19.真紅の怒りをまといし弁当
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:真紅の怒りをまといし弁当
昨夜、妻の機嫌を損ねてしまった。
妻は毎日私に弁当を作ってくれるのだが、ついいらぬことを言ってしまったのだ。
「いつも白米に冷凍食品だから、たまには凝った弁当がいいなあ」
私としてはちょっとした軽いお願いだったのだが、妻は「なんだと!?」と私の胸ぐらを掴んで激怒。
「だったらわかったわよ、明日は楽しみにしてなさいよ!!」
殴られるかと思ったがその日はそれで終了。しかし機嫌が直るはずもなく、今朝も無言で弁当を渡された。
いつもあった「いってらっしゃい」も声もなく、少しさびしい。
よくよく考えれば怒るのは当然だ。冷凍食品だろうがなんだろうが、準備するということは面倒くさいほかない。妻はいつも文句ひとつ言わず作ってくれたのに、私が文句を言うとは何事だろう。
気が重くなる。いま私ができることは、妻が作ってくれた弁当を美味しく食べ、帰ったら感謝の意を告げることだろう。
昼休みになり早速弁当のフタを開けてみる。
さて、なにが入っているのか。
「……」
赤い。赤すぎる。二段重ねの弁当の一段目は、紅ショウガで埋め尽くされている。
いつもは白米がぎっしり詰められいるのに、米が一粒たりとも存在しない。
二段目もなんてすばらしい役満も驚く赤一色。トウガラシ、パプリカ、ヘタなしミニトマト。
そして私の大好物のイチゴ。
なにから食べればいいのやら。
「ただいま」
帰宅。しかし妻は相変わらず無言である。鋭く睨みつけてくる視線が痛い。
「あのさ、今日作ってくれた弁当なんだけど」
私は弁当箱は開けると、妻の表情が変わった。
「……もしかして、全部食べたの?」
「うん、食べ応え抜群だった」
弁当箱は、一段目も二段目も全て空っぽ。紅ショウガの一つも残さず完食だ。
「いつも弁当を作ってくれて、本当にありがとう」
「まったくもう、バカなんだから」
ご機嫌取り用のショートケーキでさらに追い打ち。妻の笑顔を見事取り戻した!
真紅の怒りをまといし弁当は、もう存在しない。
三人称の練習を書きたいのに一人称ばっかになってしまう。
そして人数も二人ばっか。よろしくない。




