82.鳥の失望
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:鳥の失望 必須要素:大学受験
――今日という日を待っていた。
新天地に飛び立ったのはいいものの、思い描いていた理想とはあまりにもかけ離れていた都会の光景。
落ちてある飯は不味く、腐りかけたものまである。これなら故郷に戻って畑や田んぼから見繕った方が断然良い。
一時は失望しかけていたものだが、ここならではの利点に気づいたのだ。
それは、人が多いこと。
人が多ければそのぶん飯を奪える機会も増える。
公園でベンチに座っている奴らなど格好の的。食べ歩きでもするものなら我が口に放り込んでやればいい。
人間が食べる飯は、我々にとっても上物だ。奪わない理由などあるわけがない。
ここに住んでから数年、おかげさまで腹は満たされた状態を維持できている。
そして今日は、待ちに待ったあの日である。
今日も大量の人間が、大きな建物に吸い込まれるように入っていく。
まだ出番は早い。もう少し、もう少しタイミングを見計らわなければならない。
人間が入り続け、あらかた人の出入りがなくなってから数時間後。
絶好の機会は、くる。
――いまだ!!
「うわ、なんだいまの!?」
「俺のコロッケ食われた……」
今日も大成功。このまま別の経路から飛び込み、奴らの飯を奪ってしまおう。
まだまだ獲物はたくさんあるのだから。
「窓閉めてほしいなあ、さっきから変な鳥があちこち昼飯奪ってくぞ」
「それがさ、とあるジンクスがあるみたいなんだよ」
「なんの?」
「昼休み、鳥に昼飯を取られた奴は、絶対に大学受かるって」
「……マジかよ。俺取られてないけど」
いまもなお、そのジンクスは破られていないという。
それらしい噂話。
鳥の気持ちになるですよ。




