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27.赤い策略

「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。

お題:赤い策略 必須要素:2000字以上

 茜には振り向かせたい先輩がいた。

 サッカー部のエースであり生徒会会長という、絵に描いたような文武両道優等生美男子。

 そんな彼に恋焦がれる女子生徒は数多く、茜も例外ではない。

 まずは会話もしたことがない茜は、自分を認知してくれるよう様々な考えを巡らせる。


 作戦その一。

 わざとぶつかってごめんなさい作戦。

 ぶつかることで無理やり会話のきっかけを作り出し、そのまま仲良くなって結婚まで一直線へと進む算段だ。

 いま、曲がり角の先に先輩が歩いている。タイミングを計り、先輩が曲がり角から現れる瞬間に茜は飛び出した。


「おーい、先生が呼んでるぜー!」


 あと一歩で衝突する瞬間、後ろから同級生に呼び止められて先輩はすぐさま後方へと直進。無事に二人はぶつからずに済んだ。

 しかし作戦は失敗。茜の恨みリストに先輩の同級生が追加された。


 作戦その二。

 先輩のいる教室に行き、直接呼び出す作戦。

 実に単純明快。ご指名してしまえば優しい先輩はすぐに来てくれるだろう。そうして二人きりになってしまえばお友達から恋人そして生涯の伴侶一直線コースだ。

 早速先輩のいる教室へと向かう茜。

 しかしクラスの女子が先輩への干渉を阻むようにして壁を作っている。殺意ましまし、少しでも話しかけたらどうなるかわかってるのか? と言わんばかりの空気が漂っていた。

 これには茜もたじろいでしまい、先輩を呼び出すことは死を意味すると判断し諦める。作戦は失敗。茜の恨みリストに先輩のクラスメイトの女子生徒が追加された。


 作戦その三。

 サッカー部のマネージャーになってしまえばいいじゃない作戦。

 先輩と同じ部活に入ってしまえば必然と関わる機会はでてくる。そこでちょっと良い仲になって全国制覇と同時に恋の逃避行を決め込めばハッピーエンド間違いなしだ。

 しかし、入部届の時点で門前払い。すでにマネージャーは十人おり、これ以上は必要ないと追い出されてしまった。そもそも十人も必要なのかと問い詰めたい気持ちはあるが、そのうち一人のマネージャーが物凄くガタイの良い女子で喧嘩慣れしてそうだったので逃げざるをえなかった。

 作戦はまたしても失敗。茜の恨みリストにサッカー部のマネージャーが追加された。


 考えた作戦はことごとく失敗し、先輩があまりにも遠い存在だと改めて認識させられてしまう。しかし恋に障害があればあるほど燃えるタイプの茜は、けっして諦めない。

 なんとかして先輩を振り向かせ、私こそが先輩に相応しい女性だとアピールしなければと茜を気合を入れ直す。


 そもそも茜が先輩を好きになったのには理由がある。

 顔だ。


 作戦その四。

 放送室を利用して嘘の用事を先輩に伝えて呼び出しちゃえ作戦。

 教室に入れないなら遠隔操作で呼び出しちゃえばいいじゃない。茜は急ぎ放送室の使用許可を得ようとするが。


「わざわざ放送してまで伝える内容じゃない。そもそも生徒が生徒の呼び出しを放送でするな。お前を許可したら他の奴らも真似しだして面倒なことになる」


 先生にあっさりと断られ、作戦は失敗。茜の恨みリストの拒否した先生が追加された。


 作戦その五。

 部活が終わるまで見張って先輩が家に帰るところまで追いかけてみましょう作戦。

 ストーカーである。一歩間違えればバッドエンドになるが茜の命運やいかに。

 部活動終了時刻は原則では午後六時半。その後居残り練習も認められてはいるが、遅くとも八時までには撤収することになる。

 準備は万端。茜はサッカー部の練習が終わるまで時間を潰し、いざ先輩の帰宅となると急いで後ろについた。

 だがしかし、先輩は徒歩でも電車でも自転車でもなく、普段から送迎車で帰っていた。

 茜の自転車では追いつけるはずもなく、作戦は失敗。茜の恨みリストに送迎車の運転手が追加された。


 作戦その六。

 もうない。


「結局私は先輩とは縁がない存在なのかしら」


 自宅にて、飼い猫に愚痴を吐く茜。白くてまんまるで愛嬌のある、生後二歳の茜の相棒だ。


「ねえ、どうやったら先輩を振り向かせられると思う?」


 返事なんてくるはずもなく、飼い猫のエリザベスはぬくぬくと丸まっている。


「猫になって先輩の前に現れれば可愛がってもらえるかしら。もしそうなら私は猫になりたい」


 結婚はできないが、飼い猫として先輩と暮らせるならそれも悪くない。茜の想いは歪みつつあった。


 それからというものの、先輩と関わる機会を作れないまま日々が過ぎていった。

 仕方なく部活に励む先輩の姿を、グラウンドの外で眺めるだけでいまは我慢。他の女子もおまけつきだ。


「この有象無象どもを出し抜いてやりたいわ」


 小声で呟く茜。そう、まだ諦めたわけではない。

 いまはただ、良い作戦が考えつくまでは見につく次第である。

 そのとき。


「あぶない!!」


 飛んできたサッカーボールが、茜の顔面に直撃。

「ぐえっ」と力ない声とともに鼻血が吹き荒れ、茜はぐったりと倒れた。




 次に目覚めたのは保健室。

 ベッドに横たわる茜の視界の先には先輩がいた。


「本当に申し訳ない、俺の蹴り損じのせいでキミの顔を台無しにしてしまった!」


 先輩は悲痛な表情をしつつ土下座をしている。

 いま、先輩は茜を認識している。


「いいんですよ、先輩。私の作戦は見事達成しましたから」


 たったいま思いついた茜の作戦は、見事成功へと導いた。

 作戦その六。

 うまいこと先輩が蹴ったボールが茜の顔にぶつかって鼻血を出すことにより借りを作ってしまえ作戦。

 略して、赤い策略。

十五分なんて余裕で超えている。

必須要素が無茶ぶりすぎる。

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