90.子供の絵描き
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:子供の絵描き
子どもの柔軟な発想力には舌を巻く。
美術の授業で『バナナ』を絵画のお題に出し、採点中に改めて私はそう思う。
バナナを食べている姿、バナナだらけの光景、様々な角度のバナナの模写など、生徒によって様々な個性があふれている。
なかでもより個性的なものが何点か存在した。
「ふむ……」
バナナの皮を翼とし、青空を優雅に飛ぶバナナ飛行機の絵を見て私はついついうなずく。
バナナを飛行機に見立てるなんてなかなかの創造力。将来パイロットになりたいと目を輝かせていた田辺くんならではの発想だろう。
「ふむ……」
バナナのヘタをトリガーとし、銃撃戦を繰り広げている劇画調の絵を見て私はますます頭を下げる。
バナナ銃という名付けるべきか、弾丸は当然中身であり当たっても大した威力ではなさそうだ。発想力もさることながら純粋に画力が高いので、山寺さんには花丸を上げてしまおう。
「ふむ……?」
一人がバナナをお尻にぶっ刺して、もう一人が別のバナナでお尻のバナナをぶっ叩く絵を見て私は首を傾げる。
バナナをハンマーやらトンカチ代わりにするのはいいとして、なぜバナナをケツに刺した。田中にはあとで問い詰めなければならない。
「ふむ………………………???」
これはバナナではない。
それどころか、絵すら描いていない。
原稿用紙のように、リンゴに対する情熱を書き連ねている一枚の画用紙。林道とは一度真剣に話し合う必要がありそうだ。
全ての作品を見終わり、私はため息を吐く。疲れからでもあるし、楽しかったという意味でもある。ため息には複数の気持ちが込められていた。
どんな作品でも、子ども達の個性がにじみ出る。
それが楽しみだから、私は今日も美術教員をがんばっている。
ギリギリ15分。
バナナを描くのは大変だ。




