56.子供の笑い声
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:子供の笑い声 必須要素:いびき
親戚の甥がまったく構ってくれない。
いつもむっすりしていて、遊びに来ても本ばかり読んでいる。
ゲームに誘ってもキャッチボールをせがんでも断られ、結局いつも一人読書。
叔父としてはいささか悲しいものがあり、折角の機会なんだから一緒に遊びたい気持ちがはやっていた。
「なあなあ、ゲーセン行かない? たくさんおごっちゃうよ」
「行かない」
相変わらずつれない返事である。普段ならここで諦めるのだが、今回は会話の疎通を試みたいと思う。
「ねえねえその本なに? なに読んでるの? 漫画? 小説? それともちょっとエッチなやつだったり?」
「うるさい」
「はい」
甥に怒られてしまった。めげそうだ。
ふと自分が子どもの頃を思い出す。いまの甥と違って、私はどこにでも誰とでもついていくタイプだった。とにかくなんにでも喜んで笑い声が絶えない子だったので、大人からは楽なガキんちょと評されていたらしい。
そんな自分とは真逆の甥に、私はいま戸惑っている。
「じゃあもう寝るからね。遊びたくなったら起こしてよ!」
「はいおやすみ」
降参。半ばやけになった私は横になり昼寝を取った。
「おじさん、起きて」
「はい!!!」
どれだけ経ったかわからないが、まさかの甥に起こされて嬉しくなり、ハイテンションになっていた。
まさか、私と遊んでほしいのか!?
「どうする!? ゲーセン? それとも散歩? ゲーム? 公園行くか!」
「いびきがうるさいから起こしただけ。静かに寝て」
「はい」
甥との距離が縮まるのはまだまだ先のようだ。
甥にこんなそっけない態度されたら多分泣く。
まだまだ先だとは思うが。




