表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/518

67.安全な秋

「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。

お題:安全な秋

「食欲の秋と言いますから、秋はいくらでも食べていいのです。だから秋はセーフ」


 なるほど彼女の言うことには一理あるかもしれないが、訂正すべき箇所はいくつもある。


「秋じゃなくてもたくさん食ってるじゃん。まさにいま」


 皿に置かれたケーキの数はおびただしく、俺のような胃の小さい人間が食べられたものじゃない。

 その小さな口で、彼女は平然とケーキを確実に減らしていく。


「スイーツは四六時中別腹ですよ? あなたは大学でなにを学んでるんですか」

「少なくともスイーツ別腹論は学んでない」


 彼女は俺の一つ年下であり、今年受験生控えている。

 別に付き合っているわけではない。同じ部活で同じ役職を担っていた因果か、こうして卒業したでもなぜか休日を共に過ごすことが多い。

 だが、別に付き合っているわけではない。


「つってもさ、この間回転寿司でたらふく食ってたよな。そのときの季節は春だぞ」

「過去のことをうだうだと掘り返しては良い男にはなれませんよ」

「はい」


 これ以上の言及は、彼女の怒りを買いかねない。おとなしく黙ってケーキを召し上がってもらおう。

 しかし、その細い身なりでよくもまあ入るものだ。


「お前って胃にブラックホールでも飼ってんの?」

「なんですかいきなり、セクハラで訴えますけど」

「いや、褒めてるんだよ」

「ふうむ……じゃあ許してあげましょう」


 そして完食……と思いきや、彼女は再び皿を持って立ち上がった。

 少しして戻ってきたかと思えば、皿の上にはまたしても新たなスイーツ達。


「ちなみにいくらだっけ、ここ」

「安心してください、わたしの奢りですよ」

「いや、出すよ。せめて半分出させてくれ」

「仕方ないですね」


 食べ放題ではあるが俺は一、二個食べてギブアップ。元は充分彼女がとっている。

 昔から彼女は食べるのが好きであり、よく部活の帰り道には買い食いをしたものだ。

 あの頃、よく彼女は言っていた。


『わたしはよく食べるから、友達とかドン引きされちゃうんですよね』


 そのときに見せてくれた笑顔が、どこか悲しそうで、そして。

 なぜだか不思議と、彼女に惹き付けられた。


「おっし、じゃあ出るか」

「帰りにカラオケでも行きます?」

「いいね、久々に歌うかー」

「フリードリンクにアイス食べ放題のところにしましょう」

「まだ食うんかい」


 俺達は別に付き合っているわけではない。

 だが、好きか嫌いかと言われれば、きっとお互い――

ちょっとエモい感じに。

NTRエンドにはなりません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ