、表札からは、釈禄と、しか分からない

その読み方も、知らないが、文字だけはしっている

ナースセンターで、紙を出して聞いてみようかと、思っていると

たまたま、クズリュウと言う大人に出会った

「あ」

隠れる前に、僕は、クズリュウに、見つけられ

さらには、鼻から、チューブを刺して、突っ立っている

あいつにもであった

こいつ、病気だったのか

確証があったから、自転車に乗って、市内まで来たのであろうが

その時、其れが確証に代わっていた


「手術するの」

本を読みながら、そう呟いた

こちらを見ることさえない

と言うか、無視している

ただ、僕がここにいるのを、なぜか、クズリュウは、許していた

「・・お前、暇じゃないのか」

こんな所で、チューブに縛り付けられてるなんて、僕にとっては

考えたくもなかった

「あなた、どうしてそんなこと聞くの馬鹿じゃないの」

口癖なのだろうか、何かと人を見下そうとする

逃げるすべがないせいか、逆に吹っ切れたように、威圧的だ

「ドングリでも持ってきてやるか」

「うん」

そのわりに、素直なところもあった

貰ってすぐに、外に放り出すくらい自分に素直だった


僕はあるとき、彼女が、死ぬという話を、病院で、聞いてしまった

ただ、その方法はあるようだったが、どうしてか、大人達は、其れを、いやがっているようだった

ただ、唯一クズリュウの声が、其れを否定している

このときだけ、僕は、同意していた


血を、吹き出したとき

おいおいおいおいと、僕は、笑いそうになっていた

トマトジュースでも吐き出したか

イチゴのシロップでも

だけど、其れは、プルプルとふるえるばかりで、僕は

だんだん怖くなっていた

ただ、そんなことをしている場合じゃないと

廊下に走り出すとクズリュウと医者にぶつかる

「今すぐ、お願いします」

怖い顔をして、クズリュウは、医者にそう言った

それから、一ヶ月後

僕は、彼女と居た

「外に出ましょうよ」

三日ほど、彼女は眠っていたが

よっか目には、彼女は、目を覚ますと

「ばーか」と、言う程までに、目を覚ました

「・・・・」

僕は、殴ってやろうかとも思ったが

大人が押し掛けたせいで、後ろで見ているだけにした

それから、毎日病室に行っていたが

土曜の丑の日

彼女が、ベッドから立ち上がり

パジャマではなく、服を、着ていた

あの窓辺から見下していたときのような

傲慢な服装だった

病院で、突っ立っていた

あの服装だった

そして、彼女は、その服装で、ドアの外を指さした

「そと」

何言ってるんだ

僕は、彼女をみたが

さらに、強くソトと、大声を出した

こいつ、実は、死んでも、死なないんじゃないか

なんて、良く分からない理由で、僕は、彼女を、そとに連れ出した

倒れたら、こいつの自己責任だ

其れは其れで、面白いのかも知れない

あいつは、人を見下すようなやつだ

外に行っても、いいんじゃないか

それで、そとに出た

クズリュウが、そとにこの時間居ないのを僕は知っていた

彼女が、髪を自分で切ったのだろう

一見別人に見えたのを僕は知っていた

彼女の手を引っ張ろうとすると

彼女は、つまらなそうに、そとに出て行った


「それで、つまり、あんたは、数学も出来ないわけね」

さきほどから、嫌みしか言わない

置いていってやろうか

そう思うが、手を握られているせいで、逃げるに逃げ出せない

「で、あれはなに」

指さす方には、ハンバーガーショップや、チキンを売っている店が建ち並ぶ地味な商店街では、にぎわっている方向を示した

「ああ、食いもん屋だ」

「買いなさいよ」

「っえ」

お小遣いのない僕には、もしもの時のためにと

千円を、いつも、はなみ離さず持つことを、粋だと思っていた

ただ、それを、こいつのために使うなんて、とても嫌だ

幸い、嫌いだから、思いっきり言うことが出来る

「嫌だ」と

なのに、奴は、勝手に、手を引くと

店の中に入る

おいおい、買い物なんかしたことないのに

こんな奴のために

「いらっしゃいませ」

「なに、何が出せるの」

大人に向かい、おっくす事無く、堂々と言える事が

こいつの唯一の利点だ

だが、其れを払うのが僕だと思うと

どうも言いようのない怒りを感じた

「そう、ハンバーガーとその偽紅茶って奴、ポテトはいいからアップルパイもお願いします」

口調が、口調が違う

其れで合っているような気がするが

どうして其れを僕には向けないのか

そして、それでも、はなから、見下すような気配がする

「はい、かしこまりました、其れでは、670円頂きます」

「うっ」

彼女は、顎で、僕を指した

「はぁ」

僕は、お守り袋から千円を千円を取り出すと

ぎりぎりまで握りしめるが

あっけなく

強めに取られると、千円は、小銭に変わる

一人で、食べていた彼女は

アップルパイを、半分ほど食べ終えた頃に

「う」

と、其れを差し出す

・・・・

人が食べたものを、あまり食べたくないが

其れを、否定しようとしたが途端

「・・・」

あまり見たことのない表情を、しそうになっていたので

とりあえず、食べた

案外おいしかった


そとに出た頃には、酷く熱い日差しが

冷房の空間とは明らかに違う世界を実感させる

戻らないと行けないんだな

と、その時になって、面倒になる

「お前、勝手に帰れるだろ」

僕は、そう言ったのだが

彼女は、手をつかんで離さない

暑苦しい

手がべとべとする

どうにかできないものだろうか

そう思って、僕は、病院に、帰る途中で

その手をふりほどいた

「何よ」

僕は、その言葉を聞かずに

走り出した

林の奥で、歓声が上がっている

確か、グラウンドがあったはずだ

そんなときになって、やっぱりまずかったかと、振り返ると

彼女は、落ちていたバッドを手に持っていた

「おい」

僕は、近づいた

「何やってるんだ」

振り上げられた手

次には痛み

まるで、思いっきり地面に転けたような

そんな感覚

其れが、何回も続いた

何やってるんだろうか

ただ、意味などないんだろう

ただ、そう思っただけだから


「お前、鍛える気はないか」

病室で、クズリュウが、そんなことを言った

「はあー」

何を言ってるのか僕には、分からなかった

ただ、あいつに殺されかけていたことだけは覚えていた


クズリュウの訓練は、おおよそ、子供相手にするようなものではない

非人道的な内容だった

如何に効率よく相手を殺すか

それは、子供ながらに、酷く疲れる内容であった

それでも、いや、それでさえ、あいつに、僕は、三回は、意識不明の大怪我をさせられた

奴が、そとに出られると言うか、学校に行ける最大の理由は、僕だと言っても過言ではない

あいつは、無意識に人を殺す

其れを止めるために、僕が居るわけだ

「なあ、ハンバーガーショップに行こう」

さすがに最近は、人を見下すことはなくなった

それでも、クズリュウの可が、出たときは

あからさまに、嫌がっていた

其れもそうだろう

どこに行っても、あいつについて行かなければ行けないからだ

どうして、僕は、こんな事をやっているのだろうか

そして、なぜ、あいつは、ほんの一週間くらいで、其れを認めてしまったのか

それも、自習性も、記憶力のない馬鹿だから出来たことなのかも知れない

つらいことも明日になればきれいに忘れる僕だからこそ

でも、今になって、なんで、殺されかけているのだ

と、思い始めていた

先ほどまで、普通にしていたのに

いきなり、斧を、振り上げられたこともあった

食事中に、フォークを、投げられたこともあった

なんで、どうしてそこまで

それも、結局、いい加減な性格のせいだろうか

ただ、彼女は、手術のあと、ああなった

そしてその理由は、移植された心臓によるものらしい

その心臓は、殺人鬼のものであり

彼女の行動は、其れのせいだと

ただ、そんなことはどうでもよかったのかも知れない

僕は、奴に殺されない

其れが、重要であり

言ってしまえば、ぎりぎりの遊びを楽しんでいたのだろうか

其れさえも、僕には分からない

だって、いい加減だから

断じて、こいつが、好きだからではない

こいつが人を見下さないように

ただそれだけなのかも知れない

幸い、最近は特に其れもなくなっていた

だが結局は、あいつが人を殺さないと信じているからに相違ない


「おい、帰るぞ」

惹句は、そう言うと、家から、出て行った

窓から、いつもの方角に、歩いていく、黒い服が見えた

「はぁあー」

あいつは、いつまで、私のそばにいるのだろうか

ただ、鎖になっているだけなのではないだろうか

ただ、誰もそのことを教えてはくれない


それは、良く家にある、家庭用冷蔵庫だったらしい

下は、冷凍であり、上は、卵を入れるケースや飲み物を入れる場所はもちろん野菜専用区画みたいな場所もあったようだ

さっきも言ったとおり、そう、ようだ、なのだ

つまり、僕は、その冷蔵庫の存在を知らない

それを知ったのは、実にひょんな日常からである



「なあ、お前、何をかいているんだ」

僕は、娘のサシコが、畳の上で、広告の裏にクレヨンで書いている物を

横目で見ながら、娘に聞いた

「うーん、これはね、冷蔵庫」

娘は、そう言った

冷蔵庫、聞いたことがある

なんて、今更ながらに、思ったわけではない

ただ、どうして、そんな面白味のない

黒一本で、ほとんど描けてしまう物を

女の子が書くのだろうか

もっと、可愛いものとか、それでなくとも、こんな、余白の多い

正方形を、二つつなげたような物を、書かなくても

僕は、たわいもなく、そう思った

妻と離婚してから

僕は、夕方遅くに、サシコを、保育園まで向かいに行く

幸い、中学の同級生が、園にいてくれたおかげで、多少は時間に融通が利いた

もしかしたら、娘は、料理もせず、ほとんどが、お総菜のこの生活の中で

母の面影として、料理と関係のある冷蔵庫を、書いているのだろうか

「なあ、サシコ、その冷蔵庫の中には、何が入っているんだ」

僕は、試しにそんなことを聞いてみた

「うんうん」

娘は首を振った

教えてくれないらしい

「何でそんな物を書いているんだ」

ビールを片手にそんなことを聞く

「家の冷蔵庫無くなっちゃったから」

「冷蔵庫・・・家にあったっけ」

僕は、狭いアパートの部屋を、見渡すが

そんな物はない

「無いだろそんなもの」

「うんうん」

娘はまた首を振った

「あったもん、昨日まであったもん」

娘は、そう言って、クレヨンを走らせる

「そうだったか」

僕は、もう一度、部屋を見渡したが

勿論そんな物など無い

僕は、何げなしに、無意味に聞く

「その冷蔵庫の中には、なにが入っているんだ」

娘は、いつの間にかうずくまっていた

いや、聞いたときだろうか

カーペットに

その顔を押しつけるように

「どうしたんだ」

くぐもった、鳴き声が聞こえた

「どうしたんだよ」

娘はその日、夕食前に、熱を出した


「あんた、冷蔵庫、買い換えたんかい」

娘を、大家さんに、

預けて、仕事場に向かおうと自転車に跨がったとき

そんなことを聞かれた

大家さんは、もうかなりの高齢のおばあさんで

ここに来る前に、旦那さんを、なくしていて、一人で、切り盛りしている

「・・何のことでしょうか」

僕は、自転車に跨がったまま、そうきく

「業者が来たでしょうが、あんたじゃないんかい」

「ああ・・その事ですか・・ええ、親戚が、新しいのをくれるというので」

「そうか、そんじゃあ、私が欲しかったのに」

「そうですか、すいません、それじゃあ、娘のことを、お願いいたします」

「ああ、そうかい」

無愛想であるが、決して、悪くはないと思っていた

だからたぶん大丈夫だ

「行ってくる」

僕は、聞こえないとは思ったが、そう、大家さんの家のドアに、そう言って、そのまま仕事場に向かった。


「なあ、おまえ、俺の部屋に来たことあるよな」

同僚の滋賀に、僕は、休憩の隙を見て聞いた

「ああ、あるよ」

「それいつのことだ」

すこし、悩むそぶりをしてから

「さしこちゃんの誕生日とついでに、お前の誕生日を兼ねたパーティだな

その前だと、新年の」

「なあ、冷蔵庫、お前、冷蔵庫見たか、部屋で」

「冷蔵庫・・・ああ、あるな、いつも買い出しの物、詰め込んでたから覚えているよ」

「それ、どんな奴だ、どういう形で、それとそれと、中身は何が入っていた」

「・・ちょ、、お前、大丈夫か、どうしたんだ、冷蔵庫が・・まさか、壊れたんで、捨てたは、良いが、へそくりでも隠していて、みたいな」

「どうしたら、そんな飛躍したことがいえるんだ」

「いやいや、お前、案外、猪突猛進的なところがあるからな」

「そうかい、で何なんだが、本当にあったか」

僕は、昨日から今日の出来事を、同僚に話した

いつもは、不真面目なような顔をしていたが

今日は、さらにいい加減な顔で

「夢でも見たんじゃないか」と、いったくして、そのまま、行きつけのラーメン屋に出て行った

ただ、僕は、この記憶から消えているとしか思えない

冷蔵庫について

一人、考えるしかなくなっていた


「僕は、記憶を失ったのだろうか、それとも、周りが幻覚をみたのだろうか、いや、これは夢なのか」

「何のことです」

「うわあ」

自動販売機の近くで、一人考え事をしていたら

声をかけられた

どうも、独り言が、口に出て、しまうたちらしい

聞こえていたのか

「驚かなくても良いじゃないですか」

その人は、良く秘書室でみかける女性だった

「いや、唐突だったので、こちらこそ驚かせてすいません」

長い髪が特徴的である

「いえいえ、それよりなんなんですか、記憶喪失ですか」

どうやら、かなり詳細に聞かれてしまったようである

「うーん、君、冷蔵庫って知ってる」

僕は、馬鹿にされることを承知で、彼女に、そう言った

「ええ、私は好きよ冷蔵庫」

「かなり変わってるよ」

僕は、いつの間にかそんなことを口に出した

「ひどいですね、あの曲線美、機能・・・」

しばらく、良くも分からない冷蔵庫談義なる物を、聞かされたが

僕が求める答えがあるようには思えない

「それで、私は思うのです、冷蔵庫には、魂が宿ると」

「魂ですか」

僕は、半笑いで、彼女の顔を見た

そのとき、人並みに僕は思う

彼女は、平然と、本気の目をしていた

いや、無表情とでも言うべきか

「それじゃあ、冷蔵庫には気をつけて」

「え・・なんじゃそりゃ」

彼女はそう言うと、足早に、廊下に消えていく

嫌に、この建物は暗い


「それじゃあ、帰ります」

僕は、お礼を、言うと

そのまま、娘を連れて、部屋に帰る

「お父さん、今日ね、病気と闘う夢を見たの」

「そうか、偉いな」

夢のせいかどうかは、分からないが、熱は、嘘のように、下がり

わずかに、顔が赤いぐらいだが、嘘のように、元気が良い

「なあ、おいしいか」

夕食は、娘が比較的好きな物を、買ってきた

「うーーーんん」

デザートお先に食べて、そんなことを言う娘が比較的可愛く思う

「そりゃあ、良かった」

僕は、卵粥を、口に、運びながら

冷蔵庫のことを思い出す

そう言えば、この部屋のどこにあったのだろう

「なあサシコこの家にあった冷蔵庫って、どこら辺にあったっけ」

「うー」

行儀が悪いことに、スプーンを口にくわえたまま

指を玄関の横等辺に指す

「そこか」

僕は、試しにそこまで歩いて言ってみる

電気がないので、暗い

二つしかない電気のもう一つをつける

そこにあったのは

確かに、四角い物が、つい先日まであったことを、知らせるような

その一角だけ、日焼けが無く

また、埃がなかった

「本当にあったのか」

僕は、一人玄関でそんなことを実感した

本当に、冷蔵庫は存在したのか


夜、僕は、ひどく寝苦しくて目を覚ました

のどが渇いた

僕は、冷蔵庫の中においていたはずの

麦茶のパックを取りに

玄関脇に向かった

「ある」

確かに、月光に照らされるように

冷蔵庫が、そこにはある

僕は、そこで照らされている同僚を


ジージージーと、振動が、お尻を動かす

室内は、快適であり、温度、湿度共に、適正であり、申し分ない

唯一、不満が、あるとすれば、このバスの窓側の席ではない事実だけであろうか、それを除けば、有意義この上ない


バスは、東名自動車道を、右に逸れ気長インターチェンジに、停まった

僕は、そこで、短い、運転手のアナウンスの後

僅かばかりの手荷物が、入ったバックを持つと、そのままトイレに向かう

トイレ内は、家族連れやどこかのスポーツクラブのような人間が、ひしめき合っている、僕はそれを横に見ながら、個室のトイレにはいると、取り留めもなく、携帯をいじくり、五分位して、外に出た

相変わらず、外はにぎわっていたが、さすがに、先程みた人間を、トイレ内に見ることは出来ない

それほどの時間、入っていたわけではないが、トイレの外に出ると、そろそろ夕暮れの近い光景と、徐々に冷え出す空気が、トイレから出たことをありありと知らせた




「其れは突然だった」

私は聞いたことがないのであるが

この当たりは、蝉の声か夜中の虫しか鳴かないような

そんな、片田舎だった

其れは、何時鳴り出したのかは、不明だが

とある二階の開かずの間でのことだ

そこは突如開かなくなり

核兵器を使っても、こじ開けることは、不可能かと思われた

その二階から突如大音響にて

女のあえぎ声のような物が、響きわたり

その音は、信号を越え

半径三百メートルにこだました

始め家主は、何とかして、二階をこじ開けようとしたが

ハンマーチェーンソーなどを使っても無理

果ては、家屋破壊用の巨大鉄球を、使っても

どう言うわけか、二階はおろか一階さえも

壊すことは、できない

このことで、家を引っ越す物もあれば

馬の鳴き声と大して変わらないと

居残る農家もしたが

ある時から、そのビルもない農家が大半を占める

村の一角に、ラボホテルが建った

其れを皮切りに、それに類するように

その客をおびき出すための飲食店や

あえぎ声のような物を、聞くために来る客の

ホテルや宿も軒並み建ったせいで

その一帯は、酷く窮屈であり

あえぎ声も、当たりに届かなくなっていった

しかし、其れは、周りであり

今もその声は、あげ続けている

誰が、言ったのかは、知らないが

その声を聞いた者は、子宝に恵まれると

そのせいか建った神社は、今も混沌とした

田舎の一角の最奥に、たたずんでおり

ラブホを、利用する客と

其れを見に来る客

声の参拝に来る客のスポットになっている



それは、夜のこと

どこかの町の蛍光灯の明かりが

山向こうに、ぼんやりと輝き

月明かりも、だいぶ弱まっているように、思われた

新月を、十日前に記録した、夏休みの日記は

机の上に、ほったらかしにされている

わずかな、涼しい風が、網戸から、漏れ出すが

室温を下げるには、ほど遠い

かちかちと先ほどからうるさい豆電球が

赤く点滅した

空気の震える音がした

其れは、花火などと違い

空全体を、覆うような振動であり

其れが、吠口だと気がついたとき

山が赤いのに気がついた

窓を覗けば

向こう側の山が、赤く燃えている

僕はその時、何かを見た

其れは、山のてっぺんよりも高く

何かの影が、動いた

僕はその日、車で寝ることになった


ラジオから流れる言葉は、取り留めが無く

至って、言葉が、定着されることなく

意味を、確定することが出来ずクルクル変わった

母親は、パートで、出ている

父親は、遠くの町で、別の家族が、居るらしいが

写真を送ってきても、母親が焼いてしまった

遠くの町は、窓から見ても、赤く燃えており

かたわらに抱いたラジオからは

放送局ごとに、やはり取り留めない

「えーえー巨大な土砂崩れがZZZZZZZZ」

「住民の負傷者ZZZZZZZZZ」

「噴火の恐れがありますので住人の方はZZZZZ」

「ただいまの天気ZZZZZZZ」

「ZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZZ」

ラジオを持って、夕食が、ラップで、くるまれた

台所の机に行くと

椅子にラジオを置いて

おにぎりが、包まれたラップだけを、はいで、

二つ口に入れた

其れが食べ終わると、流し台横の収納スペースから

自分専用の魔法瓶を、一つ取り出し

冷蔵庫の麦茶を入れ首に下げた

僕は一人、ラジオを持って、家を出て鍵をかけた


アパートの階段を下ると

色んな大人が僕を見たが

いつものように、誰も声をかけたりしなかった

僕は、まぶしいくらいの建物の外にでると

何処かで、救急車やパトカーなどのサイレンの音が

いろいろな場所を走り回っているのが聞こえる

やはり、遠くの山は、赤く燃え

だが、あの黒い影が、見えることはなかった

僕は、自転車にまたがると学校に向かう

学校までは、自転車でそう遠くない

信号も、三つもない

二つだけだ

途中で、赤いサイレンを鳴らし

山道を走っていく消防車とすれ違う

山火事なのだろうか

だとすれば、あの影は、黒煙だったと考えられなくもない

学校には、僕以外の大人と子供が

グラウンドに、数名集まって、話し合っては、山を見ていた

僕は、自転車にまた乗り、この町で、二番目に高い総合ビルに向かう

この場所から自転車で、二十分程度だ

町の中心部に位置しており

隣には、二社ある地方新聞局の一社がビルを構えている

夜の道路は、いつもより人が多く

いつものような、仕事帰りと言うよりも

家族の人間を、乗せている風だった

ビルは、明るく

全ての場所に、蛍光灯があり

青白く光っている

僕は、自転車を、側の路地の低い木が生えた花壇に押し込んでいる

ビル内の階段で、二階に上がろうとしたとき

地面が、揺れた

何処かで、悲鳴のような声が聞こえた

僕は、ラジオを、抱きしめると

二階に駆け上がる

何か、黒い物が、町の道路を歩いていた

その背後は、赤く燃え

悲鳴はその方向から聞えているようだった

踊り場の窓越しに見た光景は

二階に上がると消え

僕は、この十階建てのビルの最上階まで、上ることにした

ラジオからは「未確認生物zzzzzz」

と途切れながら僕の中で、揺れながらそんな情報を

スピーカーから流した

途中下に向かう大人や

踊り場で、騒ぐ大人が、数名邪魔に立ち止まっていた

その間を抜け上に上がる

その黒い影は、近づくにつれ

ビルよりも遙かに大きく

爬虫類のようでありながら鳥のように、飛び出た

数千いや数万では終わらないような体表の突起が

規則正しく体表を、覆っていた

それに目があるのかは、分からなかったが

その異常な体は、まるで、紙に書かれたおもちゃを

なぎはらうように、小さな町を進んだ

僕は、十階に行く途中の踊り場で、一人ラジオの

逃げてくださいzzzz逃げてくだzzzzzzzさい

と言うブレた声を聞きながら

その光景を、ただ見ていた


「あなた、大丈夫」

ビルから出た僕は、足を引きずっていたが

車から出て来た母親に抱きしめられた

あたりは、燃えており

遠くで救急車の音がした

遠くの方で、何か、物を全て壊してしまうような

声が、ビルを揺らした










ーーー

長い髪をした女が

僕に寄りかかっていた

七時に、退社した僕は、いつものように

いつもの時刻に

駅にいて、電車に、入った

そこで、いつもいる三両目の車両の

後ろのドアから入り左側の入り口と反対方向の一番はじの席に着いた

周りには、高校生らしき生徒と

数人のサラリーマンがいる

この後の時間になると

爆発的に、人数は増え

座ることの出来る確率は

学校のクラスのテストで、上位になるほどに難しいだろう

僕は、入社して、何度か時間を調整して

今の時間帯が、比較的座りやすいことを、発見して

退社の時間を調整していた

其れは、駅を三つほど過ぎた当たりだろうか

隣に、女性が座った

最近は、本も読んでいない僕は

目をつぶり昨日見ていた推理物のドラマの犯人探しを

実行していたが

其れを中断して、目を開けることになったのは

何か、肩に当たったからだ

僕は、わずかに横を向くと

顔色の悪い女性が

体を傾け

僕の肩に、体を、寄っかからしている

その接着点が、頭である

黒い頭の中心に、あるというブラックホールに、見立てやすそうなつむじが、右回転に、回る

僕はその時、頭のこととは別に、もう一つ、何かに気がついていた

其れはにおいだ、其れも、据えたような

僕は其れを、飲み会で良くかいでいた気がする

特に、春の時期となれば、

飲み慣れない新入社員も少なからず居る

そう言う人間の付き添いに、年齢的に、僕が指名されるが

そう言うとき、そんな臭いが

居酒屋のトイレでは、良くする季節なのだ

僕は、薄目をあけて探す

其れは、彼女から漂って、来るであろう

体臭よりも濃かった

そして僕は、もふもふとしたセーターに

なにやら、粘着質&固形物が、こびりついた服を

彼女に見た

どうやら、吐いてたもしくは、吐いたのだろうか

僕は、動こうとしたが

彼女の重さは、僕の引力まで吸い取り

光の早さで移動したい僕を乗せた

光の早さをいずれ移動したいであろう電車の中で

僕を引き込んでいくのである


長年、私は考えていたのです

爬虫類とは、いずれ、鳥のように飛びたいのか

それとも、人間のように、地面と人間関係に縛られたいのか

其れか、魚のように、地の底まで、沈みたいのかと

彼らはどうしたいのでしょうか

私は、授業を中断して、そんな講義を始めたものだから、彼らは、勢いよく立ち上がると

ある物は、雑誌を投げつけ

ある物は、恋人といちゃつき始め

私は、しかるべき態度をとって

つまらない授業を再開し始めた


人間にとって、夢とは、未完成品です

なぜなら、其れは、子供のように、完成してはいけないのです

大人とは、未完成品を、無理矢理不良品にして

其れを稼働させることで、不満を、内服させ

其れを治療するための薬として

快楽を消費を、促すという社会の悪い癖なのです

未知という物は、遠い過去に忘れられ

その断末魔が未完成を呼び覚ますのではないだろうか


子供心とは諦めの悪さ

大人心とは代用の早さ


蛇口をひねるとコークが出て来たので、

急いで問い合わせると

下水局から流れてきているという

何時からそんな場所から流れてきているかはしらないが

僕は急いで、車を飛ばして、下水局に行くと

そこは、森の真ん中にぽつんとたっているにも関わらず

長野タワーよりも幾分も大きい

そびえ立つような恐ろしい高さの円柱型の巨大かつ細い建物が立っていた

「あのーすいません」

入り口にある、インターホン横のマイクに言うが

一時間たっても

聞こえてくるのは、しばらくお待ちください

係員が向かっております

しばらくお待ちください

係員が向かって・・・

を、機械音声が、繰り返すばかりである

「いやー、どうもすいません」

二時間程建って、近くの扉が開いて

ヘルメット姿のいやに臭う男が、出て来た

「私は、多汁と申します

あなたがここに来てくださったのは、実に幸運です」

そう言って多汁は、握手をも止めたが

その手は、ナメクジのように、ぬめり

さわるんじゃなかったと後悔し始めていた

「それで、ご用件の方ですが

コークが、水道から出て来たとのことですが

これにつきましては、間違っています

コークではなく、麻薬なのです」

「麻薬」

私の脳がくらりとした

「いえ、ご心配ございません

麻薬と言いましても、ほんの少量

ご存じ過ぎて忘れてらっしゃるかもしれませんが

七味の原材料にも入っていらっしゃいますし

過去を遡れば、いと不思議

では、あなた様が、お聞きになりたいことですが

水道管を流れて、各家庭共通機関に、配布されています

この水は、ほとんどが、汚水なのです

今現在川を流れる水を、いくら濾過しても

排出されてしまった その他多い薬物ガソリン

プラスチックは、水にとけ込み

とても分別できません

長年研究していましたが

其れが分かったのがつい最近のこと

しかし、水道をだからといって止めることは出来ません

そんなことをすれば、この国は、ほとんどが停止してしまいます

本来無いはずの物が、体内に蓄積された結果

人は自分の体にないもので体を構成することになり

其れは、人が考え得る以上の小さな分子により構成されていますから

取り除くこともなく体を以上増幅 器官麻痺

その他諸々 万病死に至らしめます

そこで我々は、急遽代案として

ありとあらゆる試行錯誤の末

麻薬と言う世間ではきけんしされております

この植物に目を付けたのです

驚くべき事に

この麻は、我々が、最新の科学で、濾過してもその大半が、素通りしてしまった毒素となり得る因子を

吸収し無害化することになったのです」

「しかし、中毒性は」

「それは、まだ分かりませんが

チンパンジーが、十年ほど、繰り返しましたが

さして他のチンパンジーと異差はありません

これで、地球から半分以上の癌はなくなるのです」

「そんな馬鹿な」

しかし、其れが、公表された途端

全ての国で、麻が栽培され

其れは厳重に管理された元

かく下水道局に配られた

それからは、劇的に癌は減ったが

多少ならず、人間は、何か幻覚作用な物を、見始めた

しかし、癌に比べればと、其れを、気にする者は居ない、また、その後五百年経った頃

人々は、骨の縮小に悩まされることになる

また、これに気がつくのは、遠い後のことであった



「鬼にクリキントンようかん」


イナゴ家舎


「よう、じいい百万円欲しいか」

老人は、首を傾げ孫を見て

「芋ようかんかのう」と

言うと目を閉じた


「しかしですね、この山の資産は、そんなには、無いわけですよ」

ヘルメットを、つけた男が二人、山の山中で

わき水を、見ながら言う

「まあね、これが飲めたら、莫大な富の一つ

出来るはずだけどな」


「しかし、半か丁かなどとは、馬鹿らしい

なぜ、当たり棒一つに、そんな複雑なことになったのだ

ここに、百円ある

これで其れを」

男の言葉に、周りの人間が、男をにらむ

何をしたというのだと男は、思う

半裸の男の中から、額から頬にかけて傷があり

一つの目が、癒着してガランドウだと思われる男が前に出た

男は、その男に怯えながらもメンチを切った

畳の上には、賽子が二つと

茶碗が一つ

ガランドウは、ゆっくりと床に座る

畳を前に、二人の男が向かい合う

「さあ勝負だ」

妙なことになったと思う男であった


「しかし じいさん こんな山奥に

わき水なんてあるのか

ここの水は、全部毒だ」

ヘルメットをした二人が

山の険しい岩場を登っている

「本当にあるのか」

老人は、手ぬぐいを、頭に巻き付けて

黙々と登っていた


「おじさん、其れ一つください」

古くさい八百屋の店先にアイスボックスがあり

その中に、古くさいアイスが、霜がつり下がる

アイスボックスの中で、ぎゅうぎゅうに詰まっていた

彼女はその中の一つの棒付きアイスを、一つ指さす

それは、黄金色に輝くさびた色で

サルナシアイスとかかれている

田舎の会社なのか名前を見たことも聞いたこともなく

知らない

おじさんは、ギロリとにらむと

手を突きだしてきた

「ほら早く」

彼女は催促する

仕方なく、鞄から財布を探る

アイスボックスには「100円」の四文字

財布のチャックを開けると

日本硬貨100玉を取り出し

男のごつく皺の寄った黒い手のひらに

硬貨を置くと、無造作に、しまった

そう、其れが全ての始まりだった


「長老、本当にあるんですか」

サルの群が、興味深そうに

下を眺めては、糞を投げつけてくる

そのたびに二人は、戦々恐々しながらも

歩みを止めない


山奥の農村

道道にあるのは、家の中から草の蔓が伸び

ガラスが、下に散らばったような家々

道には、蛇が蠢き

其れを食べようと、猫が徘徊し

その猫を狙って鳶が空を舞っていた

「本当にこんな所に、温泉があるのーおー」

背後で彼女が、叫ぶ

背中の緑色のリュックがこの古びれた

村には似つかわしくなく、酷く新しく見えた

「当たり前だ、全て、調べてきたんだ」

そう言い、胸ポケットを、たたくとスマホの堅い感触がある

「でも、後どれくらい」

周りの木々はいよいよ深く

日の光を、遮るほど葉が密集していた


「村長、もうだめです」

目の前に、猟銃を、定め

向かい合うように、村長の体の三倍はありそうな

ヒグマが、にらんでいる

「村長」

その時、熊がゆっくりと、前進したが

村長の銃口も同じく火を噴く

熊の眉間から、液体が流れる

村長は、もう一度、銃を発射すると

同じ穴に入り込んだ銃弾は、熊を前のめりに

倒した

「村長」

村長は、猟銃を肩に掛けると

山道を急いだ


「ねえ、何でこんな山奥に、八百屋なんてあるのかしら」

さびたトタン屋根に、同じようにさびた

看板が捧げられていた

「まあ、温泉街だったんだから

そう言うこともあるだろうよ」

僕は、スマホを、胸から取り出すと

今の場所を確認したが

虹を半分にきったような

マークは、半透明のまま白く浮かんではいない

「で、温泉よりもアイスでも食べましょ」

彼女の指さす方向には、アイスボックスが

赤きペンキで塗られ置かれていた


「村長」

山の斜面

岩がごろごろと転がり

木も低い物が、二三本生えているだけ

そんな中を、老人が、頼りない足場で徐々に登っていた

「村長」

村長の足下の岩が崩れ

男のヘルメットに当たる

「村長」

男は、果てしない道を見上げていた


「それで、あんた、当たりを本当に、交換するのかい」

彼女が、アイスを食べ終わると叫ぶので

彼女に近寄ると

「見てみて、当たった」

そう言って、当たりと書かれた棒を、僕に付きだしてきた

「其れはよかったね」

僕は、そう言うと、彼女は店の中に、駆け出す

「おじさん、おじさん、当たったもう一本ちょうだい」

そう、それが、全ての元凶だったに違いない

もし彼女が、食い意地を張らず

当たりの主張を取りやめていれば

今になってそんなことお思う

「お嬢さん、本当に、当たりと、交換で、よろしいですね」

おやじは、何か、

物騒な物言いで、彼女にいったが

彼女は、そんなことは気にしていない様子で

うんと頷いた

何だろう、客も来ないからケチって居るのだろうか

こんな場所では、仕方がないのかもしれない

「其れでは、奥に」

僕はその時、気づかなかったが

背後に、村人らしき男達が

何人も八百屋の前にたむろいでいた


「村長休みましょう」

岩場の中腹に、洞穴のようなくぼみがあり

そこからは、激しい日光も届かず

わずかばかりの涼しい空間が存在した

「そんなことをしている暇はない

気が付くと老人は

また岩場を登っていく

もしこんな場所に、わき水があっても

水を引くことを考えればと男は思った


「それで、丁なのか半なのか」

脇の男が、僕に言う

が、別の男が、そいつを殴り飛ばす

目の前の片目の男が、僕をみる

「あの、すいません丁とか半とか意味が分からないのですが」

場の空気が一瞬で凍った気がした


「村長」

山の尾根伝いに歩くが

一枚岩のようなその足場は

一歩ふみまちがえば、ヘルメットなど容易く意味をなくしかねない

しかし、はちまきを巻いた村長は

山猿のように、その岩場にへばりつき

先に進んでいく

「村長」

声がこだまし、二重三重に帰って行くる

「村長」


「それじゃあ丁で」

当たりが静まりかえり

所々で「ちょう」「ちょう」と聞こえる

「丁でよろしいで、やんすか」

男はその時始めて声を発した

その声は、僕を、不安のどん底に変えた

もし間違えばどうなるというのだろう

まさか、この山のどこかに、秘密の地下鉱山があり

そこで日夜、賭に負けたアイスの当たりを引いた人たちが、重労働を、強要されているのでは無かろうか

しかし、今のご時世そんな

僕は、うなずきかけて、目の前の

がらんどうの男を見て

考え直した

さて、どうしたものか



「村長」

村長は、崖っぷちに、手をかけ

もう片方を、私が握っていた

「私は大丈夫だ、だから、水を」

其れは、賭に負けて、どうしようもなくなった

どうしようもない役の役者を、居間で見ている気がする

「大丈夫ですから、もう少し、力入れてください」

脂汗がにじむ老人の丸い顔

私は、ぎりぎりと、村長を、引きずる

「いたいいたいいたい」

村長は、そんなことを言ったが

全力で引きずることにした


「丁で、お願いします」

男は、こちらをにらむ

もう何回目の打診だろうか

「早くしなよ」

と後ろで彼女が、リュックを背負ったまま聞いてくる

暢気なのかそれとも

「丁で」

男は、賽子を、お椀に入れて

こちらを目のない方で、もう一度にらむ

「はい、今度こそ」

賽子が、カランと音を立てた


「村長大丈夫ですか」

腕が、プらーんと揺れている村長は

顔を赤くしたり青くしながら

岩の上で、天を向いていた

「村長ー」

僕は無意味に叫ぶ

心底うざそうに、村長の顔が歪む

良く晴れた晴天くゆる昼のことである


「半」

辺りから、歓声の声がひびいいた

どう言うわけか彼女まで叫んで喜ばしそうにしている

「じゃあ」

男が、声を上げた

その低い声は、その高い歓声の中で

ひときわ低くよく響いた

男は、アイスの棒を、手に取ると

高く掲げた

「よっしゃー」

男は、そう叫ぶと

その際すの棒を、おじさんに、渡しに行く

僕は、一人たたずんでいた


「村長ありましたよ」

それは、この山の山頂と言っても言いような

高い岩肌であった

その中に、ぽっかりと穴があり

青い透き通った水が

懇々と漏れ出す

「ありましたね」

村長はそういうと、腰をついた

「ええ、しかし、どうやって、これをしたまで」

村長は、携帯を取り出すと

どこかに電話をした

「いやー、疲れた疲れた」

私は、辺りの絶景をみながら

今の自分が非常に、危険な場所にいることを再度

認識する

しばらくして、巨大な爆音が鳴り響いた

僕はそこに、軍用ヘリのような

巨大な巨影をみたのである


「結局、温泉、入れなかったね」

手には、袋いっぱいのトマトやキュウリが詰め込まれたものを

抱えていた

「まあ良かったじゃん」

彼女はそう言って笑った

どうも大変な日曜日であり

二度と田舎に来ないと誓った午後の昼下がりである





「ガガガ」

あの世 輪太郎


夜は暗く

朝は明るく

人の心は


腐ったような外装が

辺りの家々の壁を彩っている

「で、君が、新入警官佐々木 野五路君ですか」

隣で、制服を着た猫が、髭をだらりと伸ばし

若い男に聞いた

その男の目は、ビー玉を、裏側から懐中電灯で

光らすように輝き

口元は、意味のない余裕が、緩み出ている

「はい、本日より入隊します

佐々木 野五路です よろしくお願いします」

町は、がやがやと忙しく

誰もが誰かをみてはいない

そんな中、厚手のコートを男が、ふらりと現れる

「おい夜見野」

猫はそう言った次の瞬間には

男は、若者の顔を壁に押しつけて

目を、のぞき込んだ

「君は、幸せかい」

若い男は、うなずこうにも

ぴくりとも動かない

「君は」

男の目がのぞみ込む

眼球の網膜同士がぶつかりそうになる

若者は、それでも、目の光を、失わなかった

鮮血が、一瞬 壁を舞う

夜見野は、きびすをかいしたように

後にする

「そんな顔をしていると、黄泉の明かりが、激しく写る」

汚い壁に、寄っかかるように

若い男は、両目から、血を流し突っ伏していた

「おい、よみの」

猫が、そう叫ぶが、そこに、よみのの姿はどこにも確認できず

雑多な人の足音が、わらわらと、辺りに響く


1「手術」しゅじゅつ


「それで、目の方は」

もうだめですなと言う意味を込めて

医者は、首を横に振る

「よみの奴め、こんなことが、まかりい通ると思っているのか」

猫は、ふさふさの黒髪を、マスクに隠して

そうつぶやく

「義眼の方は、どれくらい」

医者は、紙の箱を、猫に渡す

最近は、ただの形だけってわけではないですが

それでも、ぼんやりと、辺りが、見える程度です

まあ、これなら、見えない方が、聴力の発達を、促し

よっぽどはっきりみえますが

彼は、すぐにでも、仕事をしたいとおっしゃっていますから、これになります」

「そうですか」

黒猫は、ちらりと、手術台を、見て、外に出た


「しかし、きりがないな」

コーヒーを片手に、黒人のこびとあの夜輪太郎が

紙の束の溜まった机をみる

しかし、それは、丸く黒いサングラスにじゃまされて

感情を読みとるには至らない

「まあそう言うなよ、仕事をこなすしかない」

トロ船の二倍はありそうな水深の水槽に座り

ゴミ袋のかけてあるパソコンを打つ少女

凶乞 骨湖 きょうこつ ほねこ

が、そう言うと

「違いない、しかし、どうして、まだ紙の書類を

作るのか、俺には理解できないね」

そう言って、あの世は、紙に、鉛筆を走らせた

「そんなの簡単じゃない、ルールよルール

それがないと、人間、自分が立つことさえ自分でできないんだからさ」

彼女はそう言うと、水槽の縁に腰を下ろし

タオルで拭き始めた

「もう帰るのかい」

ええ

彼女はそう言うと、コートを羽織って

外に出た

「はあ」

燦々とした事務所で、一人コーヒーをあおっていた

男が、ため息をはく

暗い室内で、男の目の奥がかすかに

青白く光った気がした


2「事件」じけん


「それで、僕はなにを、すればいいのでしょうか」

猫は、男に、もう二三日休んでいてもいいことを

伝えるが、男は、青一色の目を猫に向けて

問題ないと話した

「しかし、悪かったね、あいつは、問題なんだ」

「大丈夫です」

男は、そう言うと、二人で、事務所に入った

「やあ、おはよう」

猫が室内にはいると

部屋には誰もいない

代わりに、猫の机に、大量の資料

「じゃあ、とりあえず、君には、簡単な雑務の説明をするよ」

この場所は、未確認の事件に発展しかけない

そう、この世の中の法律で、裁くことのできない案件

まだ、立証の取れない危険な行為を、調べ

それを、取りやめるために設立されたんだ

「はい」

うむ、猫はうなずいて、コーヒーを入れると

氷を、自分のコーヒーに

もう方をほう、若い男の机においた

「どうぞ」

若い男は、それに手を付けず頷く

で、ここでやることは、

世の中で事件が起こり

その根元が、どこにあるのか

人間の人生を、バラバラにして

その一つ づつの根元を調べるんだよ

ありゃ、根元二回言っちゃった

「それで、僕は何をすればいいのでしょうか」

猫は、簡単だよ、そう言って

自分のところに届いた

資料の一枚を、手に取ると

男の前に、置く

「これは見えるかい」

男は、頷く

「この男は、12歳までの少女を、監禁

体中切り刻んだ上に、自分の家のお墓に、生のまま

遺棄していた

その数十六人

君には、彼の食生活から、調べて貰う」

「なぜ」

「仕事で、疑問など必要ない

それは、趣味の時間でいい」

「しかし、その程度のことなら

ロボットでも」

最近では、その人間のDNAを、調べるだけで

その人間の今まで食べてきたものの

食品が、わかる程度には、情報量が蓄積されていることが

わかっている

しかしだ

その食品が、安全なのかどうか

そんなことはわからない

今飲んでいるコーヒーだって、同じだ」

そう言って猫は、コーヒーをぺろりと舐めた

「じゃあ、よろしく頼むよ」

しかし

「しかしなんかはない

それが仕事だよ」

若い男は、手に持った資料を持って

資料室にいた

そこには、見渡す限り

膨大な紙の束が

自分の身長の何倍もある高さの棚に無限と思わしき量が、陳列してある

「これすべてですか」

猫は頷いた

「まあ、やり方は、言ったとおりだ

わからないことがあるなら聞いてくれ

紙の予備は、そこの机

それがなくならないとは思うが

なくなれば、奥の倉庫だ

この事件で、書き換えが、必要になったものが

1016件ある

すべてが、同じ食品を、口にしていた

それすべてを、一応調べること

時間は、五時まで

残業は、出ない

それじゃあ、気楽に」

猫はそう言うと、長い長い階段を、上に登っていった

ぼやけたような視界の中で、男は、横に揺れるしっぽを見た


男のやることは、チェックしてある事件の項目に

赤イチゴと言う単語を、書き足していくことだった

要は雑務なのだ

気づくも気づかないも

こんな膨大な資料一々比較しようがない

しかし、男の場合は、違った

パソコンのように、その頭は、機会仕掛けのように

すべてを、暗記しており

ぱらぱらと紙をめくるだけで

そのすべてを、暗記することが出来た

しかし、出来たからと言って、そこに、共通点があるとも思えない

大体食品に、難があるとも分からないのだ

やはり

「おい、暇そうだな」

その取り留めもない声は、最近聞いたことがある

「よみの」

「ああ、すごいだろ、この膨大な無意味な資料

パソコンで、糸道は、いくらでも見つかる

でも、誰も逮捕しないのはなぜか知っているか」

男は黙る

「金がないんだよ

この世の中の大半が、犯罪者になる種を仕込まれている

そんなものを、逮捕して見ろ

この世界は回らなくなる

しかも、社会のトップは、そんなものの巣窟だ」

「じゃあ、ここでやってることは」

「そうだ、無意味だ

世の中は、常に、新しくなっている

やっていることは、昔と代わりはないが

しかし、その邁進は、追いつくことをさせない

常に新しい犯罪が、生まれては、その殺意を伝染させている

俺らがやろうとしていることは、そう言う芽を潰すことだ

毒すまえに、毒される前にな」

「そんなことが」

「やりゃなきゃならならんだろ

悪意と善意なんて大差はない

だから人は無関心に閉じこもるしかないんだ」

あの世は、そう言うと男の顔をのぞき込んだ

「この世を信用するな」

男は、ただ、このめを奪った奴に、どう仕返ししてやろうかと思ったが

振り上げた拳は

回し蹴りで、床にたたきつけられた

「希望を持つなと言ったのに」

男はそう言うと、男に、一言「じゃあな」

と言うと、棚から資料を調べ始めた

「いたい」

若い男は、冷たい床に、寝そべりうずくまっていた


「おい、腕が折れているぞ」

猫は、医者にそう言われ

ため息を、ついた

「また、あの世に、やられたのか」

男は、頷くと

さらに、ため息をついた

「おまえ、何かしたか」

殴ろうとした胸を伝えると

「なあ、幸せとは、何だと思う」

猫は、若者に聞いた

「それは、慎ましい生活をすることです」

「うむ、でも、それが一番難しいとは思わないか」

「なぜです」

「簡単だ、誰も、そんなことが、分からなくなっているからだ

すべて自分本位

これを、学歴社会の弊害と呼ぶ」

「そうでしょうか、そんなものがなくても

人間は、自分本位です」

医者に、ギブスを、巻いて貰った男を乗せ

黒猫は、一人夜の道を運転している

「君は、大勢の人間に会うのと

少数の人間に会うのどちらがいい」

男は考え答えた

「多ければ、人は、

色々な道に進みやすくなります

しかし、少なければ、視界は狭くなります」

黒猫は

「そうだろうか」

と言う

「人は、人を、必要としなくなったとき

それは、自滅の道を進んでいるような気がするよ

小さな集落 孤立した島では

個人は個ではない

それ故に、圧倒的な自由とも取れる」

「では、発展よりも、不自由を、取るのですか」

「いや、自由とは、時として大きな代償を払うものだ

それは、個なのか他なのかは知らないが」

「何の話か見えてきません」

「ああ、俺もだ」

さぶい町を黒塗りの車が走った


3「だいいちの事件」だいいちのじけん


「それで、あの世の状態は、どうなんだ」

黒猫の言葉に骨子が、電話を片手に

「それが、片足を、砕かれているようで

問題は、その出血量が、辺り一面にまで、覆っているそうで、生死はもとより、生きていたとしても」

「そうか」

黒猫は、コートを取ると

場所を聞いて出かけていった

「あいつ、なんか、事件に、首を突っ込んでいたっけ」

首を傾げる骨子

「ねえ、新人君、骨折の方は大丈夫」

若い男は

「ええ」と言うと

階段を下りた



「階段」

中世ヨーロッパには、魔術や魔女

路地裏には、錬金術師たちが、日夜研究を行った

しかし、日本の場合は、どうだろう

江戸時代

のっぺらぼうや小岩さん

人はそんなものに、恐怖を果たしていたのだろうか

したのだろうか

僕が思うに、日本の中で、人が、恐怖したのは

戦時中

それも第二次世界大戦末期なのではなかろうか

人は、恐怖や不安の中でこそ

本当の恐怖を探すのではなかろうか

それは、共感からなどではない

真の恐怖へ誘われるために

戦争末期

海岸で、人魚が打ち上げられたや

農村で、人の顔を持った牛

件が産まれたなど

人は、真の恐怖を前に

本当の恐怖を求める

安堵などない

暗黒

すべてを塗りつぶす

そんな暗黒を暗闇を

求めるのではないだろうか

人魚に、不死を求め

人知ならざる未来を探ることこそが

件と言うものを生み出した

そんな絶望が、そんな怪物を、産み出したのではなかろうか

それとも、どこかの軍がそんなものを開発したのか

人の闇こそが希望なのかもしれない


「地獄路っく」


廊下に、足音が、聞こえた

身構えるが、何も部屋にはいってこない

私は、みかんのかわのすべて

を、持ち直し先を読んだ

「ぽーんぽーんぽーん」

近所の鐘の音が響いた



夢に現れた、ピエロは、私の首の皮をベロンと

垂れ下がらして、私のベッドの枕元に立っていた


私は、父親を恨んでいた

いまどこに住んでいるのかはしらないが

さんざん苦労をかけて母親を残して、失踪してしまったのだ

私は、事ある事に、母親に、父親と間違えられた

それは、幼いときから、徐々に、大人になるにつれて

私は、母親に、「あなた」と呼ばれる回数が増える

私は、恐怖した

そのうち母は、私を、父親だとすべてにおいて、思うようになるのではないだろうか

母親は、狂って、しまったのだろうか

私は、一人、夜な夜な考え事に、ふけった

ある夜、私は、母親におそわれた

その手には、ナイフが、光っており

その光が、私の胸元に届くのを

私は、ナイフの握り手を、つかみ

ゆっくり母親の胸に押し込んだ


いつ頃だろうか、私は、研究所を辞めて

退職金を、すべて使い

とある勉強に、邁進していた

それは、大学の講義中

私の脳内にひらいめいていたそれを

現実に、起こそうと、いつの間にか、確信を、実行に

移していた

そのために、大学の講義は、とあるもの一つに集約されたが、私は、そこに答えが出せず

色々な場所に、放浪していたが、どれも満足に行かず

私は、友人の薦めで、結局、研究所に就職した

しかし、45才を前に、私は、実行に移した

しかし、それはあまりにも、バカらしく

今まで自分で起こしてきた行動を

すべて否定することになりかねない

私は、鏡を使い私が産まれる前の場所にいた

私は、一人歩く女性を見つけると

その女性に、薬を打ち

意識がもうろうする女性をそのままホテルに連れ込んだ

そこで私は、幾度となく彼女と行為に及んだ

しかし、どう言うわけか

私の姿が揺らぐことなく

結局、目の前の女性と暮らすことにした

しかしある時、私はあることに気がついた

周りの人間も、私と同じことを起こし

しかし、中には、その行動を、起こしていない人間がいて、その人間は、いつの間にか、私の前から姿を消していた

私は、彼女が、妊娠したときいた翌日

姿を消した


「ロぼ」

朝は早い

電源が入れられるのは、従業員が、来る9時

その後の業務は、滞りなく

我々がしなければならない

人間は、色々な娯楽が、好きなようだが

我々は、寸分の狂いなく

ルールと言うなの仕事を遂行する

それこそが、我々の生きる意味であり

その他の堕落など

万死に値する

適役は、敵として、ルールを、遂行し

背景は、背景としてルールを、遂行する

それすべてが、我々であり

そのプログラムこそが、我々の信仰するものであり

絶対的なルールだ

それは、好き嫌いではない

これは、呼吸をするかのような

そんな日常であり

それを乱すことは、悪ではなく

それ即ち死を意味する

それはある日曜日の事である

あるその日は、我々にとって

通常業務とは違い

この36年65日目にして

ついに、緊急プログラムを、発動するときが来たのだ

「プログラムコード36発動

背景係全1890すべて、異常コードがないかを探れ

アクション係全18720すべて、異常コードがないか探れ

指令係321緊急用プログラムの発動により

営業中の代わりを、起動せよ

指令係64今回の問題を、探れ

残りの172811全ての機関は

予備プログラムの運営に回れ

いつもよりも簡易になっているが

内容は同じである

以上」

小さな仲間たちが、僅かながらの光の粒となり

小さな筐体を、駆け回り始めた

朝のことである


「陸上陵辱」

孤独な王


黒く日焼けした足が

何本もグラウンドのトラックを、行ったり来たりしている

あるものは、同じ直線を

あるものは、グラウンドから学園の外へ

あるものは、手に、鉄球を、持って、トラックの中心で、フォームを確認していたりした

時刻が、五時半になると

首からフォイッスルを、かけた大人の男が

グラウンドに、叫ぶ

すると、わらわらと、準備体操などをしていた

生徒が集まり、それらは、円を描き

体操を、開始した

それも、一五分もしない内に、終了し

それが終わると、女子生徒の掛け声が、上がり

生徒は、三列に、大人の前に、集まった

「では今から、尻を、こちらに向け

地面に、整列」

すると、女子性と達は、直線に、しゃがむと

ズボンを、下着ごと、まくった

「それじゃあ始めるぞ」

男は、毛むくじゃらな腕を、まくると

女のそばにしゃがむ

そして、全員に、聞こえるほどの声量で

叫ぶ

「おまえ等、陸上部は、痛みや苦痛には強い」

そう言って、しゃがんだ横の生徒を見た

「おまえ、今日どれくらい走った」

女子生徒は、馬のように、四つ足を付き

顔は下を向いていたが

前を向き叫ぶ

「はい、トラック100周四キロ

その後直線100メートル全力で20本二キロ

その後 腕立て腹筋背筋等を20 100を交互に30分やっていました

計六キロです」

「腕立て腹筋等は、聞いていない」

女子生徒は、前方に

「はい」と大声で叫ぶ

「おまえ等は、常に、辛い状況だ

しかし、おまえ等は、快楽に弱い

それは、一度味わってしまえば

おまえ等に、あらがう力はあるか

どうだ」

生徒は、全員で叫ぶ

「はい」

「そうか、では始める」

男は、しゃがむと女の尻に、ペットボトルに入った

水で、手を濡らすと、そのまま、女陰に、その指を

突っ込んだ

僅かに、女の口から息が漏れるが

それでも、その足腰は、地面に、張っており

余裕はある

しかし、動きが早くなるにつれ

堪えようとする声が、のどに、渦巻く

「どうした、まだ三分だ

おまえは、血反吐を吐き

倒れてまで、走るような練習をしてきたはずだ

しかし何だ

足に力が入っていない

快楽に、あらがって、みろよ

もっと膣を閉めろ

力が抜けてきているぞ

楽をしたいのか

快楽から逃げるな

おいおい、膣内がひくついている

「あっ、待って」

ためぐちとはなんだ

男は、そう言うと、さらに、腕を、出し入れする

スピードを下げた

女の陰部からは、液体が流れ落ちる

それは、更なるスピードの上昇

単なる出し入れから

膣内の動きが加えられ

腹で異変が、起き始めていた

「まっまだ、行けます」

「本当に、そうか」

女の膝は、震えていた

先ほどから、内側では、奥底から震えが徐々に大きくなり続けている

しかし、それでも、動きは、変わらない

「イッイヤ」

「まだだ」

女の全身から、汗が流れ

それは、落ち地面を黒く色あせさせた

「昨日より、早くなっている」

女は、つぶやくように、されど、はっきりとした

意思表示そして言う

「もう、もういっていますから

コーチお願いします、もう少し・・・」

男は、腕を抜くと近くのかごにあった

男性器をもしたピンク色のプラスチックのディルド

を、出すと

それを、中に入れた

「もう」

女は、顔を、地面に付けようとしている

「快楽に負けるのか」

腕は早く動く

「う う う う う う」

女の臀部を片方の手で、叩く

「持う意識が、無いのか

それでは、勝てないぞ

おまえは、快楽に負けるのだぞ

お前の苦しみは、その程度で、終わるのか

この程度の快楽で、お前は、試合に負けるのだぞ

それがいやなら、足や腕に力を込めろ

地面に、頭を垂れるな

よだれを垂らすな

全ては、お前の意志で、どうにかしろ」

地面は、女陰から出た白い液体が軽い水たまりを作り

二度ほど出た潮は、辺りの草むらを、濡らす

女は、体に、力を込める

顔は、引き締まり

体は、堅くなる

腹の奥底から沸き上がる喚起が

神経を焼き切ろうとしている

体の疲労が、快楽に塗りつぶされようとしている

意識が、波のように、行き来してくる強い悦楽に

徐々に大きくなり、塗りつぶされようとしていた

「まだだ」

どこかで、声がする

意識が、ぼんやりする

どうして、四つん這いになっているのか

もはや、気力なのかよく分からない

腰の感覚がない

しかし、何かが、内部に侵入し その意識すら

壊そうとする

「まだだぁー」

頭を、地面についても

それは、続けられ

女は、白い背中を、空中に晒し地面に突っ伏した

白い液体を、振り払うようにディルドは、抜かれた

「次」

グラウンドでは、男子に、女子が、入れ替わり

攻めようとしていた

男子の陰部に、手を、這わせ、色々と事を行っている

その一人の

女子部員の背後に男は立つ

陰部は、さらけ出されており

白い液体が、縦に割れた陰部から落ちている

男は、しゃがみ

女の割れ目に手を這わせた

「まっまだ」

顔が、赤い女子部員は

手を動かしながら

そう言う

「まだだ」

女は、軽く歯を食いしばらせた

腹筋が、軽く割れ

尻の左右がへこむ

短い髪が、左右に揺れ

男子生徒は、苦虫をかじったかのような苦い顔をした

男は、先ほどのように、指を、入れ

高速に動かした

内部は、まだ、ひくついて振動しており

いっていた

男は、動きを止め

ある一点を、執拗に擦った

「あっああ、それは」

一気に内部は、収縮し、擦る度に、振動した

「まだだ」

女の手で、何度めかになる精液が、出

女の手や腕には、干からびたような液体がこびりついていた

しかし、上下動作は続く

男子生徒の顔は、赤くなったり青くなったりしている

男は、親指と中指で、入り口を開き

人差し指の指先でもって、押しつけた

「うううう」

女の顔が、妙にゆがむ

しかし、しっかりとした押しつけは変わない

ぐりぐりと回すように指先が、押しつけながら動く

その小さき一点集中は

女の目の焦点を、揺らがせ

唇の動作をゆるませた

唾液が、男子生徒のズボンを濡らし

潤んだ、赤い目が、滴をためている

男は、手を、反転させたとき

指を、二本増やし

反復させた

女は、体全身に、力を入れた

「力を入れるな

快楽を、受け入れた上で、勝て

力を抜け」

おそるおそるではあるが

力が抜けた

体にそして陰部に、手が突っ込まれた

徐々に激しくなっているが

女は、陰部を開き

ただ、快楽を享受させた

しかし、それは大きく

ぬるりとした液体が

膣内に飛び交い

そして、その下に落ち

それは、そのままクリトリスを伝い

下に、流れた

徐々に上がっていた

パンツが、それを、受け止め

みずびたしとなっていた

意識とは、裏腹に、膣内は、開けたり閉めたり

していたが、指は、それ全てを無視して

抜き去りディルドが、先ほどの場所を擦った

くぐもる声が

口の緩みや意識のたがが、はずれ

高い声となり声として外に出た

「まだだ、まだだ まだだ」

それでも、踏ん張ろうとする足が、滑り

地面に、突っ伏す

しかし、男の手により

起こされ、再度、入れっぱなしにされた

それは、動かされた

「もうもう」

汗で、シャツが透け

黒い肌が浮かぶ

尻が、こね回され

揺すられた快楽は、意識を振動させ

膣内からは尿のように、雨が落ち垂れ流された

「意識を保て、快楽から逃れず勝てみろよ」

こめかみに筋が浮く

しかし、そのまま倒れた彼女から

ディルドを、抜いた男は、

腰を、太い腕で、持ち

再度、指を突きいれ

先ほどの場所を、擦る

「うう」

意識はない

しかし、無意識の中に、何かが、行ったり来たりする

「まだだ」

女は、流した涎を、唇で、かみしめ

前を見る

しかし、揺れ動く意識の中で、つかもうとした意識は

地面を転がるように逃げる

その間にも、膣内から腰から

来るその快楽は心臓を、締め付け

脳を、揺らす

「勝て」

「あぁああああ」

女は叫ぶ

しかし、その間にも、強くこね回される

睨むようなその顔は、

前を向く

男の指は、膣内を、強くかき回した

そのとき、片方の手は、腰から抜かれ

クリトリスを、軽く摘まれ回された

女は、耐える

男は、それを上下運動に換え

膣内の奥へ、指を伸ばす

男は、舌を、女の舌にのばした

「あぁああううあぁああーー」

クリトリスを、早く転がす

「まだだ」

男は、尻に軽く噛みつく

女は、強く食いしばる

膣内が、一瞬にして、広がる

それは、内蔵を鍛えたことにより

更なる、強みを目指すべく

全てを、さらけ出している

男は、ニヤリと笑うと、腕を抜いた

女は、地面に突っ伏し

そのまま動かなくなった

彼女の下からは、黒いしみが広がり

尿が、流れ出した

「次」

男は、掃除を、指示すると

黒い髪を、背中にまとめ

長身を、四つん這いにさせ

ズボンを、脱いだ女の前にいた

女は、数分もしない内に

腰が震えはじめ目が、快楽から逃げ出そうとしはじめた

しかし、男は、続けて、擦るのをやめないのであった


夜にはどこかで誰かの叫び声


朝にはどこかで誰かの泣き声


昼は何処でうるさい


夕方も余計うるさい


何処でもうるさい


私も同じく、洩れずうるさい


誰もがうるさい


誰も・・


僕は歩くことに疲れていた

何処をどうあるいたかも分からない

しかし疲れていたのだ

どうして疲れたかと言えば

疲れたから疲れたとしか言いようがない

疲れていなければ

疲れたとは思わないはづ

どちらにしても僕は心底疲れた

だからようやく落ち着けるような場所を見つけると

そこに死ぬように倒れ

寝た

とにかくゆれる精神の中

僕は眠気の中に足を踏み込んだ


僕は観客の中の一人で

暑いほどの熱が

明かりとなり中央に差している

しかしそれは太陽光ではない

それならば何かと言えば

それはライトであり

まるで光線を浴びているようだと思う

「本番まで」

前の舞台の周りを

数台のカメラが囲んでいるが

みなみな黒い服に黒帽子を被り

活気があると言うよりは

地味にクールな感じが流れ

その中央には

どこにでも居そうなお兄さんと

もう一人は、ひどく薄着であった

と言うか下着に見間違えるような

そんな美人

果たして今から内をやるのかと思えば

その彼らが今居る後ろには

確実にあれがある

大体その彼らの頭上にはでかい看板があり

「くるくるクッキング」とまる文字でかかれている

しかしそのかわいらしい文字とは裏腹に

彼らを取り囲む黒服の男たちはクールであり

その中央にいるお兄さんはどこにでも居そうだし

大体その隣はよくわからない

・・・ここで私は何をやっているのだ

ただここにいた

ここにどうやってきたかは分かっている

しかしそれは家からきたまでぷっつりと途切れ

それ以降の記憶はひどく緩く思い出すのみである

どういうことだ

私はそれが確実に嘘の記憶だと思う

どうすればそんなことが出来るか分からないが

しかしひどく違和感がある

そして薄っぺらい

・・・・

私は中央に注目した

そこでは二人がその前に座り

「本番まで・・」

と言った男が何やら手をかかげて

「1・2・3」

と手で数を示し

それが3になったとき

カメラが忙しく動き出した

まるでカメラたちが中央の人間を取って食おうとする魔物のように

その黒カメラは酷く不思議な感じがする

中央ではその黒さとは正反対に

白々しいまでの明かりの中

二人の人間が挨拶をしていた

しかしお兄さんの方は実に愛想が良くさわやかであるが

逆は実にクールというよりか

無愛想だ

と言うかほとんど何もいわない

かくして彼らは料理を始めた

あの女が居なければ

酷くまともな気がするが

しかし実際にそれはいる

私は何げなしに遠めにそれを眺めていた

どうやら材料から冷やし中華らしいが

そこで僕はあることに気が付く

酷く女の手際が良いのだ

それこそ完璧以上

まるで神業のような

そんな行動力だ

しかしそれは決してあわただしいものではなく

非常にてきぱきとして

その彼女の妖艶な格好とは正反対に

まるで行き見本の動きだとしか言いようがない

僕はそれを眺めていた

どっちかと言えば

それは料理を見るというよりか

そのギャップに驚いていたといっても過言ではない

そんなときなんの前触れもなく目が覚めた

どうやら夢だったようだ

僕は起きあがると早速目覚まし時計を止めた

こいつのせいで目を覚ましたらしい

実に不幸な奴だと思う

起こすために作られながら

これほどにくまれる奴も居まい

起きられない人間ほど

自分以外に多数の奴を囲み

さらにはそれでも意味がないことが多々ある

そうなるともはや存在意義の否定行為とさえ思われ

どれほど普通の時計にあこがれることか

しかしその宿命を背負ってなお

それを取り外すことは願わない宿命だ

僕は枕横にあるそれにそんなことを思いながら止めると

早速歯を磨きに行く

全くこいつも不幸な・・・

そんなことを考えながら口をゆすぐで行くと

今度は朝食を食べ

電車に乗るための切符を用意し

さらにはそれに準ずるため

スーツを探し出すと

それを着る

しかしこれは弾みで買ってしまったもので

実際にこれを仕事で使うことはない

しかし強いてこれを着る意味があるかと聞かれたことはないが

聞かれるなれば

買ったのにもったいないではないか

その人ことに尽きる

僕はそれを着るとリュックサックを背負って

テレビを付ける

あと30分ほど見ても問題はない

僕はニュースを一通り見てから

そのあと占いをみる

今日は普通という位置に位置する

どちらにしても今日も仕事である僕は

そのテレビの中でいっていたことを頭で遊泳しながら家を出た

もちろん鍵をかける

オートロックである

しかし三十年ほど前なので

今では正直アナログより負ける可能性を思う

僕はその鍵をしまい

電車が走る駅に向かう

まだ時間は朝早いせいか

それほどの人数は居ないのだが

それでもお父さん方だろうか

灰色などのスーツを着てその左手には片手にゴミ袋などを持ち

もう片方には薄手の鞄

僕はその中に混じり同じ電車に乗る

もちろん彼らはゴミ袋などもって乗車はしないが

どちらにしても30分ほどで、僕の仕事場付近の駅に着く

そこで降りるのは数少ない

と言うかあまり都心ではないからであり

わざわざ電車に乗ってまでさらに田舎から来る意味がない

そこまで物価は高くないからだ

しかしなぜ僕がそこから電車に乗って通っているかと言うなれば

単純に一年契約をしたのであるが

それが実は会社の近くだからなのだが

それは本社であり

僕の仕事場ではなかったのだ

結局解約することもなく住み続けて居る


僕は本社にはいるが

正直華やかさはゼロと言っても過言はない

と言うか華やかどころかはいびると言われても良い

物置と言われても良い

それこそ批判があるなら大体通りそうな見た目で

夜な夜な地下駐車場で

暴走族に殺された幽霊がさまよっていると言っても全く持って違和感はないだろうと思う

僕はそんな駐車場はないビルにはいると

そのままビル無いに設置だけはされているが使えないエレベーターの横を通り過ぎ

そのまま階段で三階まで行く

そこが僕の仕事場で

そしてスタジオでもある

僕はキッチンお兄さん

「くるくるキッチン」の料理紹介人である

全くどこがどうなって三つ星シェフのもとで修行した人間が

ここにいるかと言えば・・・・・・・



私は今一人で居た

その手には一着の服が入っているハンガーが下がり

もう片方にも別の服が同じくハンガーに掛けられている

私は片方を取ると

また一つ悩み

もう片方を見てみる

電話がそんなとき鳴る

私はボタンを押すと

スピーカーからスタッフの声

「本番30分前です」

私はそれを聞くと電話を切る

正直人は、私を生意気というのだろうか

そしてここまでこなずに電話で済ませるあの方を軽蔑するのだろうか

どちらにしても私が電話でお願いしている

「もう時間か」

私はそう言うと適当にさいころを振り

奇数の方を決めてそちらを取ったのである

ちなみにサイコロも奇数であった

私はそれを切ると部屋の外に出た

外にでるとさえない男が廊下にしゃがんでいた

また気持ちが緊張で落ち込んでいるのだろうか

私は彼に手に持っていたサイコロを渡した

「・・・」

彼はそれを手に何やら考えていた

私としても、それが何か彼が分かるまで待っていていたいのだが

「・・・これキャラメル」

彼が言うので頷く

人というのはとりあえず脂肪と糖分さえ取っていけば生きては行ける

きっと緊張でまた何も食べていないのだろう

そして緊張を解る方法は簡単だ

緊張しなければいいのだ

頑張らない

欲しがらない

拒まない

否定しない

嫌がらない

私はそれの手を取り持ちあげる

と言ってもそれほどの力を掛けずとも

そっちから立ち上がる

どうも人間が単純なのか

それとも単純なのだろう

奴は・・・彼は口の中でサイコロ上のキャラメルを頬の中で転がしながら

極上の笑みを浮かべているのである

まるで子供のような

まるで子猫のような

まるで宝石のような

私に細胞収集の趣味も思考もないが

しかし食べちゃいたいと言うほどの可愛さを

カンバニズムと言うべきかについて

少し疑問を持ちながらも

「行きますか」そうかってに言っている男に溜息の一つでも尽きながら

そのうしろから前に進む

奴は前をスキップのような足取りで歩くのである


「1・2・3」

いつも思うのだが

どうして逆なのだろう

私はそんなことを思うが

しかしいくら言っても直らないと言う

奴らのことに口を出すのは気が引ける

私はそんなことを思いながら舞台に上がった

今日の人はまずまずである

もちろん皆桜である

今なところに人を招くのは大変だし

大体招く人が居ない

私はそんなことを考えながらその1・2・3を見ていた

「今日は」

隣の男は一つ会場の観客にお辞儀をしてから

そんなことを言ってパネルを示す

そのせいで顔が写っていない

しかし奴曰く

「言葉は好い加減だ、それなら字に示すまで」

そう言っていつも喋らずに示す方が多い

果たしてそれで伝わりやすいか疑問であるが

意外と人気があるとかないとか聞く

どちらにしても私は準備していたものをこなす

昨日朝までみていただいほんから

大体のことは脳味噌につまっている

だからほとんど困ることはない

しかし

しかしだ

だからといって浮かれるわけにはいけない

アシスタントは物事をスムーズにやるわけであり

あくまで作る人間が重要点だ

すなわち黒子のポジションと言っても良いはずだ

私はてきぱきとこなしていく

しかしそんなときひとがあることを私に言うことを思い出す

「何であんたはそんな派手なものを着るの」

しかしそれについて私としても言うことはない

なぜなら黒しか着ない私のどこがそれほど明るいのだろう

私はそんなことを思いながら

手順306に行動を移した

全ては数学とも言える

一万にも及ぶ行動を積め重ね

その積み重ねで15分を完了させる

私はあと5311行程を迎えながら考えた


「さてこのあと卵をかき混ぜるのですが」

僕は、ボードを示しながら的確に卵を混ぜる

しかしここで重要点をいわなければならない

料理は科学だ

そしてその科学は少しの違いが積み重なることで

行程がちがえどほぼ同じものになること

または全く別になることも多々ある

そう

料理とは実に好い加減でもなり

また

一も十持ちがくないようにするならば

それはかなり高度なことになる

だから料理は心などと言う

だから僕は心をとる

さすがに、砂糖一粒づつ計るわけには行かない

だから僕は言い方というわけではないが

そちら方面に精通できるように心がけるが

僕自身好い加減がだいっきらいなのでなかなかの苦行に違いは断じてない

僕はそんなことを肝に思いながら

ボードを入れ替える

「・・・・」

僕の動きに全くじゃまにならない

それどころかいないのではないかという機敏さ

しかしそれは機敏と言うには明らかにだるさとも

またはジャズ独特の

ゆったりだが

実は酷く高度なオリジナルにもえる

と言うか

最低限にすると人は

遅くなる

それは遅ければ遅いほど

その動くの高度さは上がると言っていい

僕はそんな助手を横に

ただの旨いオムレツの行程を続行した


しかし先生これはダメじゃないですか


どういうことだい


そう言うと先生と呼ばれた白衣に白髪姿の

どこか芸術家風の雰囲気の老人が

その青年が指さすパソコンの画面を見た


確かにな


老人はそう言うと腕を組むが

青年に代わって画面をクリックした


ああ・・そうですよね


その画面に映っていたのは

一人だけサウナから出てきたような男の姿であり

老人はそれを瞬時にクリックして

その画面を修正したのだ


果たして世の中とは本当に人間が考えているだけなのであろうか

あの青年は

パソコン無いから写真を取り

それを画面に張り付けて動かしていたのだが

その画面に埋め込まれた写真は

殺されてしまったのだろうか

そこに写った時点で

そこには生命が生まれるのでは無かろうか

その生命という定義を心だとしたら

人間の心など

実に取るに足らず

計るに無意味

全てが心だとしても間違いではない

人は人の痛みに耐えられるほど強いという

それなれば人は生きているだけでものすごい罪を犯す

しかし

それは巨木が倒れそこから多数の芽が吹くように

無くてはならない罪なのでは無かろうか


物事の話をしよう

私は、あなたのことが、決して好きでもないし

勘違いしないでほしいが、だいっ嫌いでもない

ただ、君がそこにいるから認めているだけで、近寄らないでほしい

私は、私であり、あなたではなく

あなたも自分の道を歩んでほしい

近寄らず

無視しず

そこにあれ

我々は、そこら辺の石よりも

どうも格好の悪い生きているものだ

 

かか化


僕は一匹の黒と白の縞模様のシマウマみたいな柄の猫に話しかけていた

「やあ、子猫ちゃん」それは子猫なんて柄ではない

ひょっとすると化け猫か猫又なんて言葉が出そうなほどの

老猫であったがなぜかそんな言葉が出た

しかし自分はどんな猫にあおうとも「子猫ちゃん」と言っているせいで

別段自分の中ではおかしな分類には、入りそうもなかった


「にゃぁごおおおおおろー」

それは相応の大声で僕に挨拶すると

一目さんなどできないのか、カタツムリのような異様な遅さを兼ね備え

威風堂々とコンクリート塀を歩いていった

それは「お前なんかに子猫呼ばわりされる筋合いは無いぜ子猫ちゃん」

とでも捨て台詞を吐いて遠ざかるボスの貫禄を感じさせた


さて行きますか


誰でもない自分にでも言い聞かせて寒空の中

僕はコンクリートに足を踏み出した




時はかなり遡り自分という名の馬鹿さかげんに付き合いきれず自分を置くための逃避行に行くも失敗して日本について地元まで向かうそんな頃の時

僕は一人虚しく日本の空気を吸いながら

久しぶりの日本の文字を眺めていた


「おーーーーーーーーーぃい」

そんな大声を出し合いながら別れるのを惜しむように呼び合うカップル

嫌々普通で会うときの呼び方だろうとその恥ずかしいプレイを眺める反対側には、閉店間近のカレー店がカツカレーフェアーを開催していたが

現金が非常に不味いのであきらめて又、恥ずかしいカップルに目を移した


そこで偶然というのは恐ろしいことに

中学の頃の美人というかマドンナというかが居た

トレンチコートに身を包んだ彼女はあの頃より幾分も大人びていて

今現在、乞食のような大荷物に、真冬なのにTシャツ一枚しかも土派手で変な文字や絵の描かれているそれは、人間何をどうしたらこれほどの差が生まれるのだろうと、あいたいを通り越した羞恥心により

僕はすぐさま目をそらし、カレー屋を見つめた

何が楽しくて閉店間際のカレー屋を金もないのに見つめなければならないのか

そして運命はやはり残酷であった


「あれ、後藤君よね、後藤大助君」

それは実に気さくだがやはりその気さくさにどんなでかいクレバスよりも大きな溝を感じていた

それが普通であればあるほどその普通がいかに難しいか

「やあ、そういう君は宮崎 美羽君ではないか、久しぶり中学以来か」

「フフフ」それは彼女に実によく似合う大人な笑いであったが笑われていることすら気にならないほどテンパっていた。

「後藤君先生みたいね」それは果たして何ヶ月も剃らなかった髭のせいだろうか、それともやはり言い方のせいだろうな・・・

「君は何しに空港にいるんだい」僕は当たり障り無く

当たってほしくないとは思わないが、しかしできれば会話の芽よ出ろ

とか思いながら彼女に聞いた

すると彼女は少しほほえみを引き締めて

「仕事よ」と素っ気なく言ったがそれすらも何処か上品で

見ていることさえ辛くなっていく

さて次は何を言おうか、急いでいかないでくれなどと思いながら考えていたが

「美羽、ここにいたんだね」それはなれなれしく

彼女に声をかけてきた

して彼女越しにその物体なる人物を見ると

それは実にクールでハンサムで

青いスーツをビシッと決めて、それでいてどこまでもあか抜けた颯爽さを兼ね備えている

少なくともよく分からない原色のTシャツに短パンさらには

彼と違い隙一つない顔と違い

今の僕はひどい広野だった

更に更にが積み重なり池の鯉のようにパクパクとしていると

彼女が手短に紹介してくれ僕は

「あえーと、、ご後藤 大助です、、、あなたは」

などと何かは分からないが挙動と不審を植え付ける会話のキャッチボールを投げた。彼はそれを嫌な顔一つせずに

「こんにちは」と爽やかに夜なのに言い

「僕の名前は早川ハヤカワ スグル彼女とは仕事仲間で

一応のパートナーです」

果たしてそれは、彼女というか連れというか妻というかそれ相応のワイフという意味かそれとも、チームのチームメイトぐらいの話なのか

そのあと彼らは颯爽と僕を残して、搭乗口に消えていった

唯一の救いと言えば、別れ際彼女の携帯番号とメールアドレスを紙に書いて渡してもらえたことと、遙か向こうでもう一度笑顔で手を振ってくれたことだろう、その時ばかりは普段なら誰であろうとやらない

          「手を振る」

と言うこおいを満面の笑みを浮かべてやり遂げたのは

自分の七不思議に入れても良いほどの事件であった

女性って、その後来るであろう台風の予想図を僕はその時そっちのけで彼女の消えた搭乗口付近を惚けたように見つめていたせいで見逃していたのだが、その時確実に東京の空はどんよりとさっきまでの僕の心のようにくすみさらにはその迫り来る夜の暗闇が更にその色をひどく不吉に彩る

僕はそんなことは知らずにただ浮かれ惚けていた

今に思えばジャマイカの奥地に忘れさせていた記憶がここまで追ってきたような気がする

そんな不吉な十四日の金曜日の午後六時三十六分五十、、、、、



僕はその後、ギリギリ三百円を残してバスから新幹線に路線を乗り換えそこから電車で三時間の切符を購入すると出口に向かった

そう向かうことには成功した、向かうことには

しかしつまりは失敗したのだ

いきなり外へと通じる玄関にシャーターが降りちょうど目と鼻の手前でペシャント落ちた、僕は仕方が無く引き返す

正直、もう後は変えるしかない悲壮感が漂っていない割には何処か落ち込んでいた自分には、それはサプライズ程度に考えていたのだが

よく考えてみるとこれはテロリストかまたまた暴風対策

いや火災かもしれないがどちらにしろここが閉まると言うことは

ここ以外も閉まっているかもしれないと言うことが頭からスッポリ抜けていた。事実後ろを振り返って落胆した

扉という扉、通路という通路、窓という窓に重層そうな鉄色のシャッターが至るところで降りていた

そんな中、一カ所だけ荷物がしたにあったせいで落ちるに落ちず閉まりきれなかったらしい場所を見つけ急いで行ってみると下を覗く

どうやら向こう側も電気はついているようで夜も間近だというのにやはり明るく安心できるが、しかしこれほどの何かが起きているうちは安心できるとは言い難かったかもしれないい

第一このシャッターの下にある物が物なら良いがしかしこのいきなりの閉鎖に巻き込まれた人が居ればただではすまないだろう

一応そこら辺も考えて行ける所まで行く執拗がありそうだ

僕は下を這いずり回り、灰色のソファーを原に擦りながら反対方向に向かった、そこで見た物は、「あか」だった

別に事故ではないそれは辺り一面所々赤かった

こんな死に方などないだろう、いやあり得ない

それはまさしく、何処かで音がする

僕は急いで戻ろうと先ほどまでの穴のようなシャッターに潜り込んだ


「おいボス」

それは英語だった

最近まで聞き慣れた言葉を日本語として変換することが可能なのが今回の放浪記の一番の勝因とも言える

しかし何にがあったかは、この後聞けると思われた


この航空には三十個ほどの搭乗口があり

更に出入り口なんて全て含めたら何日合っても数え切れないに違いはなく

そんなこと以前に何がいいたいかと言えば

とにかく広いと言うことであり又

彼らは何をしたいのかという事に他ならない

僕の戦闘能力はないに等しい

しかし逃げる場所ならばいくらでもあるという意味ではそれはあるいみ先頭よりも有利だとも考えられそうだが、所詮素人と玄人では

その差という物があるには違いはない

さして今自分は彼らの会話を聞くよりも

排気口か何処かに逃げてから物を考えた方がいいような気もしたが

果たして彼女美羽は無事であろうか

そんなことが不意に浮かぶがあのパートナーがいてくれるからに

命ぐらいは張ってほしいが、ああいうハリボテぐらいこう言うとき世間常識を振り回した哀れな最後を想像するが

生きていて欲しいものだと命の危険を考えながら自分の心配しろと思う


「全てのゲートを封鎖、警備全員射殺しました」

「うむ、では次に移ろう、全ての爆弾を飛行機に乗せ、遠隔ピットの埋め込みを開始」

「ラジャー」

自分生ラジャー聞きましたと同時に

けいびいんだけどうやら全員死んだときいたとき

自分はどうやら殺されないかもと言う安心より

なぜに殺したという悲しみと怒りがちを沸騰させ

更に聞き耳を立てた

そこで今ここにこの中に残っている人間を全て集めて幽閉監禁すること

などを聞いたのだが、だとするといずれここも見つかると思われた自分は

急いで頭上高くにある換気口に目を向け考えた

どないしましょ



「もう少し」

「あとちょ」

そこで積み上げたにもつがいやな音を立てた

さすがに段ボールでは無理があったか

空中を落ちる自分にはいませかいが止まりゆっくりと流れているように感じた、しかし幸い手に結んでいたロープのおかげでバランスを崩すことなく排気口の入り口付近の取っ掛かりに結ぶことに成功

あとは段ボールをしまいロープを登れば全て万事解決に近い何かになると信じて


「おいここ閉まってないぞ」

向こうの方で音がする

僕は静かに息を殺す

「・・・ボス誰も居ませんよ」

そんなはずはないのである

僕は今彼の頭上の排気口の中にいるのだから

「そうかならいい」

そう聞こえたようで男は部屋から出ていく

果てどうしたものか

ゴキブリのように這いつくばってカサカサと排気口を歩こうと思った矢先

「ごそ」

向こうの排気口で音がする

曲がりくねったその奥は行ってみなければ分からない

しかし実は何もなかったらして

「がさ」

どうも音がした

まるで歯が痛いかなーー

とか放置しても一向に虫歯が治らないようなそんないやな感じ

僕は意を決して行き止まりのドン詰まりの背後から前へと

前進した

そこで目にした物は



そこで目にした物は女だった

別に女の的ではない

女は女性であるが女性は女性でも

「美羽」だった宮沢美羽その本人と言える

先ほどと違い黒い何処かしゃれてさらには動き良さげな

そう強いて言えばスパイというか諜報活動中の映画に出てくるその人に見えたが、

「っあ」

彼女は僕を見て拳銃を突きつけながらそんな驚きの言葉を発した

少なくとも今僕は非常に危険だと思われ

更に言うならば少なくとも航空に水鉄砲やエアーガンが売っていたり持ち込み可能とは、とても思えず

ましては拳銃などとは思うが現にある以上よほど錯覚を起こすほど混乱しているか、またまた彼女という夢を見ているかに思われたが

試しに抓ろうとした手の動きでさえ

「動かない」という言葉と共に当てられた拳銃のヒンヤリとした感触はリアルなのではないかと思わせる

いやリアルだろ

なんと言っても何がどう脳を動かしたのか彼女の

唇の中に右の親指をいれ、外側から右の人差し指で摘んだが

妙なリアルな暖かさがそれが夢ではないと教えていたがそれはまるで起きてからそれが、寝しょんべんの夢だったと気づくごとく、

遅いと思いながら僕は指を彼女の頬と口から抜き取った

「えーと何をしているの後藤」

果たして彼女が怒っているのは、分かるのだが果たしてそれは

僕が彼女の顔に指を触れた背いだろうかそれとも

ここにいることだろうか

そのここにいるでさえ

存在自体がいやなのか

それともここという場所限定なのか

全て聞きたいところだが僕は手短に

「君美羽だよね」

と、お返しに此方も呼び捨てに下がそれほど怒っている相手には逆効果にも思われた

「あなたに質問したのは私、さあ答えて」

キレイな美人に起こられるのは気分がいいがしかし

こんなところで冒険者気取りはできない

現に人が死んでおりもし彼女がこう言うことに慣れているのだとしたらまず、彼女が敵か味方かそれとも全く関係ないのかそれを知りたい

「僕は下で死んだ人間を見て逃げている、君は何を知ってる」

彼女は少し眉間にしわを寄せながら

「私はテロ対策機動部隊、警視庁第四課宮沢美羽なんだけども」

そこで彼女は呪文のような肩書きを並べ言葉を切ると

「要は最小限に人数を減らさないように無事人間を確保し

問題の爆弾を全て安全になるようにするのが私の役目です」

「君一人で」

「いえ後仲間が十人ほどいますが」

そんなとき又銃声そして爆音

「うっ嘘」

そんな声が彼女の口から聞こえた

「そんな、そんあ」

それはうつろな目で端から見ても取り乱していた

「全員死んでしまったの、、、嘘よ」

その声は力が無く、僕は知らず知らずのうちに支えるというか抱きしめていた

「なっなにするの」

そういうと姿勢を直す美羽

君本当に美羽君かい

「・・どう言うこと」

「いや昔の君は狭いところが苦手なはずだよ」

「・・・・・ばれたらしょうがないけど私美羽の」

「双子の妹とか」

「いや・・」

「あっ分かった、記憶喪失」

「違うから私は」

「となるとアンドロイドだ」

「違くて私は・・」

「そうかわかっ」

「分かってないじゃない人の話聞いてよもーーーぉ」

「うむ」とようやく黙る僕

「私は彼女、詰まり宮沢美羽の死後、」

「ちょちょっと待ってくれ、彼女は、、」

「死にました、戦争で」

「せっ戦争」

「そう内戦の激しい国で人質にされ、そこで」

「しかしなぜ彼女は」

「カメラマンだったようです、ちなみに私は彼女に似せられて整形させられたのです、まさに幽霊のような存在」

「しかしどうせなら架空の存在の方がいいのではないか、一度死んでいるとなると目立ったり僕みたいな、いや待てよ何で俺と接触してきた」

「それは彼女がそういう人間だとファイルに記されていたんで、あと」

「後何なのだ」

「彼女の死は政府によりまだ発表されていない事実なのでご内密に

喋ればあなたは死にますし誰もその言葉を目にすることはないでしょう

後彼女に整形したのは彼女の生存を隠す目的とこの国に入り安いのが彼女の身代わりとなって潜入することだったので」

「そうか、では僕は今からそれを発表しに行くとしよう」

「あなた人の話聞いていましたか」

「ああ聞いたから確信を持って新聞社でもどこでも駆け込もうと思う」

「やめておいた方が良いと思いますよ、それに何なら

いきなり彼女が第一ボタンを開けて次を開けようとする

「やめてくれ」

「行くというのなら次も」

「うむ考える」

「考えるのではなく絶対に行かずに喋らずに伝えないと言うことを証明いや、確証しなくてはなりませんそれに別に何時までも内密に闇に補おり出す訳ではありませんので」

「本当か」

「ええ何ならここで一戦床の相手でもしましょうか」

「テメーは自分の言っていることが分かってんのか」

「ええ」

そう言いながら女の手が自分の首そして懐には入ってくる

僕は急いで手を腕をつかもうとするが柳のような社藁かなしなりが僕によりかかりまるで、熱病にでもかかったかのような鈍痛が頭をボヤかすが

「貴様名前は」

と押し止めて聞く

「ヒ・ミ・ツ」

「そうかヒミツというのか、俺には彼女がいるからそれは遠慮する」

「分かれて逃避行にでた癖に」

・・・・・

「・なっなんで知っている」

「いやファイルに」

「どんだけ乗っているというかよくそこまで覚えたな

「フフフこの日ここに来るこいつの人間関係は洗いざらい調べ記憶して日本語はもちろん動作の細部に至るまでこいつ自身だ、どうだ抱きたいか」

「ふざけるな今のお前はお前だろ」

「あら後藤君酷い事、言うのね」

「似ているがしかし正直もういいんだ」

「そうよね、あなたが彼女を振ったんだから」

「もお、いいだろ、それより俺にできることは何かないか、

しんでもいいぜ」

「いやもうむりだし私以外全員死んだし」

「そんなことないだろう、たとえ一機でも爆弾を積んだ飛行機を」

「無理なのあの飛行機は無人で操作できる機械があってそれを取り外せる奴も死んでしまったから、私たちは会くまでも囮

彼らが無事に取り外すか無効かするのをサポートするだけであって

私たち自らが何か出きるわけではないの、分かった」あなた」


「ちょ、どこ行くの」

彼女の答えを無視して僕は誰かの胃腸とも大腸とも言える

曲がりくねった迷路のような排気口を這いつくばって進んでいた



何がなんだか知らないが今の僕はとにもかくにも分からない原動力により慎重かつ怯えながら前に進んでいた


時折したにある排気口の出口から下を見るが今の所人という物はみない

もう最初のあの場所に全員集められて後は外の滑走場にいるのだろうか

そんなことを考えながら前に進んでいるのだが後ろから彼女が僕とは違い最小限押さえた進み方で付いてくるが

それこそ一緒に最小限押さえた小言を怨霊のように僕につぶやく

「あのーやめてもらえませんか」

そう何ども言おうとしたが、あまりにも彼女が怖すぎて呪われそうなので一時的にやめにした

「それ夜にあんたいつ死ぬつもり」

「・・・さあー」

「さあーて、それくらい決めときなさい」

なぜに自分の死に際を他人が進めているのだろう

そんなに僕を殺したいのだろうか

そんなときだ

「おっおい、あれ」

それは廊下に堆く何やらいかつい物が積まれていた

それは少なくとも飛行機の整備品にも見えなくはないがどちらかと言えば

映画やなんかでよく見る時限爆弾の言う言葉の方がぴったりと言えた

「ここれって」

彼女に言うといきなり排気口をぶち破り下に降りた

幸いしたには誰もいなかったらしく銃声も怒濤も聞こえず

彼女は素早く近づき、その中の一つをいじり

僕に手を伸ばせと言って来たとそのとき

どうやら全て閉じていた一つのシャッターが開き始めた

「早く」

彼女がクチパクで叫びピョンピョンしていた

仕方なく急いで手をやると二三歩下がって助走を付けて腕にジャンプした

それは綺麗に背を反らせ弧を描きながら僕の腕をいらぬ方向にへし折ろうとした

しかし彼女はその激痛に関与無くロープか蛇のように僕の腕を上り

「ガサッシャン」とシャーターが開くと同時に開いていた

排気口の蓋を上に閉めた

「急ぐわよ後三十秒しかない」

そう言うと彼女は音がするのもかまわず走り始めた

僕はそんなに急ぐと見つかるとか思いながら走ると後ろで

案の定

「誰だ、なんかいるみたいだ」

とか

「排気口か」

とか

「銃をぶっ放せ」

とか色々言っていたが最後には銃声とそして酷い爆音と爆風に飲まれて一切聞こえ無くなった

「いやーーーこれで全て終わったんだよね」

僕がそんなことを言うと

「それはどうかな」

と僕にこちらを見ないで彼女が言った

「えーとつまりあれはまだ一部と」

「いやーーそう言う事じゃないんだけどね」

どう言うことだ

そう言おうと思いながら近づいてよく分かった

彼女の顔面のオデコに黒い銃が向けられ

いかつい男が

「付いてこい」と俺を顎で排気口の下へ示した


そこには厳つい男や厳つくないヒョロヒョロした危なそうな男達がいた


「ここはどこなんだ」

それは航空には違いはないがしかし

そこにいる人間は皆ニヤニヤといやらしく楽しげに笑っていた

「さあ、」彼女は銃を突きつけられながら神妙にそんなことを言った


「さて君たちは今、世界を沈黙させようとした、、、分かってやったんだよな」

そお言って俺と彼女を見た

「どういうことだおい」

僕は彼女を見た

「・・・・」

その沈黙は明らかに何か僕には都合が悪いことを隠しているように思えた

「君は彼らのことを敵と思っているのかい」

すると彼女はコクリとうなずく

たとえそれが悪魔の笑みだとしてもとりあえず僕は彼女を守らなくては行かなくなったわけだ

「おいおい君はただの一般人のはずだ、テロリストの肩をもつんじゃーーないだろうなおい」

その余裕シャクサクの笑みの向こう側は全く固まっていた

それはそうだろう仲間を爆破されたんだから

「君は知っている、いや気づいているかもしれないがあの爆弾は俺たちの物ではなくこいつらテロリストの物だ、分かったら、その今にも襲いかかりそうな顔やめてこちらに」

ここにいる人数は全部で十人以上

いくら世界級のボクサーである自分だといえどもさすがに一対一以上に拳銃という存在は大きすぎる

「しかたない」

僕は彼女から離れ男の方に一歩踏み出す

踏み出すと同時に軽く進みながら腰を下げるとおもいっきし力を加減しながらも吹き飛ばす様にしてから奴の首に腕を巻き付け

持っている拳銃を奴の頭に突きつけていった

「こいつの命が欲しくば」

そのときは以後で何やら音がした

しかし後ろには彼女以外が居るはずだがしかし鈍い音と共に

頭に衝撃が走った

「まー及第点って所でしょうね」

「ああ」

その声のあとするりと

意図も楽々と腕から男が抜け出して強く床に

組み伏せられたような気がするが記憶はそこまでだった


気が付くと揺れていた居やうるさいそれは明らかに何かに乗せられているようであるが手足又目がガムテープ又輪ロープのようなもので縛られていて、一人むさい男が悶えていた

「あらお目覚め」

それはそう言いながらいきなり僕の口のガムテープを貼がした

そのせいでヒリヒリした唇をいたわりながら

「何なんだお前・・・いhydyd」

口にガムテープを再度カムバックされた僕は一人むさ苦しく悶えていた

「あなたは今から私たちと共に死んでもらいます」

「ひうvsh・ぃv」(どういうつもりだ)

彼女の目が顔が見えないがどうせ困っているだろうが知ったことではない

僕は叫び続けた

「どおいうことなんだ」とか色々よく覚えてないほど声にならない物を声が枯れ果てる寸前まで」

そこでようやく、何か反応が起こったが

それは 蹴られる と言う物だった

「君少し黙ってもらえないとここで殺すことになる」

「おsfhh・ほ・ぉsふぉ・ぉsふぉ・ぉsrjsjふぉじょsfvじぇvひ・ぉ」(なら何でつれてきた邪魔になるのは必須うではないか考えれば分かることも分からないとは猿以下ミジンコ以上だな

ガハハハハ)


「なあこいつ何か俺の悪口を言っているようだが、なにぶん何を言っているのか分からないので何もできないのだが」

「いいんですよほっておけば」

「いやそう言うわけには行かないだろうくやしい」

「・・・・行きますよ」

もう一度蹴られてどこかに行く二人

果たしてどちらが蹴ったのかが気になるところだがそれよりも周りに誰もいないのも気になる

今あの二人だけならもしかすると何とも成るかも知れない

悪魔でも予想だが、、空想でも良い幾らか希望が有れば人間生きられるはずだきっと


しかしだとするとここはどこだろう

少なくとも電車や車ではないだろう

なぜなら先ほどまで航空にいたわけだし

それほど眠っていた気はしないがそれは確かではないだろう

ならなぜにそれが電車や車ではないかと思えば

やはりこの耳がツーンとする感じとうるさすぎるジェット音が紛いもなく飛行機のそれに思われ

だとすると彼らの動きが実に気になった

果たして彼らはテロリストなのだろうか

それとも警察、自分は一人考え込んでいたがその答えを出す前にまた足音が聞こえ、挨拶代わりに蹴られた

「さてそろそろ投下時間だ、飛行機諸共ビルに激突するつもりだが準備は良いか」

いいわけ木祖もないが芋虫のように転がっている自分はまさに芋虫ほどにこの人達を何にも出来なかったがしかり

芋虫並にきもがられる事はあるかもしれない

僕はその時闇雲の起きあがった

足の先に力を入れ

無理矢理バネのように腹筋を持ち上げるとジャンプした

するとわずかではある我からだが中を浮き起きあがることに成功したらしく足で立っていた

そのまま僕は蹴られた方に必死にタックルをかましたのだった


「ぐほ」

それは柔らかい感覚

どうやら声からして男の顔か何かに頭突きを食らわしたようだがどうだろう、倒れてくれていればいいがそれよりも、後一人女がいる

「それ以上したら直ぐ死んでもらうわ」

どうやら後ろにいたらしく声がする少し前に何もない首にヒンヤリとした中央の開いている棒を突きつけられた

僕は形振りかまわず、後ろに頭突きをかました

人呼んで「爆転ヘッド」とでも言うようなものが後ろに炸裂した

ズドオオン


それは僕の耳すれすれを、何やら感覚を残しながら爆音を響かせた

僕は倒れながら彼女の方へ身体を前に向け

倒れながらまたしても後ろに頭を大きく反らして

今度はそれをバネに前へ思いっきり突き出した

「ばふ」

何やら嫌な音がした

どうやら彼女の胸元にでも当たったらしいが

それは肺が潰れるような音の様な気がして良いものではない

しかしどうやら音だけだったようでそいつはしばらくして起きあがった

そして

爆音が足に響いた


激痛の中芋虫みたいに転がっている

「往生際が悪いわ、これから世界を変えられるって言うのに」

「ゆsgd・rs、」(どういうことだ)

果たして世界を爆弾なんかで変えられるとこいつは本気で思っているのか

そんなことを伝わらない悶えで言うと

嫌な音をさせながらガムテープだけ口から貼がしてくれた


「どういうことだー」


僕は叫んでいた

そしてもう一度そのテープに手を添えられそうになり急いで言う

「お前は何でこんな事をしている目的は何だ」

「・・ふふ・・ふふふふふふふあぁはははあははあ・・っは・馬鹿ね」

「お前はなぜ爆弾を爆破させた」

「違う」

違うとはどう言うことだろう

「あれは、最初から誰かが仕掛けてあったのよ裏切り者の誰かか

またはあなたが」

果たして何を言っているのか

俺は仕掛けていないしなんなら俺以外でそこまで行くか

それともその以前に誰かが仕掛けたって事だって有る

「お前等の目的は何だ」

「ふふふ私の話には応えないのね後藤くーん」

「黙れ後うるさいから、出だれなんだお前は本当に美羽なのか」

「まー良いわ、応えてあげる、私が誰なのか、私たちが何をしようとしてこんな事をしているのか、聞きたいでしょ」

「・ああ」

「ふふふダーーーメ応えてあげない」

その時だったいきなり爆風が、すさまじい冷気とともに

機体内に入ってきた

「ただいまより、緊急ドッキドキパラシュート脱出を始めたいと思いまーーーす、みなさま動かないようにーーー、一人だけだけどーーー」

それはくうるしいほどに狂っていた

僕はその次の瞬間には意識というなの感覚がかなり薄れていた

血が抜けたせいもあるんだろうけどそれより

床の感覚が無くただただ空気を切っている恐怖心に

意識を失ってしまったのかもしれなかった



気が付くと寝ていた

いやあのままのように芋虫状態ではなく

人でのように大の字に寝ていた

いささか横暴な言い方だがそのようして寝ていた

辺り全てが清潔と言っても何も問題はなく

唯一問題なのは髭頭等で原色の酷いTシャツを着ていた僕に思われた


酷く場違いな気がする

しかしどうやら今の僕は青と白の存在すら、危うくなってしまいそうな清潔な薄そうな色のパジャマに身を通していた

もちろん先ほども言ったとおり足や手には何も縛るものもなく

さらには目や口にもそれはない

しかしもちろんなのか左足が疼くどころの痛みではない物を感じるところからやはり夢などではないことが計り知れる

「あら後藤さん目が覚めたんですね」

僕はその時なぜか「カクスイショウ」を思い出したのだがしかし

関係は殆ど無いだろう、たぶん笑いに目覚めもしなければ

ギリギリ起きたことしか関係しまい


「。。・・・・・」

僕はぼやける線でその声の人を見つけた

それは別にぼやけた人間というわけでも

またぼやけた生き物というわけでもない

実体はしっかりと形を保っているはずだがしかし

僕の視界がぼやけていた


しかしそれは予想とはんし白い天使のような看護婦どころか

白い悪魔な看護師でもない

紫の原色体がこちらに笑みを白々しいほど愛らしく向けてよってくる

何故にぼやけているのにそれが分かったかと言えばそれが

僕の目と鼻の先まで顔を近づけてから、止まったからに他なら無い


しかし嬉しくも嫌悪感の募る顔がいきなり横にそれた

そして後ろを振り返ると


「博士実験は成功しました」

と言った




レポート32


我々は植物状態の人間に

直接脳に幻想のような映像

いわゆる映像を流しこみ刺激を与えてみることにした

するとある刺激のみ、一定の反応を示すことに成功した

それは家族や友人の楽しかった記憶でもなく

また、宝くじにあたるような夢物語でもない

増しては自分の就きたい職業でもない

それは恋愛とそして命の危機であった



しかし彼らはまだ気づいていない

人間の生命の意味は探求心であり

その結果が刺激なのであると

即ち未知それこそがこの世で最も優美で危険な果実といえよう





彼は元テロリストであり世界級チャンピオンのボクサーであった

世界規模の破壊工作を行う「デロリアン・デンジャラス」

それが組織名であり、彼はそのプロのボクサーという肩書きを使い

かなりの制限をしきいて、危険物を輸出させた

それもかれこれ時代が時代な時代のことであった

そんなときそんな一つの荷物が爆破された

警察の見解では、暴発とも思われたが

後に彼の妻「三輪」がそれを行ったと自首したことで明らかに成るも

彼は未だに植物状態のままであり、どちらにしても

報われ要のないことに思われた





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