41.悲観的な接吻
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:悲観的な接吻 必須要素:力士
『あ、兄弟子、ダメですってそんな』
『いいじゃねえか、俺とお前の仲だろ?』
兄弟子の鍛え抜かれた豊満な身体が、新米力士の平八に――
「はいそのへんでストップ」
「あんだよーじゃますんなよー」
先輩に筆を強制中断させられ、原稿すら没収されてしまった。
折角ノリノリで描いていたのに!
「文化祭に出展する同人本で濃厚なジャンルに手を出すな。他の機会に描け」
「はいー? それって不公平だと思いますねえ女の子同士のイチャイチャはありじゃないですかあ」
「あっちはソフトだしあんたよりディープな内容じゃなかったわ。あんたのはズッポリ深みに入りすぎ」
「んだよーこっちだって健全だよー」
私と先輩は幼馴染みというものなので、あまり上下関係は薄い。学校内では先輩後輩なので敬語は多少使ってはいるが。
「折角平八がこのあと兄弟子に嫌々接吻されて、その現場を同期で両想いの敏郎に見られるって修羅場だったのにさあ」
「はい不健全。描き直し」
「しょーがねーなーなんのジャンルならいいのさ」
「あんたには四コマがお似合いね」
「はー? 四コマなら力士本描いてもいいわけですかー? アキちゃんの彼氏も随分ふくよかですもんねー!」
頭を叩かれてしまった。少し調子に乗りすぎたか。
「力士本を描くなとは言ってないわよ。もっと控えめなストーリーにしろつってんの」
控えめったって私にとってこんなの序の口だ。もっと深いところに進むのなら〇〇〇〇や〇〇だってアリだし、突き詰めれば〇〇〇だっていける。私は甘く見ないでもらいたい。
「わかりましたよ、四コマギャグ漫画リキシくんでひと笑い買ってあげますか」
「頼むわよ、あんたは絵だけは上手いんだから」
褒めるところはしっかり褒めるなんて、先輩はやっぱいい奴だ。
「他はふざけてるけど」
落とすところはしっかり落とすんだから。
さて、四コマといってもしっかり起承転結を描かなければならない。
もらったページは八ページ。一ページ二本は入れるとして、十六本の四コマを考える必要がある。
どうしたものか。
「さて、進捗はどう?」
「まあまあってとこだね」
数日後、私は途中までの成果を先輩に見せた。
内容は至ってシンプル。新米力士リキシくんが稽古中のドサクサに紛れてどれくらい他の力士に接吻ができるか――
「お前出禁な」
キツイ(お題と必須要素が)




