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59.安い手

「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。

お題:安い手

 かつての俺は『鬼の手』と畏怖されるほどの実力者だった。

 俺と戦ってきた奴はみな絶望に陥れ、二度と歯向かわないようにしてきたはずなのに。


 長い年月が、俺の人生を一転させていた。

 なぜ俺はこんなにも苦戦している? 環境が変わっただけでこの俺が封じられるなんてありえない。

 相手はたかだか二十年しか生きていない坊やなのに、どうして俺はこんなにも劣勢なんだ!


「くそ……こうなったら!!」


 俺は吠えた。何度も何度も吠えて相手を威嚇するように攻め続けた。

 それなのに相手は俺なんて眼中にないようだ。ただただ不敵な笑みを浮かべて自分のことに専念している。


 許せない。この俺が、こんなガキに馬鹿にされるなんて!!


「おら、それだあ!!」


 怒号にも近い声で、俺は声高々に叫んだ。


「ロン! 白のみ千点!」


 あまりにも安い、ノミの千点。これで相手の親を蹴ったのは大きいが、点差は絶望的すぎる。

 くそ、くそ、くそ、くそ!

 なんだって最近の店は自動卓になっちまったんだ!

 かつて手積みが主流だった頃は手先の器用さを活かして仕込み放題だったが、自動卓となったいまでは迂闊に牌交換もできない。

 鬼の手と称されたこの俺が、いまでは安い手でしかあがれない。


「それロンです。インパチ」

「そんな……馬鹿な……」


 イカサマばかりに頼ってきた俺に、現在の高レート麻雀で勝ち抜く術はもうなかった。

むこうぶちという麻雀漫画、とてもオススメです。

さすがにご無礼は書けなかった。

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