88.知らぬ間のゲーム
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:知らぬ間のゲーム 必須要素:一発ギャグ
気まずい。
いつもはにぎやかな部室が、なぜか今日に限って俺と塚崎の二人しかいない。
女子と二人きりというだけで緊張もんだというのに、よりによって塚崎だなんて。
「あー眠い」
ふぁ、とあくびを隠そうともせずに砕けた表情を見せる塚本。その一挙手一投足が、正直俺には刺激的である。
塚崎花梨は、俺と正反対なくらい明るくて人懐っこい。
人間無いものに惹かれてしまうとはよくいったものだが、やはり塚崎はとても魅力的な女子だ。
「ね、きみも眠いでしょ?」
「え、いや……俺は別に」
面白い返しもできず、ただただ俺は無造作にスマホを眺め続ける。折角会話を振ってくれたのになんてことだ!
このままでは、つまらない根暗な男だと再認識されてしまう。
「本当に眠くないの? 本当に?」
ところが塚崎は会話を続けようとする。俺しかいない部室で退屈なのに、わざわざ俺で退屈しのぎをしてくれるというのだろうか。
「まあ……ちょっとだけ眠い」
「やっぱねー、今日はあったかいし昼寝日和だもんね」
「うん……そうだね」
ちくしょう。もしも俺が陽キャであれば、もっとうぇーいな感じで盛り上がれるはずなのに。
自分の咄嗟の切り返しがヘタクソすぎて、どんどん顔をうつむけてしまう。
「んー……ねえねえ、これ見て」
「え?」
俺がふと顔を上げると、塚崎の顔が目前に迫っていた。
「おわっ!?」
「おー、やっとこっち向いてくれたねえ。話しかけてるのにスマホばっか見ちゃってさ。でも目が合ったからあたしの勝ちね」
「勝ち……」
なにがなんやらわからんが、どうやら塚崎は俺が顔を上げるのを待っていたらしい。
「じゃ、敗者には罰ゲーム。なんか一発ギャグやってよ」
「一発ギャグ…………」
知らぬ間にゲームで負け、なにゆえ一度もしたことのない一発ギャグを疲労せねばならないのか。
だが、これは挽回のチャンスである。つまらない男と思われないためには、ここで一発笑いをとってみせねばならない。
くだらない羞恥心を捨てろ。己の潜在能力を余すことなく発揮せよ。
――いざ、男を見せるとき。
「モノマネします!」
両親や兄にはそっくりと称賛されるほどのとある人物のモノマネを、恥ずかし気もなくやり遂げた。
さあ、どうだ。
「……んー、誰のモノマネ?」
俺の青春はここで幕を閉じた。
一発ギャグで15分オーバー。
無理やり締めた感満載。




