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53.残念な冤罪

「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。

お題:残念な冤罪 必須要素:2000字以上

 ものすごく汚い字で『はたし状』と書かれた手紙が、下駄箱に入っていた。

 中身を見てみるとこれまたくせのある字で、二千字以上にも渡って俺に対しての恨みつらみを書き連ねていた。

 要約すると『オレの女を勝手に奪いやがって許さん! 勝負しろ』だそうだ。


 参ったなあと思わず頭を抱えてしまう。俺は彼女なんていないし仲良くしている女子もいない。運動神経も至って普通であり、昨日もテストで赤点を取って補習を受けていたくらいの頭の悪さ。女子からモテる要素ゼロの人間に差し出すような手紙じゃない。

 なんだか逆に腹が立ってきたぞ。こんなの冤罪もいいとこだ。

 そんなに俺が気に入らないのなら、この果たし状受け取ってやる。


「逃げずによくきたな、ほめてやるよ」

「本当は無視しようと思ったよ。でも文句言うためにわざわざきてやったぞ」


 誰もいない屋上で、早速手紙を送りつけた男子の胸倉をつかむ。相手は俺よりもガタイがいいがここで臆してはいけない。

 俺は受け取った手紙取り出し、床に叩きつけた。


「ここに書いてある女って誰だよ! 根も葉もない妄想で勝手に俺を嫌うんじゃねーよ」

「ああ!? お前昨日田中先生とマンツーマンで補習受けてたじゃねーかふざけんな! 田中先生の気を引こうとわざと数学で赤点取りがやって!」


 ようやくこいつの言う女というのがわかった。数学の授業を担当している田中先生のことだった。

 確かに愛嬌はあって良い先生だなとは思うが、どうして赤点を取ったぐらいで田中先生が好きだと思われにゃならんのだ。

 俺を突き飛ばし、男子は更に怒鳴る。


「あんなくそ簡単な数学のテストで赤点取る馬鹿なんていねえんだよ! いるとしたら田中先生に教えてほしくてわざと取るぐらいだろ、勉強なんかしなくても六十点は余裕で狙えるだろあんなくっそ簡単なテスト!!」


 今度は違った意味で腹が立ってきた。こっちは頑張って勉強して赤点取ったんだよクソッタレ!

 だけどここで本心を言っても自分の恥をさらすだけだ。落ちつけ俺、もう穏便に終わらせよう。


「……そうか、悪かったよ。お前の熱い思いは充分に伝わった。田中先生のことは諦めるよ」

「ん? おお、そうか! ならいいんだよこっちこそ絡んじまって悪かったなあ!」


 ガハハと笑い俺の肩をばしばし叩いてくる。痛い、痛いからもうやめてほしい。

 これにて一件落着。さあ解散しよう。


「そういやお前英語でも赤点取って補習くらってたよな? 確か英語は山岡だっけ? お前田中先生の他にもキープしようとしてんじぇねーよ! あと山岡も狙ってるとか趣味悪すぎ!」


 ――第二ラウンドのゴングが鳴った。

必須要素を無視していくスタイル。

全ては勢い。

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