32.気持ちいい雪
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:気持ちいい雪
「というわけで、明日はお足元にお気をつけください」
雪だるまマークがあちこち映る画面を背にし、気象予報士はぺこりとお辞儀をする。
明日の天気予報を確認し終えると、大悟はテレビを消して深くため息をついた。
「明日は雪か……」
寒い滑るはまだ百歩譲る。大悟にとって一番嫌なのは、交通機関に影響を及ぼすということ。遅延は避けられず、より混み合う可能性だって高い。
就寝前は常に気だるくなるが、雪となると余計に憂鬱だ。大悟は酒を一杯浴びてから眠りにつく。
明日はいつもより早く出勤しよう。ああ、面倒くさいな。
子どもの頃の雪といえば楽しみで仕方がなかった。
積もっていれば通学途中でも雪合戦はお構いなし。学校に着く頃にはびしょびしょになるぐらいだ。
全てが新鮮で、気持ちよくて、楽しくて。
毎日雪が降ればいいのにと、ずっと思っていた。
雪が降ってあれほどまでに充実した時期は、もうとっくに過ぎている。
朝になり、目を覚ます大悟の瞳からは、涙がこぼれていた。
暗い、暗いよ。
このお話はフィクションです。




