85.緑の哀れみ
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:緑の哀れみ 必須要素:自殺エンド
壊れかけた街灯が、俺の心を焦らすかのようにチカチカ光る。
狭い道から十字路に抜け出し、なおも歩幅を狭めることなくひたすら走り続けた。
深夜には車の行き交いが少ないため、赤信号を待たずにただただ進む。
曲がり角があれば曲がり、なるべく複雑な経路になるようにする。
少しでも、後ろから迫るアイツを撒けるように――
「残念ですねえ、ダメですよ」
ズドン、と大きな音とともにアイツが俺の前に姿を現す。
俺の認識が甘かった。
ただ愚直に逃げるだけじゃ、アイツの身体能力を欺くことはできなかった。
アイツはずっと、文字通り俺よりも高みの位置でずっと観察されていたのだ。
まさか、屋根や屋上を利用してずっと見下ろされていたなんて。
「亜香子さんのことは残念でしたねえ。わたしも大変かわいそうに思っています」
息を散らし絶望的な顔を浮かべる俺に比べて、アイツは飄々としてそう口を開く。哀れみの気持ちなど微塵も感じていないだろう。アイツの表情がそう物語っている。
むしろ、あまりにも嬉しそうで。
こっちが恐怖してしまいそうです。
「さて、このまま捕まえますよ。もっともっとわたしと一緒にいるんですから」
誰か、助けてくれ。
この緑髪の女は、悪魔だ――
「で、このあとに残酷なシーンがあるわけだけど……見る?」
「こわいからみない。結末だけ教えて」
「最終的に主人公が自殺するんだよね」
「ええ、自殺エンドかあ……」
「美登里子は猟奇的なエンド多いからな、まだこれはマシなほうだよ」
「おっかないなあ、やっぱ亜香子にしよう」
「亜香子ルートは純愛しかないぜ、美登里子ルートだとほぼ散々なことになるけど」
恋愛シミュレーションゲーム『赤い亜香子と緑の美登里子』は、発売から何年経ってもユーザーには愛されているという。
緑の悪魔的な。
会話尽くしでむりくり15分以内におさめる。




