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50.東京音楽

「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。

お題:東京音楽 必須要素:栓抜き

 我が濱浜高校合唱部は、今日も必死に練習中である。

 普段は文化祭や定期演奏会ぐらいしか発表の場がないが、縁あって他校との合同企画により東京で音楽祭を開催することが決定した。

 出るからには万全の状態かつ公演後のアンケートでこの高校が良かったと書かれるくらいには目立ちたい。これをきっかけに濱浜高校合唱部の知名度を飛躍させてしまおう。


 部長であるわたしはいつになく張り切るが、まだまだ問題点はいくつかある。


 一つ目は、部員数が少ないこと。

 総勢六名という、合唱できるほどの人数が圧倒的に足りていない。各々の声がいともたやすく出しゃばってしまうのだ。

 幸いにも各パートは揃っているので混声四部の曲も歌えるが、肝心のピアノを弾ける部員がいないので無伴奏もしくはアカペラの曲を選ばなければならない。顧問はお飾りに近く、本命の吹奏楽部に集中しているので当てにならない。指揮者なんていない。


 二つ目は、経験者が一人もいなく、音楽を教えられるほどの実力を持つ生徒が一人もいないこと。

 絶望的である。少数精鋭と聞こえはいいがわたしを含めて素人集団ばかり。とにかくみんなで四苦八苦しながら楽譜と睨めっこだ。

 部長と副部長の二人が率先していろいろ指示するが、それが正しいかもわからない。


「ほら、この栓抜きを見て! この空間に声を届けるようにまっすぐ飛ばすの!」


 この栓抜きは家から持ってきたもので、合唱練習の助けになるかと思い咄嗟に閃いた次第。

 こんなふうに身近な道具を使いつつ、わたしたちは今日も練習する。


 こんな摩訶不思議な練習方法で、弱音や文句を吐く者は一人もいない。みんな、素直で和やかな良い子たちだ。

 冒頭で目立ちたいとか言った手前で訂正するのはよくないと思うが、音楽祭はとにかく楽しく歌えればいいなと思うわたしであった。

オチなし。

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