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95.俺は失敗

「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。

お題:俺は失敗

「これはなに?」

「こいつはフローズンボール。触ると凍るよ」


 霜が目立つほどに冷え切った球体を机に置き、自慢げにそう答える天寺博士。

 そんな天寺博士を呆れた目で見つめるのは、古い付き合いである井田子だ。


「なんに使うの?」

「置くと周りが冷えるだろ?」

「いまは冬なんだけど」

「寒いねえ」


 井田子の右ストレートが天寺博士に飛びかけたが、理性が勝って無事博士が傷を負うことはなかった。

 確かにさっきよりも体感温度が20度ぐらい下がっていると身震いする井田子。元々寒かったから余計にだ。


「早くその冷やし球ぶっ壊して、寒い」

「触ると凍るから無理だって」

「どうやって机の上に置いたんだよ……」

「それは使い捨て最強手袋を使ったからさ」


『使い捨て最強手袋』とは、天寺博士が発明した至高の一品。はめるとどんな物でも運ぶことのできる正しく最強に名高い手袋である。

 ただし使用回数は1回のみ。持った物を一度でも離せば手袋は破裂して使い物にならなくなる。

 このフローズンボールとやらも、最強手袋によって運ばれたものだ。


「じゃあもっかいその手袋出して、冷蔵庫に押し込む」

「あれもうストックないんだ」

「お前ー」


 いまにも井田子は暴れそうになるが、寒さが勝り落ち着く結果に。


「いますぐ熱いの発明して」

「寒くて発明どころじゃないなあ」

「詰んでるじゃないか……」


 このまま凍え死んでしまうのか。井田子は死を覚悟しそうになるが、刹那の導きか一つの解決策を見出した。


「よし、外に出るぞ」

「それいいねえ」


 家にいるよりも外に出るほうがまだ暖かいと判断した。事実、室内温度は室外温度を遥かに下回っている。

 無事凍死を免れた井田子は、天寺博士の首を締めながら反省会を始める。


「なんとかして熱いのを作れ。もしくはあの冷やし球をぶっ壊せ」

「おうけいおうけい、その手を放すんだなんとかするから」


 対応策を考えるために、天寺博士はもう一つ構えている研究所へと向かった。


「はあ、また俺は失敗作を発明してしまったのか」

「着眼点はいいんだよ。作るタイミングと処分方法が雑すぎる」

「やさしいね」

「なんだかんだできみの発明は嫌いじゃない」

「ありがたいことだ。速くあっついの作んないとな」

「ちゃんと温度調節可能でいつでも壊せるのにしろな」


 井田子の存在が、天寺博士には創作モチベーションの原動力であること。

 井田子はまだ知る由もない。

会話で稼ごうとするクセが。

よくない。

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