91.遅すぎた道のり
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:遅すぎた道のり
「どっちが先にあの山へ辿り着くか競争だ」
兎と亀の競争はあまりにも有名な話だ。
序盤中盤は段違いのスピードで兎が先頭を保ち続けていたが、気が緩み昼寝をしてしまったことで最終的には亀のほうが先にゴールしてしまう。
慢心が仇となった実に良い見本例だ。
だが、今回の場合はどうなんだ?
私はけして手を抜いているわけではない。がんばってがんばって確実に一歩ずつ進んでいるはずなのに、奴には到底追いつけない。
奴は途中何度も何度も休んでいた。その度に私は抜いてやろうと闘志が燃え上がっていた。
だけど、追いついても追い抜いても、奴はすぐにあっさり私を駆け抜けていく。
あの戦いは、どのぐらいの距離だったのだろう。数百メートル、いやもしかした1キロメートルはあったのかもしれない。だとしてもその程度ならきっと私にも勝機はあったに違いない。
だけど今回は、あまりにも遠すぎる。
まさか、全長50キロメートルの超長距離戦だとは思いもしなかった。
これでは奴がいくら休もうとも関係ない。たとえ奴が一日眠っていても到底勝てるとは思えない。
この戦いは、奴がなにをしても勝てる勝負だったのだ。
奴がコースを決めた時点で気づくべきだった。
いま何キロ進んだ? まだ5キロも進んでいない。それなのに、奴は遥か彼方へ進んでいる。きっと今頃また休んでいるところだろう。
こんなことなら勝負を受けなければよかった。賭けなんてしなければよかった。
どうせ奴は油断して負けるだろうたかをくくった私が馬鹿だった。
奴よりもずっとずっと慢心していたのは、私だった。
負け試合とわかったこの先の道のりは、あまりにも遠い。
遅いと遠いを間違える。
似たようなものということで。




