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43.忘れたい愛人

「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。

お題:忘れたい愛人

「俺が勝ったらあいつから手を引くんだな!」

「ああ、その代わりオレが勝てばオマエがとっととアイツの前から消え去れよ!!」


 四十を超えた中年男性同士の、土手の上での決闘。時間は丑三つ時、誰も邪魔することのない二人だけの決戦場。

 戦う理由はただ一つ、愛人が同じ人物であったということ。


「いくぞ!」

「おお、こいやあ!!」


 威勢は充分。まずは先に殴りかかったのは安村。長身ではあるが猫背が酷く、運動不足もあってかあまり体が伸びない。

 軽いパンチを対戦相手である水田の腹に放つも、脂肪で膨らんだ水田にはびくともしない。

 と思いきや、水田は無理やり接近することでパンチを腹の奥深くに埋め込むようにした。

 その圧に耐え切れず、水田はむせる。


「ぐほ、ぐほ……なんだそのぬるいパンチは! 今度はこっちからいくぞお!」


 気合と共に水田も鉄拳をお見舞いする。しかし振りが遅く、安村にはなんなくかわされ――いや、わざと当たりにいくかのように安村の顔面に直撃した。

 そして大袈裟に倒れていく安村。


「……オマエ、本気でやってんのか!?」

「お前こそ本気でかかってこいよ!!」


 魔が差してしまい妻がいるのに関わらず愛人を作ったが、後に襲ってきたのは家族に対する罪悪感と、愛人がとんでもない性悪であったということ。

 おまけにその愛人は、二人以外にももう一人付き合っている男がいるという。


「俺が負けたら俺はあいつから手を引いていいんだろ!?」

「ああそうだよ、オレが負けたらオレがとっととアイツの前から消え去るんだよ!!」


 どうしても愛人と手を切りたかった二人であるが、妻にバラすと脅されてしまうとなかなか別れを切り出すことができなかった。

 そんなとき訪れた唯一のチャンスが、愛人による一言。


「あたしいま本命が一人いるからー、どっちかはもーいらないわ。だからアンタ達で戦って勝ったほうはまだあたしといてもいいことにしてあげる!」


 願ってもない条件。

 中年二人は、負けるべく必死になって殴り合っていた。


「くそ、お前つええな、俺の負けだよ」

「いや、オレのほうが限界だ、オマエの勝ちでいいぜ」

「いやいやお前が勝ちだよ」

「いやいやいやオマエが勝ちだ」

「いやいやいやいや」

「いやいやいやいやいや」


 勝利を譲り合う決闘は朝まで続いてゆくのだった、

久々にまだまともな起承転結ができた気がする。

この調子だ。

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