99.愛と死の情事
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:愛と死の情事
不倫がバレた。
まもなく俺は妻に殺されるだろう。
そのあと不倫相手の愛もきっと始末される。
俺の妻はそういう女だ。一度ブチ切れたら徹底的に叩きのめす、実にわかりやすい性格だ。
謝ったって手遅れだろう。妻が許せないのは裏切られること。
だからこそ、気づかれないよう不倫していた。
俺はスリルジャンキー。いかに妻に気づかぬよう裏切るかをこそこそと続けていた。
不倫相手の愛と出会っているときは、なんともいえぬ高揚感があった。
不倫相手の愛に興奮しているわけではない。この光景を妻が見たらどう思うかを想像すると、絶頂に達してしまう。
だが、全てバレた。バレてしまった。
きっかけはビデオ通話。隣の部屋に妻がいるにも関わらず、スリルを求めて不倫相手の愛にビデオ通話をしてしまったのだ。
しかし妻を甘く見ていた。通話開始から一分でバレ、スマートフォンを没収されてしまった。
それからは妻の逆襲タイム。
になる前に俺は逃げた。
走って逃げた。
妻に殺される前にどこか遠くへ逃げ去ろうとした。
これもまた、スリル。
いつ捕まるかわからないスリル。
昂る気持ちが抑えられない。
俺はいま、鬼の形相をした妻に追いかけられている。
しかし、俺が妻に捕まるのは時間の問題。
妻は元陸上部のエース。長距離短距離なんでもござれのミラクルランナー。
おまけに顔が広く多くの情報発信源であり、すでに俺の不倫はご近所中に知れ渡っている。
俺の現在地など、簡単に突き止められている。
なんならご近所の皆さんに追いかけられている。
俺は指名手配かなんかか。
これもまた、スリル。
そしてどこかのおじさんに捕獲されてしまった。
首を鳴らしながら、妻は遅れてやってくる。
右手にメリケンサック。
左手にガムテープ。
なにをされるのだろう。
殺されるか殺されないか、判断に困る。
ああ、絶体絶命のピンチだというのに、どうして俺はこんなにもドキドキしてしまうのだろう。
これもまた、スリル――
本当は愛と志野譲二とかいうわけわからんことやろうとしていた。
気づけばスリルジャンキーに。




