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35.愛と死の傘

「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。

お題:愛と死の傘

 何年間も置きっぱなしにされている傘があるらしい。

 その傘を開いて男女で相合い傘をしながら帰ると、二人は死ぬまで永遠を共にするという――


「っていう伝説の傘があるらしいんですよ」

「なんだそのうさんくささ全開の噂は」


 伝説の木や伝説の鐘とはよく言ったものだが、伝説の傘はいささか信じがたい。

 一つ下の柿本瑞希はうきうきしながらその伝説の傘について続ける。


「その伝説の傘、先輩の下駄箱に近くにある三年生用の傘立てにあるみたいなんです」

「あー……そういやなんかいっつも隅っこにあったな、たしか」

「というわけで先輩とあたしで開きに行きましょう」

「待て」


 意気揚々と走ろうとする瑞希の首根っこを掴み、俺はため息をつく。


「なんで俺達が開くんだよ」

「そりゃ伝説の傘の効力を試すためです」

「いや、お前、おい」


 この子は自分がなにをしでかそうとしているかわかっているのだろうか。

 もしその伝説の傘が本物なら、その、死ぬまで一緒にいることになる。


「やめとけ、何年も放置されてたらカビ生えてるぞくっさいぞ」

「伝説に傷はつきものです、さあいきましょう」

「いやいやいや、お前、おい、おい」


 俺の制止を振り払い、瑞希は全速力で下駄箱に向かっていった。

 いや、俺はいいんだけどさ。


「というわけで持ってきましたよ」

「見た感じ普通の傘だけどなあ」


 こうなった以上は覚悟を決めるしかない。瑞希から傘を受け取り、留め具を外していざ開帳!

 ……の前に、最終確認。


「これで俺とお前で相合い傘して帰ったら、死ぬまで一緒だぞ、いいんだな俺で?」

「はい」


 あっさりすぎる。


「もう少し照れとかないの? なんで俺のほうがこんな照れてんだよ」

「仮にこれで先輩が他の女にうつつを抜かしたら先輩を殺してあたしも死ねばいいだけですし」

「こわいこわいこわい」


 猟奇的すぎる。

 死ぬまで一緒が伝説なのに死ぬときだけ一緒はちょっとよろしくない。


「逆もまた然りだからな。じゃあ行くぞ」

「先輩はちょろい」

「うるせーな」


 そうして俺達は相合い傘をして帰った。

 まさか俺から告白をした直後、こんな言い伝えを教えられてOKの返事を貰うなんて、彼女なりの照れ隠しなのかもしれない。

 これからも退屈せずに済みそうだ。


「やっぱカビくせーわこの傘」

「先輩はくさい」

「俺じゃねー傘だ傘!!」

ちょっと15分オーバー。

まあ、及第点。

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