39.鋭い暴走
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:鋭い暴走 必須要素:日本酒
「それではー今日もおつかれさまでしたー!」
「かんぱーい!」
グラスがぶつかる音が奏でられ、各々が飲む、食う、喋るの自由行動。
周りがわいわい盛り上がるなか、一人隅で静かにオレンジジュースを飲む男がいた。
彼の名前は朝倉歩。入社二年目のまだまだ若い社員だ。
「朝倉くん、また一人でオレンジジュースだよ」
「話しかけても愛想笑いで済まされるからつまんないんだよね」
そんな彼を話の肴にするも、数個分のキャッチボールで終わりまた別の話題へ。彼自身も彼の話題もあまり盛況ではない。
同期である私は、そんな彼が少しだけ気になっていた。
というよりも同じ大学で彼の本性を知っているからこそ、気になってしょうがなかった。
「ねえねえ朝倉くん、お酒飲まないの?」
「飲みませんね」
今日こそはお前の本性曝け出してやる。
そう意気込んで私は彼の隣に座った。
「おかしいねえ、大学の頃はたくさん飲んでたよねえ」
「人違いですよ」
「そうかなあ、名前も一致してるんだけどねえ」
のんべえサークル『のみのみ』
ただ酒を飲むことだけに追求した本格的(?)飲みサークルであり、遊びやふしだらなことは一切禁じられている。健全のようで不健全極まりない。
彼はあのサークルの副リーダーである。この副リーダーというのがみそで、微妙に覚えていそうで忘れらそうなポジションなのだ。
私が問いただしても彼ははぐらかそうとするので、少しハッタリをかけてみる。
「私、同じサークルに所属してたんだけどねえ」
「……いや、いないですねえ」
見抜かれてしまったが、マヌケは見つかった。
「私は確かにそのサークルにはいなかったわ。でも、いまので朝倉くんが所属しているのがわかったわ」
「……」
沈黙は敗北の証。勝手に解釈して私はお酒の注文を行った。
「日本酒とビールと焼酎とレモンハイとー」
「おいおい爆弾酒はやめとけよ慣れてなきゃ意識飛ぶぞ」
「ついに本性現わしてくれたねえ。ちなみにこれは朝倉くん用の注文よ」
「待ってくれ、せめて場所を変えてくれ。飲めるってみんなにバレたくない」
小声で懇願する彼の意見を尊重し、私たちはこっそり抜けて二次会へ。
ちょっと薄暗い個室で、二人飲み比べを始める。
「先に行っておく。今日のところはお前に付き合うがこのことは絶対に黙ってくれよ」
「んーまーきみの飲みっぷりを見せてくれたら考えるよ」
彼は観念したかのように、次々と酒を注文し始める。
ビール、日本酒、焼酎、ビール、ビール、日本酒、ハイボール、ビール、マッコリ……
止まらない暴走状態。タガが外れたかのように彼は水のごとくグビグビと飲んでいく。
素晴らしい。これが彼の正体か!
「で、なんでお前は飲まない」
「あたしは下戸だし」
「…………」
「いやね、どこまで飲ませたら酔いつぶれるのか気になっちゃって。のんべえサークルはあの大学でも有名だったからねー」
「まだ余裕だけどそんなこと気になるなよ」
もっともだ。あまり飲ませて体に異変が起きては一大事である。
目的も達成したことだし、この辺で切り上げるとしよう。
「よし、来週も二人で飲むよ! あと買い物も行こう」
「なんで俺が」
「バラされたくないの?」
「喜んでお供します」
ある意味脅迫だけど、これでデートの都合は付けた。
私の作戦は成功だ。
観念したところで15分オーバー。
オチがわかりづらいか。




