65.限界を超えた瞳
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:限界を超えた瞳 必須要素:生理痛
「女子なら誰しも通らねばならない道があるのだよ」
放課後の化学準備室で、男女の生徒が二人。見方を変えれば年齢指定されるほどのシチュエーションであるが、実際のところはそうでもない。
夏野純太は、一つ学年が上の冬島睦美によって椅子に縛られていた。
両手両腕は後ろに回され椅子ごと縄で縛られ、両太もも両脚もしっかりと固定。純太はまさしく文字通り、身動きが取れない状態に陥っていた。
「さて、その通らねばならない道とはなにかわかるかい?」
声とともに、わざとらしく純太の周りをコツコツと歩く睦美。彼女の両手には指揮棒が添えられ、たまに純太の頭をそれで軽く叩いていた。
「さあ、答えてみなさい」
純太の口元には縄もテープもないので、普通に喋ることはできる。
ただ、ここで答えを間違えるとさらに危険な目に遭うだろう純太は察していた。
そしてなにより、いまの純太はそれ以上に深刻な状況であり、それどころではない状態だ。
「…………」
「ほら、答えないと解放させないよ?」
睦美は自身のクセ毛をぐしゃぐしゃかき乱し、妖艶にほほ笑む。余裕あるときであったら純太にはどストライクな仕草だが、やはりそれどころではなかった。
「…………戦車道?」
「アニメの見過ぎだね、不正解」
今度は純太から遠ざかり、化学準備室を出ようとする。
このまま放置されてはいけないと、純太は思わず大声を出した。
「待ってくださいごめんなさい許してください! 早く縄をほどきましょう!」
「答えは生理痛。きみに話しても理解されがたいだろうが、なかなかに辛いものなのだよ」
一歩ずつ戻って来る睦美。まるでこの状況を楽しんでいるみたいだ。
一方で純太は涙目である。いまにも血涙が出そうなくらい、限界が近づいている。
「まあ……いまのきみなら理解してくれるかな? そうでなくちゃ困るけどね」
「ちょー辛いです! だから解いて! じゃないと出る! 出ます! 出たらやばい!」
「やれやれ……漏らされても困るからね。しょうがない」
そうして睦美が縄を解くと、純太は限界を超えた瞳をしつつ最短経路でトイレへと駆け込んだ。
「うーん、普段もそんな勢いで走れたらいいのにね」
誰もいなくなった椅子に、睦美はそっと腰掛ける。
「まったく、私に惚れ薬を飲ませようなんて甘いったらありゃしないよ。仕返しに下剤を盛ってやったがね」
今日の変則化学対決は、睦美に軍配が上がった。
トイレダッシュのところで15分オーバー。
舞台設定を説明しないで進んでいくスタイル。




