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36.うるさい医者

「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。

お題:うるさい医者

 私の通う歯医者は、ちょっと変わっている。

 見た目は普通のおじさんであり、穏やかな人相なのだが。


「はーいお口開けてくださいねー虫歯削っちゃいますよー」


 五本以上の虫歯があり、しばらくは歯医者に通う日々が続くだろう。

 諸々の手続きや問診を済ませ、私はおそるおそる口を開く。

 そして、歯医者は上機嫌で歯を削り始めた。

 ここまでは至って普通なのだが、ここからがおかしい。


「うぃーーーーんうぃーんぎぎぎぎぎぎぎぎーうぃーんががががががー」


 このおっさん。

 いや、この歯医者さん、削っている最中に音真似をしているのだ。

 聴こえていないとでも思っているのだろうか。


「んーんーぼくらはー今日も元気ーおくちを奇麗に大切にー!」


 ついにはわけのわからない歌まで歌い始めた。

 うるせーしいてーしへたくそだしの三重苦。なにが悲しくて私はこんな拷問に遭わなければならないのだろうか。近場で安かったからこの店を選んだのだが、大失敗である。


 やがて本日分の治療が終わり、ようやく私は拷問椅子から解放されたのであった。


「じゃー次回は奥歯をやっちゃいましょうねー」


 会計を済ませ、私は愛想笑いで店を出た後に舌打ちを鳴らした。

 二度と行くか。


 しかしながら予約してしまった以上、また行かなければダメだろうなと本日も渋々向かう私。予約キャンセルでもすればいいのだが、小心者には荷が重い。

 到着早々、早速虫歯の治療が始まったのだが、今日の歯医者は全く声を出さない。

 静か、静かすぎる。前日のやかましさはどうしたんだ!?


「どうして今日は歌ったりしなかったんですか?」


 治療後、最後まで静かだった歯医者に思わず尋ねる。


「虫歯が痛くてあんま歌いたくないんです」


 歯医者も虫歯になる。

 願わくば、私の虫歯が完治するまで歯医者さんの虫歯が続きますように。

このお話はフィクションです。

もう少しなんとかならんかったのか。

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